What's this meat?(わからねぇがこの肉はうめぇ)
俺の前には肉がある。
ただの肉ではない、1m四方の肉の塊だ。
重厚な赤身にほどよく脂肪がまざり、冗談のように綺麗に切断整形された四角の肉塊は重力に負けず形を保っている
見ているだけで胸が高鳴る。
そう期待が募るのだ。こいつは美味いに違いない
この冗談みたいな肉の塊をどのように料理するか…。俺はこの肉を手に入れた時を思い返していた。
組織の請負で街の処理業が俺の生業だ。
大通りを塞ぐチンピラをどうにかしてほしいとの訴えだった。
仕事は早い方が良い。
すぐにチンピラどもに話をつけることにした。
「30分で消えろ。それで許してやる」
「は? こっちは10人以上だぜ? お前こそ財布を置いて消えろよ」
リーダーの入れ墨男はツバを吐く。
俺はため息をつく。うんざりだ。
「昔、マリアッチのギター作りの爺さんが言っていた。忠告ってのは人生で一度だけ見られる美しい朝日だってな」
「そいつの作るギターはヘタな音しかでねぇんだろな」
そいつはズボンから銃を抜こうとした。
周辺はチリソースぶちまけたように真赤だ。息をしているのは奪ったマチェーテを振り上げてる俺と息も絶え絶えの入れ墨男のみだ。
「ゆ、許してくれ」
「お前は朝日を見られなかったな」
俺は腕を振りおろした。
掃除屋を手配しつつ道を塞ぐトレーラーをどかすかと荷台を確認すると縛られた中年がいた。
チンピラの関係者ではないようだ。拘束をほどいてやるとそいつは大げさに感謝してきた。
仕事のついでだから感謝はいらないと言ったが
「こういう事はきっちりしないと俺がビールが美味く飲めないんだ
礼がしたいがあんたは金とかで喜びそうにないな…」
そういうとそいつは道の端に止まっている冷凍車から巨大なクーラーボックスを持ちだした。ズシリと重い。
「あんたはなんていうか肉に拘りがあるって感じだな。だからこいつを食ってみてくれ。
どんな料理でも多分とんでもない体験できるぜ」
ニヤリと中年は笑った。
【続く】