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ラクロスにおけるトランジション

トランジションとは、攻撃と守備の切り替えを指すラクロス用語です。攻守の切り替えは試合の流れを左右する重要な局面であり、トランジション勝利に影響します。

トランジションの場面

ラクロスの局面には画像のようにセットオフェンス、セットディフェンス、クリア、ライドの4局面がある。

矢印のように双方向に局面が移り行く可能性があり、矢印の部分こそがトランジションとなっている。他のスポーツにおいてはトランジションを指す場合、攻守の移り変わりの局面においてトランジションと指すことが多いが、ラクロスの場合はクリアからセットオフェンスに移行するときにもトランジションが存在すると私は考えている。
つまりトランジションは
・ポジティブトランジション(守備→攻撃)
・ネガティブトランジション(攻撃→守備)
・アタックトランジション(クリア→セットオフェンス)
・ディフェンストランジション(ライド→セットディフェンス)
である。以下ではそれぞれのトランジションについて考えていきたい。


ポジティブトランジション

ポジティブトランジションとは守備→攻撃のことであるが、この局面を有効に使えるかが勝利にもっとも影響を与えると考えられる。
ポジティブトランジションが生まれる場面として、グラボやゴーリーセーブ、チェイス、インターセプトが大半であろう。
特に学生レベルの試合においてはグラボの発生率が非常に高いことから、グラボからのポジティブトランジションに移行し、ブレイクになるケースは非常に多い。
「3つ有意」にもあるように数的優位がポジティブトランジションによって獲得できるのであれば、得点の確率は非常に上がる。
守備から攻撃に移行する場合、自チームの矢印は相手ゴール方向に向いているのに対し、相手チームの選手は矢印を180度反転してから動き始める。そこには数秒の遅れが生じ、後手から始めなければならない。
また相手ゴールの近くでボールを奪いポジティブトランジションができたとしたら相手の守備陣形は整っていない為、ズレを簡単に使いやすい。
このようにポジティブトランジションが起こった瞬間には自チームが相手より必ず優位に立ち、ゴールを奪う可能性をより高めることができるのである。

ネガティブトランジション

ネガティブトランジションとは攻撃→守備のことである。攻撃優位のラクロスにおいてどのように守備をするかはゲームを優位に進めるために重要なテーマである。その中でもネガティブトランジションが考えられていなければ相手に数的優位を作られ、最終的にフリスぺや大外にフリーの選手が生まれ失点につながってしまう。
さらには失点した場合においてもラクロスの場合次の攻撃権が必ず自チームにあるわけではない。
そういった意味でも守備においてネガティブトランジションはブレイクをケアすることやセットディフェンスに間に合わないことを防ぐために考えられなければならない。ネガティブトランジションをすることが、簡単に失点をする可能性を少なくする方法である。
ポジティブトランジションが勝利の可能性を0→1にするものだとしたら、ネガティブトランジションは勝利の可能を1→100にする行為だと考えてもらいたい。だからこそネガティブトランジションは重要である。
しかしラクロスにおいてあまり重要視されていないが、オフェンス時のディフェンスという意識は大切だと感じている。
それは2次攻撃、3次攻撃につなげる為でもあり、相手ゴール近くでネガティブトランジションによりボールを奪えたのなら最大のチャンスにもなる。
実際に2022年に学生チャンピオンになった慶應女子はネガティブトランジションの意識が強く、ストーミングという戦術を用いて優勝した。
慶應の攻撃力の裏にはこのネガティブトランジションがあったのである。

アタックトランジション

これはラクロスにしか存在しな場面である。
アタックトランジションとはクリアからセットオフェンスに移行する局面である。
現代のラクロスの現状として、クリアはリストレまでがゴールであり、一息ついてセットオフェンスを行っている。
つまり、流れの中で攻撃が2つにわかれ、クリアとセットオフェンスという2段階に分けられている。試合を見ていればリストレを越えた後に少しの間が存在している。この間についてアタックトランジションと呼んでいる。
トランジションのなかでこのアタックトランジションが最も悠長にのんびり移行している。理由は様々だか大きな要因としてDFがボールに対して来ないこと。もう一つはラクロス界においてセットオフェンスだけの練習をしており、クリアとは別物だという考えがあるということ。つまり、ラクロスにおいて攻撃というと必ずセットオフェンスをイメージしており、クリアは攻撃という認識が薄いということである。だからこそ今から攻撃を始めるという意味での一息であり、奇妙な間が存在していると感じる。
このトランジションについて取り組んでいるチームはないからこそ、このトランジションを早く移行するチームが出てきたときにはどうなるか見てみたいというのが思いである。
おそらく、セットオフェンスを常に先手で動き、フリスぺや3秒によって得点を量産するチームになるのではないかと私は考えている。

ディフェンストランジション

アタックトランジションと同様にディフェンスでもトランジションが存在している。ライドからセットディフェンスに移行するときの局面の違いについてはかなりあると考えている。
ライドでは多くチームにおいて「奪う」という意識が存在しているものの、セットディフェンスになった瞬間に奪うよりもゴールを「守る」意識が強くなる。ラクロスの特性上攻撃有利のルールのもとでプレーしなければならないのだが、セットとライドでのディフェンスの意識の差については異常なものであると考えている。
このディフェンストランジションが発生することで、チェックアップの時間が生まれディフェンスは一時的に隙が生まれやすいのだけれども、日本のラクロスにおいてディフェンストランジションと同様にアタックトランジションも存在しているためにお互いに時間が必要となる。つまり、ディフェンストランジションでの隙がないものと考えられるのであろう。
私たちが考えられなければならないことはアタックトランジションが存在しなくなったときに同様にディフェンストランジションをなくせるかということである。
つまりセットディフェンスがゴールを守るではなく、奪うという意識を持ったとき、アタックトランジションとディフェンストランジションの存在が亡くなり、ラクロスにおいてスピード感がより増してくのではないだろうか。

まとめ

これまで4つのトランジションについて考えられてきたが、ラクロスにおいて表現するトランジションが少なくなることを私は期待しています。
ラクロスは何かと細かく分けがちであり、本来オフェンスとディフェンスのみでいいことも、セットやクリア・ライドというように呼ぶ。その現象にたいしてはいいものの、セットとクリア・ライドという別の目的が存在しているように感じて仕方ならない。つまりラクロスにおいて勝利するために、ゴールを決めるというところからの逆算がなされていないのではないだろうか。ディフェンス時においてもゴールを決めるためにディフェンスするという意識が必要であり、そのためにトランジションについて考えられるべきだと私は考えている。


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