目押しってなに?しらんがな(# ゚Д゚)
17年前の元旦、当時住み込みで勤めていた新聞販売店の店長に誘われ、いわゆる『初打ち』とやらに付き合わされた。
「今日は元旦だから出るぜ〜!」
こちとら、実の親父がパチンコで拵えた借金で蒸発。
故に、ギャンブルを敬遠していたが、
『お金は俺が出すからさ』と。
朝からお酒を飲んだから、運転手が欲しかったようだ。
まあ、人のお金ならいいか。
店長の隣に座り、渡された5千円を突っ込んだ。
初めての、そして最初で最後の賭け事だと自分に言い聞かせながら、一生懸命絵柄を合わせようと、リールをガン見し、タイミングを見計らって。
必死に『7』を3つ揃えようとするが、全く揃わない。
どうやっても、揃わない。
揃いそうになっても、必ず一段ズレる。
こんなゲームの、一体何が楽しいのだろう。
タバコ臭いし、ガチャガチャうるさいし。
もう、ストレスしかない。
親父は、なんでこんなツマラナイことに入れあげて、のめり込んで。
借金して、家庭を崩壊させて・・・。
そんなことを思い浮かべていたら、気付くとボタンを打つ指に、随分力が入っていた。
視線の先に座る、60代と思しきおっちゃんを、ふと見遣ると、おっちゃんが店員を呼び止め、ボタンを押させていた。
すると、ビカビカ光を放ちながら、賑やかな音が鳴り響く。
勢いよくメダルが吐き出され、おっちゃんニッコニコでドヤ顔!
そんなことが何度か繰り返されるので、堪らず隣席に声をかけた。
店長!店長!あの人、絶対ゴト師ですよ!
めっちゃドヤ顔で、店員にボタン押させてますよ!
じゃんじゃんバリバリ出ちゃってますよ!
「は?お前何言ってんの?」
さっきからずっと見てますが、あのおっちゃんが店員を呼ぶと必ず出るんですよ!
おかしいですよ!!
「え?お前、まさか目押し知らないの?」
なんすかそれ?
「目押しってのはな、抽選が入った時に、絵柄を狙って合わせることだよ。」
抽選ってなんすか?
「お前、まさかスロットやったことないのか?」
はい。今日が初めてです。
「言えよ!てか、お前入ってんじゃんよ!」
店長が『必殺技』を繰り出すと、台がけたたましく、そして眩しく騒ぎ始めた。
「あのな、この台はここが光ると、抽選を引いた合図でな、抽選に当たると、絵柄が揃ってだな・・」
抽選て!!!!!
ずっと、健気に合わせようとしちゃったじゃんかよ!!!
『回りクドいくじ引き』だな!!!
店長に5千円を返し、手許に3万円が残ったが、これっきり。
のめり込まなくて良かった。