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チョコエッセイ🍫たぶんこれは宝石箱
チョコレートは茶色。生まれてこの方疑わなかったこの概念を覆したのは、紛れもなくナカムラチョコレートだと思う。
ホワイトチョコとかイチゴチョコ、抹茶チョコみたいな茶色ではないチョコレートがある事はもちろん知っている。
でもチョコレートという言葉を聞いた時、100人に聞いて100人が頭に思い浮かぶのは、きっと茶色い板チョコなのではないだろうか。私もそうだもの。
そんな私の中のセピア色の常識を、ナカムラチョコレートは鮮烈に塗り替えてしまった。
バレンタインの買い物はスーパーマーケット一択の田舎から、百貨店とかブランドとか選択肢が無数にある都会へ出て数年。
催事でよく見るなとは思っていた。
外箱のシンプルさと、中身のカラフルさが、私の知っているチョコレートとは真逆だなとは思っていたのだ。
ショーケースに近づいて、どんな味なのかなと覗いたこともあった。
けれど今まで買うに至らなかったのはきっと、虹色ケーキを口に運ぶのを少し躊躇うのと同じような感覚だった。
確実に視線を奪われるし、食べたらたぶんおいしい。それはわかっているけど、なんとなく二の足を踏むかんじ。
スイーツのアクセントのフルーツやミント以外は彩度が低めの食べ物を見慣れていて、若干の抵抗を感じているのは否めない。
味が想像できないのも、理由の一つだったかもしれない。
味と匂いに過敏で、大多数の人が好きな食べ物が苦手だったりする。ので、聞いたことがない素材が使われているこの美しいチョコの中に、もしかしたら苦手な味が混じっているかもしれない、と思うとしり込みした。
そんなわけで、気にはなるけれどご縁は無いのかもしれないと思っていたナカムラチョコレートだったが、買うきっかけは突然に訪れた。
青色が空前のブームとなったのだ。自分の中だけで。
それで、青いチョコを買いたいなとネットをさ迷った。幸いな事に、青チョコレートは数年前からいくつかのブランドが作っているようだったから、その中から絞り込んでいくことにした。
そんな中見つけたのが、ナカムラチョコレートの幾何学的な形のチョコレートと、花の形のベリーのチョコレート。どちらも深く濃い青色をしていた。好きな部類の青だった。
ただ1つ困ったのは、この2つが同じ箱に入ってはいなかったことだ。異なるセレクションの中の1粒だった。それを知った瞬間から、1週間以上どちらを買うのか検討で頭を悩ませる日々が続いた。
そうして我が家にやって来たのが、オーストラリアセレクション。幾何学的な形のチョコが入った方のチョコレートたちだった。せっかくならば知らない味をとことん味わってみよう、という小さな冒険心で。
ビスマス結晶みたいな形の小さいチョコレートの中にはよく知ったナッツが入っていて、知らないはずの味なのに不思議な安心感を覚えた。初めて行く旅館でホッとできてしまう感覚に似ている気がした。
どうしてだろう、ショコラティエが日本の方だからなのか、聞いた事のない材料の中に食べ慣れた食材が使われているからなのか、はたまた全く違う理由なのか。
初めに口にした1粒がこんなにも楽しいと、口に運ぶ手が止まらなくなってしまって、その日のうちに宝石箱は空になってしまった。
あれからもう1年。
この箱もリーフレットも、もちろん中のチョコレートだって家には残っていないのに、この6粒の記憶が心の中にビビットに染み付いて消えない。