色褪せたサバンナ高橋
五月の下旬のこと。
20歳になってから通い始めたゴールデン街。その中でよく行っていたお店がちょうど店番を募集していたのでその面接にために僕は昼のゴールデン街を歩いていた。ゴールデン街は東京でも有数の飲み屋街で昼間に訪れる客は少なくその日は水曜日ということもあり営業しているお店も皆無といって良いほどがらんとした光景だった。夜のゴールデン街は暗がりの中で道の左右から様々な看板が顔を覗かせその狭い道を彩り、あちこちかた酔っ払いの鳴き声が聞こえ、狭い道を譲りながら歩かなくていけない。それに比べ、昼間のゴールデン街はさんさんと降り注ぐ太陽が誰もいない道を照り付けお酒の入っているであろう段ボールと昨晩、空けられた瓶カンペットボトルのゴミたち、駐車場にはタバコを吸うサラリーマンと猫いった様相で赤い顔をした酔っ払いは誰一人としていなかった。新鮮でどこか寂しいゴールデン街だった。
しばらくして面接は終わり帰る前に近くのファミマに向かうとその向かいの建物から3、4人の男性が出てきた。ファミマの向かいにあるのは吉本興業の本社だ。夜にしかゴールデン街に行かない僕にとってそこは酔っ払いが腰を下ろしそれを警備員が冷ややかな目で見ているだけの場所であった。かくいう僕もそこに腰を下ろしイベント帰りの知人とR18の漫画を読んだことがある。しかし、昼間になれば話は違う。日本でも有数の芸人が所属する見る人が見ればその建物だけで白飯をかきこめるようなそんな場所だ。そこから出てきた男性たちをよく見てみるとその中にサバンナ高橋がいた。ヒルナンデスで元気に話をするサバンナ高橋とは対照的に漫才もトークもするわけでもない(仕事ではないのだから当然)大人同士で軽く頭をペコペコし合っていたサバンナ高橋がいたのだ。そのギャップのせいなのかどこかサバンナ高橋の顔が随分と白く、色褪せたように見えた。
ゴールデン街もサバンナ高橋もやはり、行くべきときに行き、見るべきときに見るものと感じ、僕は店番のバイトに落ちた。
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