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アン・サリバンとヘレン・ケラー

あのヘレン・ケラーは余りにも有名ですが、彼女の家庭教師、アン・サリバンはとなると知る人ぞ知る、という感じでしょうか。しかしながら、ヘレン・ケラーがあれだけの名声を博する事が出来た最大の要因がアン・サリバンの存在だったということは疑い無いようです。

ここでアン・サリバンについて詳しく書くことは出来ませんが、何年か前にNielsen著(2009年)の『Beyond the miracle worker』という本を読んで今でも一番印象に残っている事に触れてみたいと思います。それは、この二人の間の揺るぎない友情です。ただ、その前にアン・サリバンの一生を主に他サイトの情報を基に極々簡単に振り返ってみます。

「アン・サリバンは1866年、アメリカ、マセチューセッツ州の極貧家庭に生まれました。8歳で母親が病死、10歳でアルコール依存症の父親に育児放棄され、弟とともに救貧院に預けられました」(https://dot.asahi.com/articles/-/32442)

「当時の救貧院は福祉施設とは名ばかり。貧困者、孤児、娼婦、性病者、精神障がい者をまとめて社会から隔離するための牢獄のようなものだったそうです。不衛生で劣悪な環境から、最愛の弟は数か月で亡くなり、アンは天涯孤独の身に……」(同上)

「幼い頃に患ったトラコーマという目の病気が悪化し、視力を奪われていく中でうつ状態に。誰にも心を開こうとせず、ついには施設地下の独房に入れられてしまいます」(同上)

「ほぼ失明状態だったアンは......手術を受けますが、視力はあまり回復しません。その後、ボストンにある盲学校へ入学します。在学中に受けた二度目の手術が成功し、文字が読める程に回復しました。......1886年、アンは20歳の時に盲学校を卒業し、卒業式では総代としてスピーチをしました。」(https://www.spiritualfriends.work/entry/2019/6/21/special/thanksto/helen/and/anne)

「20歳のときにヘレン・ケラーの家庭教師の話が舞い込んだときも、引き受ける動機のひとつとして月25ドルの月謝と住居と食事の提供がありました。卒業後にまた極貧生活に戻ることになるのではないかと、不安に思っていたサリバンにとっては、願ってもない就職先でした」(https://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/3400/228663.html)

「使用人のいる裕福な家庭で、家族に溺愛されて育ったヘレン・ケラー、極貧の家庭で育ち、親に見捨てられ、天涯孤独となったアン・サリバン」(同上)

背景が全く対照的な二人でしたが、70歳でアン・サリバンが先立つまで、この二人の深い関係はずっと続く事になります。アン・サリバンはヘレン・ケラーのことを家庭で、大学で、そして、その後は著作・公演活動でと、ありとあらゆる面でサポートしていました。また、時には二人の経済事情は極めて悪く、見世物小屋のような事さえしなければならなかったようです。このような状況下でも、二人は力を合わせて難関を乗り越えていきました。

その後、アン・サリバンの老年期には多くの障害がありました。長い間断続的だった失明状態は悪化し、最終的には、一つだけ残っていた目もほぼ完全に失明状態に陥りました。それに伴い、心身全体が極度に弱まっていきました。そして、その頃のアン・サリバンを献身的に世話していたのは、ヘレン・ケラーでした。しかし、アン・サリバンは自分の過去をヘレン・ケラーにさえ明かしてはいませんでした。

「サリバンが自分の出生を恥じる気持ちは根深く、自身が64歳、ヘレンが50歳になるまで極貧の出であることをヘレンには隠し通していました。サリバンの辛く悲しい子ども時代のことを知ると、ヘレンは激しい衝撃を受けるとともに、サリバンへの尊敬の気持ちをますます募らせました」(同上)

晩年、完全に失明後のアン・サリバンは自分で手紙を書くことはできませんでした。それで、ヘレン・ケラーが手伝っていたようです。まずアン・サリバンがヘレン・ケラーの手の平に指で文字を書き、今度はそれをヘレン・ケラーがタイプライターで打つという事をしていたらしいのです(Nielsen 2009, p. 253)。これは、アン・サリバンがヘレン・ケラーの家庭教師だった頃からは想像も出来ない状況と言えます。ただ一つ言えることは、この二人が指での会話を通して計り知れないほど強く結ばれていたことでしょう。

参考文献: “Beyond the miracle worker: the remarkable life of Anne Sullivan Macy and her extraordinary friendship with Helen Keller” by Kim E. Nielsen (2009)

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