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今日僕はピエロになります part2

「私が内川紗愛さんと出会ったのは山泉高校での事でした。遡ること約13年前になります。高校・大学と同じ時間を過ごしました。紗愛はご覧の通り昔から、美人でクラスのマドンナ的な存在でした。彼女は優しい性格に加え献身的で皆んなに愛されていました。」

体育祭2週間前

「部活決めた?」昼休みになると、部活か友達作りの話どちらかになる。

「もちろん。サッカー部。俺推薦だしね」

「そうだよなぁ。俺もやっぱりバスケ部でいいかな。顧問が担任でちょっと嫌なんだよね。」

「うぇ。巨大先生かよ。ラグビー部の顧問だとてってきり思ってた。」

いつのまにか多田大先生を巨大先生と呼ぶようになっていた。

「先が思いやられるよ。」こんな事を話していると、学校のチャイムが鳴った。

僕たちは全力疾走で教室に向かった。

「なぁ。これ初日そっくりじゃん。」

「やべぇ。しかも巨大先生の授業。」

僕たちは申し訳なさそうに、教室のドアを開けると、皆がこっちを凝視した。

「2分遅刻。早く席に着け。」

僕たちは顔を見合わせて、少し呆気にとられた。怒号が飛ぶ事を覚悟していたからだ。

「今日この時間を使って、体育祭の種目決めをやりたい。」巨大先生の突飛な発言がクラスを騒つかせた。

「よっしゃー!」太陽が拳をかがける。

「遅刻した二人。五月雨、石井。進行役任せたぞ。」この役目を与えるために、さっきは怒らなかったのかと辻褄があった。

「もちろんです!!」やらざるおえない雰囲気に、二人息を合わせ返事をした。

「では。種目決めをやっていきたいんですけど、リレーは体育の五十メートル走で出場する人は決まっているので、後はそれ以外の競技ですね。とりあえず男子から入りたい枠に挙手をお願いします。」

太陽は元から進行役が決まっていたかのように流暢に進める。

「竜也!書記任したよん。」

「了解」

竜也が一つずつ競技の名前を言っていき、皆が手を挙げていった。もちろん人気なのは、玉入れなど楽な競技が多い。そして、この時期になると何の競技をしたいかよりも、周りの友達になりそうな人達に合して手を挙げる事が多かった。だから必然的に、クラスの端に居る人は居場所を失った。

「佐藤翔琉くん手挙げてないけど、どこ入るの?」僕は無意識に嫌なセリフを吐いてしまった。

「翔琉。俺達と騎馬戦やんね?」

「え?」翔琉は困ったような反応で僕たちを見た。それでも翔琉は頷き少し嬉しそうな表情を見せた。

「じゃぁ。お願いします」彼は敬語で僕たちと1番人気のない騎馬戦をやることになった。僕たちはリレーのアンカー、サブアンカーだった。リレーの種目が一つ前の騎馬戦は嫌なはずなのに、太陽はやっぱりこの時も太陽だった。

「女子の進行役は友梨に任せます。」大村友梨ー紗愛のひっつき虫だ。

「え?なんで私?」大きな声がクラスを駆け巡る。

「1番周りに気を遣えるから。じゃー紗愛と一緒にお願い。」堂々とクラス全員に聞こえる声で相手を褒めるこれが太陽なのだ。

「紗愛と一緒ならいいんだけどね。まぁ。」断るに断れない雰囲気が彼女の背中を押した。

友梨の性格上、太陽のように順調にはいかなかったがなんとか上手く出場者が決まった。

「先生終わりました!」

「お。ありがとうな。これからは5人体育祭まで準備を担当でよろしく。」

「うぇ。まじ!?」太陽の落胆の声が漏れる。

「5人?」友梨が小声で僕に聞く。たしかにあと一人は、、、そうか翔琉も含んでんだ。

「そう!5人!」僕ははっきり友梨に伝えた。

このありがた迷惑な発言が僕たちの5人の距離を大きく縮めていった。

2013年5月10日  体育祭

夏とも春とも言えない気候だが、空は快晴だった。

「紗愛!これ!」

「ありがとう。」太陽はハチマキを配っていた。
10クラスで3つの団に分かれ、対抗戦それが体育祭だ。僕たちは紅組だった。

「あー。なんかわかんねーけど緊張してきた。」僕は最大の見せ場が体育祭そう思っていたのかもしれない。

「なににだよ!よし!今日も一日頑張ろう」

全生徒がグランドに集められ、生徒会長の号令の合図で体育祭が始まった。

準備体操を行った後、一つ一つ競技の招集がかけられていった。

「今日はなんか良い天気だよね。」翔琉が小声で話す。

「2週間も毎日放課後準備した甲斐があったからじゃね?」太陽のおかげだと僕たち二人は思った。

「友梨と紗愛は何にでるんだっけ。」

「借り物競争です。」友梨が少し嫌そうに言う。

「大変そう。走るの嫌いなのにね二人とも」翔琉は同情するのが上手いらしい。

「翔琉はわかってらっしゃる。代わりに出る?」紗愛も口を開いた

「いや。遠慮しとくよ。」僕たち5人は笑って体育祭を迎えた。

さまざまなな演目が終了し、残すは騎馬戦とリレーとなった。

「騎馬戦に出場の方は、入場口で整列をお願いします。」

「よし!頑張ろう!」太陽のいきいきとした声が僕たちをやる気にさせる!

「頑張ってね。」紗愛と友梨が僕たちを送り出す。

僕たちは入場口に並び時間を待った。

「なぁ。翔琉、太陽。俺騎馬の上に乗って良いかな。」最後まで騎馬の上は誰が乗るか相談していた。

僕は軽くて身長が高く適任だった。それより、今思えば最大の見せ場を紗愛がいる前で見せたかったのかもしれない。

「それが一番合理的だね。」

「異論なし。」翔琉も太陽も二つ返事だった。

皆入場をし、位置についた。

「それでは始めます。」会長の声と同時にスターターピストンの大きな音が響いた。

作戦は予め決めていた。大将戦ではなく、五対五で相手のハチマキを奪い、残った騎馬数が多い方の勝利という単純な騎馬戦だった。

そこで、僕たちは機動力を活かし、小さい騎馬から攻めていくことにした。

「一番斜めに走って!!」翔琉は運動はできないが、頭はキレる。

歩調を合わせて、太陽も斜めに向かう。対角線上の騎馬に向かい合う。

僕たちは機動力を活かし、うまく相手の後ろ側に回り込みハチマキを取った。

「よし!」僕は小さく喜んだ。

こちらが一騎多い状態で有利な体制となった。
「支えよっか?」

「いや。いいよ。自分で歩ける。」

「いいから。」紗愛は僕の腕を掴み一緒に保健室まで歩いた。痛みが和らぐような感覚だった。

「すみせません。」あ。あの時の声だ。僕は始めて出会っだ日を思い出した。

「はーい。」保健室の先生がドアを開け、中に招き、僕の足を診てくれた。

「多分捻挫ね。今日の所は安静だね。」

「先生。まだこの後にリレーがあるんで、それだけでも。」

「バーカ。無理でしょ。」紗愛は僕の頭コツンと叩いた。

「私の方から多田先生の方に伝えておきます。そこのベットで安静にしておいてね。あ、擦り傷も消毒と絆創膏しとかないと。紗愛さんちょっとお願いできる?私多田先生に言いに行かないと。」

「わかりました。」そう言うと、保健の先生は走って巨大先生に言いに行った。

「ほら!足出して!」

「いいよ!自分でやるって。」

「恥ずかしいんだ?」

「違う!」

「じゃー出して!」強引に僕の足を掴み、消毒をする。その優しい消毒の仕方が、彼女の心を表しているようだった。

「なんで無茶したの?」

「何が?」

「私は気づいてたよ。翔琉だけじゃなくて、太陽も下敷きにならないように庇ってたの。」
「たまたまだよ。」

「カッコをつけるな。」優しい手つきと反対に、傷口に強くガーゼを押し付けた。

「痛って!なにすんだよ。」

「騎馬戦は残念だったけど、あの時のヒーローで主役はタッちゃんだったよ。」この瞬間は一生心に刻まれると思った。

「俺さ、、、」一大決心を前に、保健室のドアが開いた。

「石井!大丈夫か!」 

「今。大事なとこなのに。」ボソッと僕が呟いた。

「ん?なんか言ったか?あ。それよりな、五月雨が石井の分までリレーを走るって聞かないんだよ。お前走れるのか?」

「僕は走りたいんですけど、保険の先生曰くダメみたいで。」

「そうか。今回は棄権が無難だな。」

「待ってください!先生。太陽に400m僕の分も走ってって伝えてください。」

「だからな学校のルール的にな。」

「そこをなんとか。」

「わかったよ。一度教員でかけ合ってみる。」

「ありがとうございます。」こう言うとそそくさに先生は保健室を出た。僕は安堵し、肩の荷が降りた。彼女の方をみると、何か不安げな表情を浮かべていた。

「太陽も足怪我してるのに、無茶してないかな。」

「見てきなよ。俺は大丈夫だから!」この言葉はを後悔する日がやってくる事も知らずに僕は太陽の応援に行くように指示した。
「いや。ここに居るよ!保健の先生が帰っててくるまで。」

「いいから。見てこい!」

「ありがとう。」僕は自分の優越感に浸りながら、カッコをつけたかったのだろう。

紗愛は僕をベットまで運び、僕のハチマキを持っていき保健室をでた。

そこから先生に聞いた話だが、太陽は僕のハチマキを巻いて、2周分走った。彼はギリギリの所で抜かされ2位だったが、誰もが彼を主人公だと思った、と言っていた。

そらをきっかけにだ。紗愛と太陽の距離が今までよりずっと縮まったのわ。


2028年4月23日

「私が内川紗愛さんと出会ったのは山泉高校での事でした。遡ること約13年前になります。高校・大学と同じ時間を過ごしました。紗愛はご覧の通り昔から、美人でクラスのマドンナ的な存在でした。彼女は優しい性格に加え献身的で皆に愛されていました。高校一年生の体育祭の日も怪我した僕を気遣いそして、他の人の心配をしていました。彼女はそれだけでなく、部活動にも熱心で文武両道でもありました。いや、文才はなかったかも。」

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