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急に思い出したこと
台湾の初日の夜。
次の日は9時に集まることを約束して友人2人と解散し、僕とヒラノは部屋に入った。
寝床には1時過ぎに入った気がする。
部屋を暗くしてすぐに、ヒラノが僕に話しかける。
「好きな人いる?」
真っ暗な天井を見ながら僕は考え、選択肢が2つ思い浮かんだ。
1つ目は、「いない。」と答えること。
2つ目は、「いるよ。」と答えること。
無論、僕は後者を取った。
「誰だれ?」
「んー、当ててみ。」
「〇〇さんでしょ。」
「あー、昔好きだった。あの子可愛いよね。正直、ヒラノも好きだったでしょ?」
「もち。めちゃめちゃ可愛いよね。」
「でも、彼氏いるらしいよ。」
「え、だれ?」
「B組の〇〇」
「え、まじかよ…。結構ショック。で、誰が好きなん。D組?」
こんな風に会話が続いてった。
もちろん、〇〇に入るのは会ったこともない架空の人。
架空の人なので、会話の中でその人物に対する共通認識の解像度を上げるために、すり合わせの時間もある。
旅行中だからできること。
修学旅行の夜ごっこ。
お互いの好きな人を打ち明けあう。幸いなことに、被ってはいなかった。
恋敵ではなかった。安心。
確か最後は、僕の好きな人をヒラノが呼んできて、部屋の中で告白して終わるという感じだった。キュンキュンした。
意味がわからない。録音しておけば良かった。
やっている自分たちだけが楽しい、スペシャルタイム。
次の日の朝、目が覚めるとベルが鳴っていた。3回くらい。
時計を見ると、8:57。
「ヒラノ、やばい!8時57分!」
大遅刻。旅行中に初めての大寝坊。
ドタバタしながら、ドアを開けてすぐに謝罪。
ホームアローンみたいだった。テーマソングは流れてた。絶対に。
これは、喜劇。
バカリズムさん、準備できてます。
オファーお待ちしています。ヒラノとセットで。