#1 インド・コルカタ小ヤギの断頭儀式
さて、インドはコルカタ。
カーリー寺院で、山羊の生贄をカーリーに捧げる儀式をみる。
ヒンドゥーの神・カーリーは血を好むので、カーリー寺院では毎朝、子山羊を生贄に捧げているのだ。方法は極めてシンプル。頭を落とす。
動物を殺めるところを見たい、というのも奇特な願望だと思うし、文字面だけ見るとなんともサイコで気が引けてしまうけど、公開されているものだし、まあいいか、と自らの見聞欲に従う。
しかし困ったことに、何時に儀式を行うのか、決まっていないそう。午前中というのは確実そうだが、わかるのはそれだけだった。
9時に朝食を摂りながら、もう終わってるかもなぁ、なんてダラダラ過ごし、9時半にようやくタクシーに乗る。
コルカタ都市部はさほど広くないが、何せここはインドである。世界最悪の交通渋滞大国として悪名高い。ご多分に漏れず、渋滞に捕まる。しかし、儀式が何時にやるかもわからないので、焦りようがない。
と、のんびり車窓から街の景色を眺めること約1時間。カーリー寺院に到着である。
観光名所とあってか、というわけでもなく、コルカタなんてどこに行っても人も、バイクも、車も多いので、ひかれないように人混みを往く。
寺院に近づくと、おじさんに声をかけられる。ああ、あれだ、案内をするけど、お金を要求したり、自分の店に連れて行く、というやつか。よし、乗ろう。
そもそも、寺院のどこで儀式をやっているのか、見当は付いていないのだ。ここは、彼にのって、連れて行ってもらうことにしたのだ。多少なら請求されてもいいや、と思い。
sacrifice という英単語が通じ、おじさんに連れられ、寺院へ。
喧騒にかき消されて気づかなかったが、入って割とすぐにある区画で、ヤギが泣いていた。撮影が禁止なので描写することにする。
つくと、少年がドラムロールを始めた。無論、僕がついたから、というわけではなく、僕がギリギリ間に合ったのだ。
繋がれていたヤギはメーメー鳴くが、悲壮感のようなものはない。
屠殺直前の馬が、恐怖のあまり立てなくなってしまう、という映像を見たことがあるが、小ヤギにそのような様子はない。なんとなくだが、幼過ぎて、何が起きているのわからないのだろう、と思った。
小ヤギは、男に抱えられると、あっという間に断頭台に固定された。山羊の首ってこんなに細くて長かったのか、と驚く。
で、執行人が現れる。大きなククリナイフに似たナタを片手に、一瞬で、スパッと頭を落とす。首からは二筋、ジェットホースのように血が出ていた。分離された頭と胴体が並べられる。胴体はしばらく、動いていた。
意外なことに、グロテスク、という印象は持たなかった。命の終わりなんて、こんなものである。あっさりしているな、と思ってしまった。それはきっと、小さなこのヤギだけではなくって、人間も本来そうなのかもしれない。
うーん、と神妙な面持ちでいると、案内をしてくれたおじさんが、金を払え、というジェスチャーをする。はいはい、わかりましたよ、と50ルピー札を手に取るが、おじさんは、俺じゃない、執行人に渡すんだ、と。
ああ、そうなの、と思ったが、貴重な儀式を見せてくれてありがとう、とばかりに執行人の男に50ルピーを渡した。
案内人のおじさんは、もうその場にはいなかった。お礼ぐらい言いたかったが、いないものは仕方がない。僕もカーリー寺院を後にすることにした。
ちなみにgoogleでカーリー寺院と検索すると、ダクシネーシュワル・カーリー寺院が優先して提案されるが、Kali Mandirが正解なので注意。
場所は以下。
住所
P 12, CIT Rd, Beniapukur, Kolkata, West Bengal 700017