夢の中の異界駅
はじめに断っておきますが、僕がみた夢の話です。
文房具にハマっている僕は、癒やしを求めて文具売り場を見て回るのが趣味になっています。ですが最近ずっと忙しくて文具売り場に行くことが出来てなかったせいか、夢の中にその欲求が現れたようです。
文具を喫しに自宅最寄り駅から電車に乗り、馴染みの文具売り場がある駅へ向います。
しかし困ったことに僕は夢の中でも寝ていたらしく、聞き馴染みのない駅名のアナウンスで僕は目が覚めました。まだ夢の中なんですがね。ですが何故かとっさに降りようともならなりませんでした。なんだか考えがまとまらないし体もぼんやりとして動かない。発車しますのアナウンスを聞きながら「この駅に降りるのも間に合わなさそうだ」と結局その駅にも降りるのをあきらめ、次の駅で乗り替えるために降りようと電車の外を眺めながらぼんやりしていました。
あたりは既に薄暗く、地平線が紫と薄橙の美しいグラデーションになっています。素晴らしいマジックアワーには田園風景が似合うのでしょうが、僕が居たのはお台場のような所で黒く巨大なビルのシルエットが線路を囲んで見えています。今思い出せば、観覧車の外の照明は光っていましたが、ビル郡の窓明りは全く無かったかもしれないです。
電車は橋の上ではなく、水面ぎりぎり埋まった線路を白波もたてず静かに運行しています。
僕は夕日が元より大好物で、マジックアワーが綺麗すぎて「駅に降りたら写真を撮ろう」という気持ちでいっぱいでした。ただ、これだけ暗いなら文具は諦めておとなしく帰ろうと近づく駅舎を見ながらそう考えてると、知らない女性が僕に叫んだ。
「間違えたなら早く戻らないと」
女性と言っても声の高さでそう判断しましたが、人と言うよりは落書きのような見た目。おざなりにクレヨンで描いたような直線が女性の天辺からヒザ下まで垂れ下がっていて、顔は全く見えず、腕も女性というか人の形をした黒い線といった見た目です。
ですが、不思議と嫌悪感はありません。
電車が止まるやいなや僕の手をつかみ、僕の体が浮く程の勢いで僕を引っ張っていきます。
「写真を撮りたい」と訴えるもお構いなしに駅舎に駆け込む。
駅舎と言ってもただの四角い箱といった建物で駅っぽさはなく、半地下のような入り口は入口というより裏口のような佇まい。
入ってすぐの改札を慌て抜けると、既に新しい車両の中に僕は入っていました。
車内は可愛らしい動物型のソファーベッドの席と進行方向を向いた普通席が並んでいて、僕を引っ張って連れてきた女性はまるで他人ですといったふうに僕に背を向け普通席に既に座っています。そこで僕は「これは異界駅系の怖い話の中なのかと」漠然とした不安感を覚え、そこで本当に目を覚ましました。
僕はこの駅の名前を覚えているのですが、どこで読んだというはっきりした記憶がないです。ただ駅名を見たという感覚だけがあり、その時に「葦駅(あしえき)?」と音で覚えていたのですが、起きてからややあって漢字の覚え方を「違うの辺がない字」と覚えていたのをあらためて思い出しました。
漢字を調べて解ったその駅の名は「韋駅(なめしがわえき)」。
夢の中で音声でアナウンスされたわけではないので、ナニエキが正しい読みかわからないままです。「韋駅」、いったい何の駅だったんだろう。
気になる事が一つあります。韋駅で降りて改札を潜り、別車両に乗ったのだから「乗り継ぎ」なわけで、僕が覚えている夢の範囲内では僕自身は駅から出れてないんですよね。