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①死、②ギター修理、③歯医者 | 15分で考える音楽以前のこと(23)
①死
死が迫ってくる!毎日!避ける、右、右、左!毎日、右、右、左!死が毎日迫ってくる!しかし、避ける!
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②ギター修理
高校生の時にナンバーガールに憧れて買ったジャズマスターを修理に出した。
俺のジャズマスターはフレットが削れに削れ、ローポジションはガタガタ。そして2015年にはフロントピックアップが鳴らなくなった。ザグっとしつつ、コード感があってジーンとするような音が好きな自分にとって、フロントピックアップが鳴らないのは致命的だった。
勢いでそのままG&Lのテレキャスターを買って、ジャズマスターは弾かずに放置していたのだった。ナンバーガールの向井秀徳も「ギターは消耗品」と言っていた。
そして、2021年の春。ついにギターを修理に出す決断をした。俺もジャズマスターも、ただ死を待つようにはしたくない。抗う、毎日死を避ける、右、左、左。なんとフレット打ち直しとピックアップ配線その他で56,000円である。洗濯機が買えてしまう。それでも、降りかかる死を避け続けた自分を、一番近くで見ていてくれたこのギターが朽ちていくのだけは嫌だった。
2006年から使ってるギターを初めてリペアに出した フレット打ち直し、ナット交換_オホーツクジビエの鹿肉がとっても美味しかった 今も鹿肉のことばかり考えて生活してる_今年初、部屋に蜘蛛が出た 捕まえて観察してたら足がもげた ごめん_隣の家のツタ、その隣の家に届いてほしいと思っている pic.twitter.com/LL9LzDg2EY
— タニショーゴ(TANI IS GOODNEWS) (@fuloba) May 11, 2021
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③歯医者
久しぶりに歯医者に通うようになった。自宅からすぐのところにある、70年続く歯医者である。どこを治してほしいということはないが、より良い自分になりたかった。本当に久しぶりなので、恐ろしくなって問診票の「怖がりですか?」にグルグルグルとマルをした。
歯医者の施術台に乗っている間は、彼らが未来に運んでくれる。よほど手元が狂わない限り、自分は来院前よりも良い方向に歩んでいる。まな板の上の鯉たる私は、両手を固く組みながら、「IT'S GETTING BETTER ALL THE TIME(だんだん良くなってるよ)」と心で唱えている。
ドクターはとてもいい人で、「タニさん、痛いかもしれません。麻酔…は必要ないと思うんですが、私は…もし私なら要らないんですが…」と確認をとってくれる。震えながらノー、麻酔無しでやってみますと答える。
キィーン、ジュポポポ、キィーン。歯医者の施術なりに痛いのだけれど、身体の痛みは心のつらさよりも遥かにマシである。何より私は施術台に乗り、より良い未来を目指しているのである。身体の痛みは問題ではない。心のつらさほど、人生で鋭い痛みはない。
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死を避ける、右、左、右。毎日、迫ってくるが、抗う。
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