保険適用になった今こそ知っておくべき!高度不妊治療であなたが失う17の宝物【13】:仕事そのもの
高度不妊治療であなたが失う宝物。
13番目の宝物は「仕事そのもの」です。
12番目の宝物として「キャリアのステップアップ・転職のチャンス」を挙げましたが、これはあくまで仕事を続けられるという前提があります。
今回はそもそも仕事自体を続けられなくなるという状況があなたにも起こり得ること、そして、そのようなときにどうすべきかを解説していきたいと思います。
不妊治療との両立が難しくて退職する人は一定数、存在します。そのほとんどが高度不妊治療患者でしょう。通院が必要な回数が人工授精とは比較にならないですし、1カ月や2カ月程度なら無理して調整もできるかもしれませんが、年単位に長引くと、調整すること自体にもう疲れてきて、最終的にギブアップということになります。
その気持ちは痛いほどよくわかります。
「子どもを持つ、親になるという目標に向かって走れるのは今だけ」
「年齢的にもチャンスは限られている」
そんな思いとともに、なかなかうまくいかない不妊治療と仕事を天びんにかける――そんな経験は、あなたもあるのではないでしょうか。
苦しいですよね。何度考えても、難しいですよね。
どうしてここまで結果が出ないのだろう。
なんで私だけ。
辞めるしかないのかな。
でも、そんな決断できないよ――
そんな葛藤に日々、つぶされそうになります。
産休・育休を当たり前に取得して、そして復帰してくる後輩たちを見ていると、余計に悲しく、やるせなくなりますよね。
このメンタル状態が長引くと、最悪の場合、仕事も不妊治療も継続できない精神状態になり、両方を失うことになります。
迷っている、葛藤があるうちであれば、まだ手立てはあります。
仕事って本当に大かけがえのないものです。
今まで一歩ずつ築き上げてきたものが積み重なっている、自分にとってとても大切な「居場所」でもあります。
無理してでもなんとか両立できている場合は、さまざまな制度を活用しながら継続させるべきだと思っています。
もちろん、パートナーともしっかり話し合って、協力してもらいながら。
いよいよ「両立は限界」という判断になったとき、
選択肢は2つしかありません。
当たり前ですが、仕事を続けて不妊治療を止めるか、不妊治療を続けて仕事を辞めるかです。
「そんなこと、簡単に決められないから苦しんでいるのでしょ」
そんな声が聞こえてきそうですが。
ここでの本質的な問題は何なのでしょうか。
それは、「今の仕事を辞めるともう働き口はない」とあなたが思ってしまっているところなのです。
怖いですよね。
「そんなことないですよ。大丈夫ですよ。」といいたいですが、年齢を考えても、もしかすると事実かもしれません。
実のところ私も、ここはすごく悩んだところです。
結論を先にお伝えすると、私は、不妊治療を優先させるためにフリーランスという働き方を選びました。
不妊治療に本腰を入れるために、優先順位を先にはっきりさせました。もちろん、夫ともとことん話し合いました。
フリーランスだと、時間的制約がほとんどないので、突発的な通院にも対応できますし、「急な調整」が必要となるストレスはありません。
もっとも私は会社員しかやったことがなく、しかも何の専門もない営業職でした。大学も文系出身で、資格も運転免許ぐらい。
そんな私がフリーランスという働き方にチャレンジするのは人生をかけた大チャレンジでした。怖かったです。経験もコネもまったくない状態から、フリーランス翻訳者としてやっていく決断をしました。
前職はとあるメーカーで会社員をしていたので、現在の仕事である翻訳の業界に関わること自体もまったくの初めてでした。
私はたまたま翻訳者という職業を選びましたが、この部分は人によって違ってくると思います。そのため、この部分はあまり重要ではなく、私がお伝えしたいことは、
「今の働き方で両立ができないことを嘆くのではなく、両立ができる働き方にスイッチするきっかけと捉える」
ということです。
勇気のいることですが、視点を変えて捉えると新しい道が開けます。
今の会社で、ずっと続けてきたことをこの先もずっと続けられれば、それにこしたことはありません。しかし、それが無理な状況になってきている今、何かを変える必要があるのです。
100点が無理であれば、70点、60点だってよいじゃないですか。
私は今でも「フリーランスという働き方は自分には合わない」と思っています。時間的制約がなく、不妊治療と両立するという観点で見れば非常に都合のよい働き方ですが、会社員生活が長かったので、同僚との何気ない会話や、人と接しながら外の世界で仕事をするということの方が自分には合っているとわかっています。
でも、高度不妊治療を続けていくうえで1カ月でも早く結果を出したかった――。このひとことに尽きます。
両立が限界に達したとき、仕事を辞めてしばらくゆっくりするというのも選択肢だと思います。しかし、私の場合はそれだと余計にうまくいかないと思っていました。
何かやらないと不妊治療のことばかり考えてしまう性格なので、不妊治療とは関係ない方面で「必死に打ち込める何か」が必要だとわかっていました。
……なんていうと聞こえはよいですが、もう1つ大きな理由があります。
お金を稼ぐ必要がある、ということです。
高度不妊治療は1回で50~60万円しますからね。これも現実です。
会社員のときの方が収入レベルは断然高いですが、それでも「ゼロになる」よりましというものです。
また、そのときは先のことなんて考える余裕はなかったですが、もしいつか不妊治療で結果が出たときに子育てというものが待っているので(……と前向きに考えるきっかけにしていました)、その場合でもフリーランスという働き方にはメリットがあると感じていました。
今考えると、フリーランスという新しい道で仕事ができていることは私にとって奇跡ですが、「高度不妊治療との両立」という、やむを得ない、ある意味で強制的な環境がなければ実現しなかったでしょう。
チャレンジすることすらしなかったと断言できます。
以上をまとめると、不妊治療と仕事との両立が難しくなった場合、「仕事を辞めるか辞めないか」という観点ではなく、「今とは違う働き方にスイッチするきっかけ」という観点で、ゼロベースで考えることが必要になります。
積み上げてきたものが失われる――誰しもこの恐怖は耐え難いものです。
だからこそ、ただ失うだけでなく、新しい何かを自分でつかむきかっけにしていかなければなりません。
ぜひ一度、時間をとって考えてみてください。
次回も、「あなたが今まで築き上げてきたもの」に高度不妊治療が及ぼす影響についてお話させていただこうと思います。
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