「プリンセスメゾン」シンプルな絵柄が心にしみる

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シンプルな絵柄だからこそ、話の重さや温かさがじんわりと伝わってくる漫画。
この漫画の主人公の幸は両親が亡くなり、都会で独り懸命に働く女性。生い立ちだけを見ると同情的になってしまうが、独りが故に身に付いたであろう彼女の肝の据わり方、芯の強さに驚く。いつも自分にも周りの人にも真っ直ぐな彼女に、私は尊敬の念を抱く。彼女の言葉を通じて、「人としてどうありたいか」というのを何度も考えさせられた。
話が進むにつれて、幸の人間関係がゆっくり変わっていく。不動産屋の優しく楽しい人たちとの関わりが深くなっていく様子を見るのが楽しい。

自分の家としてのマンションを手に入れたい幸の話が軸となっているが、幸と関わりある人はもちろん、直接関わりのない、色々な事情を抱える女性たちも出てくる。彼女たちは年代も立場も違う。離婚してマンションを売りたい女性、旅するように引っ越しを繰り返す女性、年老いた母を田舎に残し都会で暮らす女性などなど。色々な考えや葛藤があって、その中でも「自分」というものを持っている、持とうしている彼女たちに、一読者の私は、自分を重ねたり、羨ましく思ったりする。
どの話も切なくて、温かくて、時折なんだか涙が出そうになってしまう。
楽しい漫画も、感動的な漫画も大好きだが、こんなにも心が揺さぶられる漫画は初めてだった。