Jin-roh the wolf brigade(人狼韓国版)をみた
*死ぬほどネタバレしてます
押井監督のライフワークというか自分の哲学作品「ケルベロスサーガ」。
日本が戦争にまけたのがアメリカでなくドイツならという架空歴史モノなんですがまぁそこらへんは押犬監督なんでドイツっぽい武器とパワードスーツを如何に日本でガシャガシャやるかのための舞台装置でしかありません。鋼鉄の甲冑に身を包み反政府組織を狩り続けた者達「特起隊」がついにその役目を終える時どのような役を演じて終わるのかというのが主眼となります。
あと押井監督の犬哲学、自分たちが時代に取り残されようとも自分たちの信念に殉じる犬の生き方をたっぷりギドギドに載せたのが「ケルベロスサーガ」です。
そんな「ケルベロスサーガ」ですがいろでてます。
実写映画では「紅い眼鏡」、「ケルベロス -地獄の番犬」
藤原カムイ先生の大傑作「犬狼伝説」他
で今回のnetflixで公開された「Jin-roh the wolf brigade」は「ケルベロスサーガ」唯一のアニメ映画である「人狼 JINーROH」の韓国リメイク実写版になります。
映画の出来としてはかなりすごい出来です。
「ケルベロスサーガ」の表看板である犬の甲冑プロテクトギアもきっちり作りこまれてますし舞台を韓国に変えたことでいろいろ変わった設定もまぁ韓国を舞台にしたならそう変更するのは自然となるでしょう。
が、まぁ一点だけ大胆すぎる変更してるんですよ、この映画。
「人狼」は「犬狼伝説」の一話からアレンジしてつくられた話なんですがテーマとしては人間だけど犬のようにしか生きられない奴もいる。犬であり狼のような凶暴性をもった者は反政府組織を狩りたて殺すことでしか己の存在意義を証明できない。故に組織を害するものがあるなら群れから己が犠牲になってもそれを防ぐ。
というお話です。で、その骨子に女性との恋愛やどんな獰猛性を内に秘め人をゴミクズのように撃ち殺す者達でも人間性はあるのではないかなどの要素をトッピング(ヒロインである赤ずきんを主役である狼は愛せるのかという要素)したのがアニメ映画「人狼」になるわけです。
そこで話の中心である狼と人間の問題への解釈がアニメと今回の実写だと180度違うんですね。
ぶっちゃけるとヒロインは敵対組織のスパイで「特機隊」を破滅させるための爆弾だったのだけれども主役も主役で対諜報部隊である「人狼」の一員でそのたくらみは既に露見していた。そして陰でそのことを指示していた元同期の友人を始末し作戦の〆としてヒロインを殺せと主役は指示される訳です。
アニメのほうは狼としてしか生きられない人間はどれだけ人を愛おしいと思っても狼は狼でしかなく赤ずきんは狼に食われるしかないという悲劇で終わります。(このシーンのどうしておばあさんの口はそんなに大きいの? の赤ずきんのセリフを連呼する下りは名シーンです)そこでヒロインを助けられるなら狼の群れになんて主役はいないよって無情さ漂うシーンです。
が、韓国版はいくら狼、狼いったって人間は人間じゃん。愛をとるよ愛をとなりヒロイン助けます。ここでアニメ版や漫画版好きな人はなんでよ?! 「ケルベロスサーガ」でそれやっちゃだめでしょとなる場面です。
ただあくまで韓国でのアレンジ実写ですし、今回の実写版の主役であるイムは特機隊成立時になんの武装もしていない少女を誤射で殺してしまったことをトラウマとして抱えてるので自分が愛おしいと感じてしまったヒロインであるユンフィを殺さないものまぁ…あるのか? ぐらいにはあります。(あと実写版はイムとユンフィの心の交感もマシマシです)
愛よりも組織、組織よりも愛という真逆の方向になってこのアレンジ部分はこだわりある人ひっかかるだろうなぁってなる(実際、私もそんなぁってなりましたしラストバトルのイムと師匠のバトルもエェ…って感じでしたが)作品ですがどことなく荒れ果てた中にも美しいモノはあるんだよっていう映像の見せ方とプロテクトギア無双なども大変すばらしいので「ケルベロスサーガ」知らない方、逆に知らない人の方が素直に面白いといえる作品と思いました。
netflix入ってる方は見て損はないと思います。