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【Single】Every Moment【008】
2020/2/9 Release
sxne-008
楽曲解説
僕達が新メンバーを迎い入れ、5人組として初のリリースとなった曲。それまでのエイトビート主体の楽曲とは異なり、16ビートを導入してダンサブルに寄せることに。詰まるところ、80s-90sに活躍したUKのThe Stone Rosesを完全にお手本にしました(その影響はジャケットのレモンにも)。このマッドチェスタービートを用いた素朴でエヴァーグリーンなギターポップはずっとバンドで試してみたいことであったので、新体制を機に録音物として残すことにしました。
制作話
オンコードを用いて作曲することに楽しさを見出した頃の曲だったと思います。オンコードについて簡単に説明すると、素朴な和音を鳴らしてる中でも、音の鳴りを司る低音だけ変化をつけることで、いとも簡単に魅力的かつ複雑な音像にすることができる魔法のようなコード。曲の随所で使われていますが、わかりやすいところでいえばやはりサビでしょうか。
A - E on G# - Em on G -D on F#
onの後を指してるのが低音になります。この辺の説明はもっと詳しい記事があると思うので割愛しますが、ギターとベースがそれぞれ違う動きをすることによって音像に深みが出るんですね。面白い。ここのサビの部分を褒めてくれた人がいたことを今でも覚えています。
また途中で、ノンダイアトニックコードであるドミナントマイナーが登場します。上記のコード進行でいうところのEmがそれに当たります。これも詳しい説明は割愛しますが、ここにEmが出るということをアニメで例えてみましょう。古い話になりますが、鳥山明氏のアニメで「Drスランプ」がありました。第81話「追ってペンギン村」の中でなんと同じく鳥山氏の作品「DRAGON BALL」の悟空が登場するのです。まったく違うアニメなんだけど、同じ作者という共通点からひょいと顔を出す感じ。このEmもそのようなニュアンスです。このへんもっとうまく言語化ができたら、定期的に更新していきます。お楽しみに。
レコーディング時の思い出と言えば、本来僕のボーカル録音日にメンタルがやられて声が出なくなって急遽別の作業(多分タンバリンとか)に予定変更したことが一番思い出深い。誰も覚えていないだろうけど。
ギターの録音について正直ほとんど覚えていませんが、フレーズ自体は8割方僕が考えました。特にサビ部分の2本のギターのアルペジオの絡みは素敵だと思いませんか?ちなみにそのギターを録音した近藤も山崎もどちらがどちらのギターを録音したかわからないらしく、そのレコーディング以降で忠実に再現されたことはありません。もったいないぜ!
また最後にサビで「ラララー」と続く部分があるのですが、その直後に呼応するようにベースソロを入れる構想でおりました。レコーディング前のデモにも残っているはず。これは新加入した松田に華を持たせる意味も含まれておりました。しかしドラム→ベース→ギター→ボーカルと録音していく過程で、本来ベースソロを入れる部分にドラムソロが入ってしまいました。エンジニアの藤原氏が「ここにソロを入れるのは難しい」と言われるまで誰一人その事実に気付かなかった!急遽ベースはドラムのフレーズに沿うようにシンプルに鳴らすことになりましたが、さらに藤原氏が「The Whoみたいでカッコイイ」と言ってくれたので結果満足したものになりました。
※今後も出てくると思いますが、僕はロックスターと比較されると嬉しくなってそれを採用してしまうという癖を持ち合わせています。
後半サビに入るメロトロンのフレーズはエンジニアの藤原氏に考案してもらいました。僕等はレコーディングのたびに、どこか藤原氏の意見を取り入れたいと思っており、この曲に関しても「もう少しサイケにしたい」という無茶振りをして、このフレーズをその場で考えてくれました。メロトロンの音は子供用の簡単に持ち運びができるおもちゃのようなピアノを使用。山崎が「ミスチルみたいだね」と言ったを記憶しています。
そうだ、この曲のドラム録音の時に確か開始1時間ほどでスネアが破れるという事件が起きたんだった。岩月が急いで最寄りのドラムショップに駆け込み、僕等はその間他愛もない会話をするほかなかった。自分だったら焦って「やべー」状態だけど、今思うと岩月は冷静な判断をしてたと思う。
ボーカルについて興味深い反応がありました。いつも通りボーカル録音をしていると、「なんか今までと違うね」と言われました。声色なのか音程なのか考えられることはないことはなかったですが、理由を尋ねるとそれは意外なものでした。それは「発音」でした。
そう言われて思い当たる節が一つ。それはASKAのボーカルがすごく魅力的に感じていた頃でした。ASKAのボーカルの一般的なイメージといえば、高い歌唱力はもちろん、あの独特なねちっこい歌い方でしょうか。あの歌い方の理由は「日本語を大切に歌う」というところからきてるそうです。投げつけるのではなく、一音一音ちゃんと置きにく印象ですね。そんなASKAの声を浴びまくった僕の中のリトルASKAが顔を出したのでしょう。なんてボーカルは奥が深いんだと絶望したと同時に、自分では気づかない些細な変化も感じとられてるんだという発見がありました。
最後にミックス時にした会話を覚えています。ミックスというのは料理に例えたら盛り付け作業と言ってもいいでしょう。僕は2種類の参考音源を持っていきました。1つは元ネタのひとつであるThe Stone RoseのElephant Stone。もう1つはThe Dukes Of Stratosphearの「Vanishing Girl」でした。僕は前者推しで、後者はあくまでも補足という感じ。時代もバンドも違いますが、実は同じ音楽プロデューサーのジョン・レッキーが担当。60年代のジャングリーなギターポップにサイケの要素をまぶした音像を現代的解釈でまとめるという意味では両曲に共通点はあるのです。しかしスタジオの良質なスピーカーで改めて参考音源を聴き比べた結果、多数決でThe Dukes Of Stratosphearの「Vanishing Girl」が選ばれました。なぜ自分で用意したのに自分の推しが選ばれないのか、そういうところもバンドの醍醐味ということにしておきましょう!
歌詞
「僕は君のことを...」言えなくて飲み込んだ
忘れることなんてできないのに
不安を確かめるようにまた立ち止まる
それでも遅くはないと思い込ませてくれよ
風に吹かれた岐路の上で聞こえた気がしただけ あのメッセージ
うだつがあがらないからとただ当てもなく待ち続けた
せめてあの頃の自分に患いに似た胸騒ぎをあげたい
間違いを知るたびに懐かしい痛みが
衒わぬ行方を教えてくれる
だから見落としたくないんだ どの瞬間も
もう二度と戻らない日々は
時計の針を急かしながら
その未来がやってきたこと
振り返るたびにその理由を知らせる
La La La La La La La La La La La La
せめてあの頃の自分に患いに似た胸騒ぎをあげたい
歌詞を書くときに念頭に置いていたのは、カラッとしたサウンドとは裏腹なジメッとした日本語の歌詞にしたいと思ってました。いわゆる四畳半フォークぽさといいますか。ただ自分のルーツに四畳半フォークはあまりないので、あくまで方向性ということで。
後に元ネタとして紹介しますが、この曲は桑田佳祐の「夏の日の少年」を弾き語りをした直後に作りました。(いきなり歌詞の話じゃなくてすいません)そういうところからこの曲の歌詞も日本語にしたいと思ったのかもしれません。今思うと、その時期にRCサクセションの「I Like You」や「空がまた暗くなる」などフォーキーな曲をよく聴いていたので、その影響もどこかにあるかもしれません。
ちょうどこの時期に見た昔の映画の世界観にも影響を受けました。それは「15才 学校Ⅳ」。山田洋二監督の学校シリーズの現時点での最終章。映画の内容については割愛しますが、不登校になった主人公が一人旅をすることになり、その先々で出会う人間と人生を描く内容でした。その中で主人公と同じく部屋にひきもこりになった少年と出会い、別れ際にその少年からもらった詩(と絵)が心に刺さるんですよ。その内容は、引きこもりの少年よ、君は何故そこまで達観しているんだ、人生何回目だ?と言いたくなりますが、気になる方はぜひ映画をご覧ください。
その素晴らしい詩を受けて、僕は荒井由実のやさしさに包まれたならをつい思い出してしまいました。「目に映るすべてのことはメッセージ」。まさにそうだなと。言い換えれば、「無駄なことはない!」となるとマッチョ指数が高くなりますが、そういうマインドだったのは確か。何かやらなきゃみたいなそんな気持ちがあったはず。
後から自分で気づきましたが、冒頭の「「僕は君のことを...」」の歌詞は井上陽水の「帰れない二人」にも出てきてました。知らずに蓄積されていたものがこうやって出ることあるんですね。
参考音源(元ネタ)
全体的な音像やアレンジは完全にThe Stone Roses。
導入したくてなかなかできなかった16ビート+ギターポップを再現。
作曲という面ではこの曲がベースになっている。
誤解を恐れず言えば、桑田佳祐の曲をThe Stone Roses風にアレンジにしたと言ってもいいかもしれない。
評価
世に出してから正直あまり手応えを感じることは少なかったです。しかし、スタジオで演奏する際は5人の役割がしっかり出てて心地良いです。ぜひこれを機にもっと聞いてください!
クレジット
小出雄司:Lyric,Music,Vocal&Chorus
近藤知広:Guitar&Acoustic Guitar
岩月貴幸:Drum&Tambourine
山崎晃浩:Lead Guitar
松田浩太朗:Bass Guitar