記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

月影の鎖 猪口渉編 感想

やりました、月影の鎖。
神楽坂、望月に続いて、猪口編です。ちらっと見かけた公式推奨順では確か猪口が一番最初だったと思うので(神楽坂シナリオを最初にプレイしている時点で台無しではありますが)、ちょっとくらいそれに沿ってみてもいいかなと。
ただ感想を書こうと思いながらプレイしていると何の前提もなくプレイするよりも色々考えちゃっていいのか悪いのかわからなくなりますね。
人に説明しようと思いながら本を読むと理解度が上がるなんて話もありますけど、多分それに近いような。兎にも角にも「あ、これは覚えておこう」とか考えちゃいます。いいことなのかな。
一応、猪口編のネタバレと、神楽坂編、望月編のネタバレにも注意。どうぞ、よしなに。

猪口、プレイしてみて分かったんですけど意外と口調がかっちりしてますよね。
神楽坂、望月共通シナリオだとそもそも猪口とあまり関わらなかったのもあって猪口のことを殆どと言って良いほど知らなかったんですけども、初対面で「めぐみ」と呼ばれることもあって、ここまで「真面目、誠実、堅物」みたいな人だとはちょっと思ってなかったです。そう思うとこのゲーム、真面目な人多いな。
まあ今思うと「めぐみ」呼びは露骨に歳下扱いされていたんだろうなとわかりますが。
スキンシップも多かったですけど、村八分にめぐみも加わるまでは全く下心を感じさせないから凄いことです。

これもやってみてびっくりしたんですが、思った以上に「しっかり者のお兄ちゃん」なんですよね猪口。プレイ開始直後に護のゆるさに慄いた記憶があるんですが、今思うと猪口との差別化の結果なんだろうな。
護がゆるい(とは言いつつも兄として抑えるポイントは抑えているのが護のチャームポイントです)お兄ちゃん担当で、しっかり者のお兄ちゃん担当が猪口、みたいな。
時に、私は兄キャラが大好きなんですが、正に猪口みたいな「〜しなさい」「こら」とかはっきり注意するタイプの人が特に好きで、ノアくんとのやりとりを見たときに(とんだ伏兵がいたもんだぜ……)と思いました。あの対応をもっとがっつりと主人公にやられていたら危なかった。死んでしまうところでした。
いや、そうなるともう恋人どころか完全に兄になってしまうので、それはないでしょうけど。
私のこの感じから分かる通り「恋愛」と同じくらい「家族愛」への萌えがあるので、護が本当に怖いです。もう既に好きだもんこの人のこと。これ、猪口編の感想だよね??
ただ、私がこれだけ「お兄ちゃんだ……」と思うのに、めぐみが猪口と対して(自分にされた対応のことで)「お兄ちゃんだ……」とは一切感じていなかったことをふと思い出して笑えてきました。めぐみにとってのお兄ちゃんって護で、護って全然タイプ違いますもんね。
おちゃめやはしゃぎを咎めるどころか一緒にわいわいしてくれるタイプのお兄ちゃんです、護は。

猪口編のめぐみに関しては、勿論ノアくんの存在あってのことだとは思いますが、神楽坂編と同じくらい能動的でそれもちょっと意外でした。
めぐみ、流されるように生きようとは思っていても正義感強くて素敵ですよね。ノアくんを助けられる時点で相当すごい。
村八分に立ち向かうところ、護がそれに賛同してくれるところでベタなんですけどグッときちゃいました。村八分、ああいうふうに露骨に石や暴言を投げられるというのは流石にですけど、別に珍しいことだとは思わないので余計に。
なんならネットのほうがああいうの酷いんじゃないでしょうか、今だと。界隈内で「なんとなく」横行している意味不明なルールや風潮があって、それに沿わない人間が「いないもの」とされている、とか、ごろごろある事態ですよね。私もそういうものとは全然、無関係ではないです。みんなもそう。
ただ、今だと、というかネットだと流石にもう少し理論武装されているかなとは思いますが。ああいうのはみんな正義感でもって誰かを迫害しているから厄介なんです。繰り返すように、本当に誰も他人事ではないんです。
それでも集団に屈さないようにしよう、っていうのは現実的には本当に難しすぎますけど、私もそうあれればいいなとは思いますけど、個人的には、何を守りたいかによるんじゃないでしょうか。
みんな正義が一番大事だとは限らないから、好きなようにしたらいいと思います。たとえ集団の味方をしても、別に。
私は味方をしたい人の味方をします。という基準ですが。なので勝ちたいとか変えたいとかそういうのはあんまり無いんですよね。そもそも集団でうまくやっていけない気質なので孤立も気にならないだけですし。
めちゃくちゃ個人的な話をしてしまった。こういうことを考えさせてくれるゲームは良いゲームです。
話は変わりますが、神楽坂編で街のことを多く扱っていて重かっただけなのかもですが、猪口編はどちらかといえば「村八分」「差別」がメインテーマだったように思えて、比較的さっくり読めましたね。酷い目には遭わされましたが、本当にみんな暴走しちゃってるだけなので構造は複雑ではありませんし。
あと、猪口がスマートに強引なのでめぐみの躊躇いが逡巡が少なめだったのもあるかもしれません。望月はそのへんしっかりと向き合って時間をかけて、根本から取り組んでくれた感がありましたが、猪口編だと早々に「謝り合うのはやめにしませんか」とめぐみが提案するからすごいことですよね。
猪口もめぐみに負い目があって、たくさん謝っちゃう人だったから、めぐみも誰かに何かをしてあげたい気持ちになれたから、立場が変わると言うことも変わりますよね。めぐみの変化のとっかかりが違うのも面白いです。

あと、榛名がいいやつすぎます。なんなんだこれ。望月編で神楽坂の株が上がり、猪口編で榛名の株が上がる。なんなんだこれ。
個人的には榛名がそうまでしてめぐみに入れ込む理由がちょっとまだわかんないし想像もつかないですけど、めぐみへの優しさが「うわ!!好き!!」ってなっちゃう感じで危なかった。
物価があがってからあまり負担にならないけど利益になりそうなメニューを頼んでくれたり、村八分に遭ってから来店してとにかくいっぱい頼んでくれたり、あまつさえ仕入れが出来なくなっためぐみに食べ物をくれる榛名、すごすぎます。一番若いのに気配りが細やかとかいうレベルじゃない。なんなの、この人?只者じゃないです。
あと友達になった途端に本当に親切にしてくれるのがギャップで凄かった。めぐみと同い歳ってことは、猪口と出会ったとき榛名は12歳で、猪口は17歳か……。12歳で家にも帰りたくない中に猪口と出会ったのか。それは影響も大きいはずです。
多分、家や家族があまり好きじゃないからこそ外での縁、友達を大事にする人なんでしょうね榛名は。良い人だけど、ちょっと苦労しそうな価値観だ。

あと、猪口の依存エンドが比較的あっさりしていた(描写が!!)ことに良心を感じて笑っちゃいました。バッドエンドの切り口で良心を感じるゲームってなんなんだ。
いや、だって、寒村に移り住んでからあの正義感の強い猪口を犯罪者であるめぐみが縛ってしまっている……みたいなエピローグをもっとねちねちやってくれそうじゃないですか普通?サッと描写だけで終わって驚きでした。でもあれかな、ノアくんも巻き込まれているからあんまり二人だけの仄暗さに浸れる感じでもないから納得かも。
いやまあノアくんが死んじゃってるバッドエンドもあるんですけどね。酷い話すぎて何も言えません。その気になれば深海を撃てるめぐみ、危険だ……。

そうだ思い出した。あと、やっぱり神楽坂のエンドで起こる火事って、深海のせいだったじゃないですか!!!!やっぱり!!!!くそっ!!!!これ、やってるときに急に判明して怒りでどうにかなりました。
でもこのシナリオだと神楽坂が自ら気付いて阻止できるんですね……。この違いってなんだったんだろう。榛名が最初から乗り気かどうか、とか……?でもやっぱり悲しい。少なからず、めぐみが神楽坂にべったりでリソース割いちゃって少し視野を狭めたのはあんまり否定出来なさそうで。
神楽坂のシナリオ、深海を敵に仕立て上げることで街の一致団結を強めるというのも策の一面だったりして、本当に深海の内面に踏み込む発想すらありませんでしたからね。望月編でもわかるように、意外とそこを突けば解決しちゃったりもするんですけど、神楽坂じゃどっちみち無理だったろうし。でもなあ。悲しいです。

なんか猪口以外の話ばっかりしちゃいましたが、猪口編、良きでした。この辺で締めです。
やっぱり村八分に立ち向かうのが熱すぎて恋愛というかそっちに気が向いちゃったかも。最後、ノアくんが青空の下で笑顔で嬉しかったです。
一番好きなシーンなんですが、桜の耳飾りをめぐみに何も言わずに買ってくれて、めぐみに貰った手鏡で付けてるところ見せてくれるのが本当に良すぎました。最初から全部めぐみのために……。ここで有無を言わさないのがお兄ちゃんパワーです。いや、恋ですが。
榛名のシナリオも、すぐ読もうと思います。楽しみです。何気にこれ一番文字数が多い。
読んでくれて、ありがとうございました。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?