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保険適用になった今こそ知っておくべき!高度不妊治療であなたが失う17の宝物【4】自分への投資

ここからは、実際の不妊治療経験を通じて感じた、よりリアルなお話をさせていただきます。

高度不妊治療であなたが失う宝物、わかりやすいものとして「時間」「体調」「お金」について解説をさせていただきました。

4つ目の宝物は「自分への投資」です。

「自分への投資」には2種類のものがある


「自分への投資」には、物理的投資、知的投資の2つがあります。

物理的投資とは、服や靴、アクセサリーなど女性であれば定期的に(ある意味では意識せず当たり前に)購入するものです。
知的投資とは、資格勉強のための教材や学費など、スキルアップのための費用です。

では、なぜこの「自分への投資」というものを失ってしまうのでしょうか。

答えは簡単です。
高度不妊治療にステップアップすると、高額な治療費が毎月発生することで、このような「今まではそれほど躊躇することがなかったもの」にまわせるお金がぐっと減るからです。

そして、もうひとつ大きな理由があります。

仮にお金があったとしても「今は不妊治療優先だから、我慢しなくてはいけない」という、そのような心理状態になってくるのです。

2万円のコートを見て「ああ、自己注射1本分だな」とか、
25万円の語学学習コースを見て「この金額があれば採卵1回できるな」とか、

なんでも不妊治療に置き換えて計算するという変な思考回路ができてしまい、だったら少し節約して今は不妊治療にお金というリソースを集中させようという心理になってしまうのです。

この考えは、確かに正しいです。
経済的な負担は大きいですし、この先いつまで続くかわからないという不安も尽きません。

しかし、あなたが同じような状況に置かれた場合、この「我慢」を無理に継続させることはおすすめしません。

なぜだと思いますか?

意外かもしれませんが、逆に追い詰められてしまうからです。

我慢せずにあえて継続させる理由


高度不妊治療をしていると、さまざまな局面で「余裕」というものがなくなってきます。
当然ですよね。高額な費用、思うようにいかない結果……。経済的にも、時間的にも、精神的にも、徐々に追い詰められて疲弊してきます

そして、自分への投資が「ゼロ」になると、人間やはり寂しく感じるものです。日々のモチベーションも下がりますし、人生における希望みたいなものがサーッとなくなっていくような気がして、なんともいえない寂しさを感じるようになります。

最初は「あれができない、これもできない」というストレスを感じていますが、その状態が続くと今度は不思議と欲がなくなっていき、「あれが欲しいな、これがしたいな」と望む気持ちすらどこかに忘れていってしまうのです。

そして、気がつけば自分の人生が不妊治療一色になっている……。
なんだか不妊治療のためだけに生きているみたいな自分がそこにいる――。

そう感じた日、底しれぬ虚しさを感じたことを憶えています。
これってかなり危険信号です。精神的にポキッとくる一歩手前のサインです。

かといって、経済的な面でも今まで通り好き勝手できるわけではありません。思い切り買い物してストレス発散!というのも忍びない……。

では、どうすればよいのでしょうか?

「自分への投資」を1つだけ、継続させることをおすすめします。
そしてそれは「知的投資」であることです。

私はそうすることで、ある意味で大きく救われました。ぜひ、あなたにもそうしていただきたいです。これは、高度不妊治療に対する期待度や努力量が大きい人ほど有効な手段といえます。

この策は、治療の結果と患者の努力量は直結しないという「非情さ」とも大きく関係しています。

不妊治療継続に大きな役割を果たす~実証済み~


私の経験をお話しします。

実は、不妊治療と並行してずっと行ってきた「自分への投資」が1つだけありました。私にとってそれは、「未経験からフリーランス翻訳者になるための勉強」でした。

上記の通り、物理的投資ではなく知的投資ですね。

人によってこの部分が何になるかは異なりますので、そこに至った理由などは割愛させていただきます。なぜ私がこれをやっていたかは、ここでは重要なことではありませんから。

参考に記載すると、翻訳専門の学習(テキストや資料を活用)、フリーランスとしての知識の学習(税金など)、翻訳関連の資格取得、外国語だけではなく日本語の学習、取引先の開拓(採用試験のようなものがある)などです。

ゴール(期限・到達目標)を最初に決めて、段階を踏んで、朝から晩まで勉強していました。それこそ受験生のように……。

※参考に、現在はフリーランス翻訳者として無事にデビューして継続してお仕事をいただけるようになっています。ありがたいですね。

私の場合は、この勉強と同時並行で不妊治療を継続していました。

フリーランスであればいつ入るかわからない診察に対しても柔軟に対応できますよね。もっというと、高度不妊治療を滞りなく進めるためにフリーランスという道を選んだという方が正解かもしれません。

この頃、高度不妊治療にステップアップした後もこれほどまでに時間がかかってしまうなんて想像もしていませんでしたが(不妊治療トータルで約4年、顕微授精期間は約2年におよびました)、それは致し方ありません。

不本意ながら長くなってしまった不妊治療、それはそれは辛い日々でした。が、翻訳者になる勉強――つまり自分への投資を一切していなかったら、もっと早く心が折れて、もっと早く治療を諦めていたと断言できます。

この知的投資は、非常に大変であり困難な道ではありましたが、不妊治療患者である私にとってすごくよいエッセンスになってくれました。

なぜでしょうか?

不妊治療患者である私にとってすごくよいエッセンスになってくれた理由は2あります。

1つめの理由は、それが「成果が連動するもの」であったからです。

突然ですが、私は高度不妊治療って超高額なくじ引きみたいなものだと思っています。
あなたはそう感じたことはありませんか?

移植できる卵があるかどうかは採るまでわからない。

ちゃんと分割して育つかどうかは培養してみないとわからない。

当然、収穫ゼロもある。

移植しても着床するかはわからない。

本当に、蓋を開けてみるまでわからない。

超高額なくじ引きをくり返すようなもので、1回で成功する人もいれば、2桁やって成功しない人もいます。

もっと厳しいことをいうと、そもそも「当たり」が入っているくじ引きでない場合もあります。要は、どれだけ回数を重ねても、汗をかいても、リソースを割いても、自分がそもそも妊娠できる体ではないというのは、残念ながら今の医学ではわからないという事実――。

高度不妊治療までいくと、自分の頑張り(熱量、思い、かけた時間、お金)に関わらず、結果が出るか否かをこの手で変えることはできません。

そして、「今回はだめでした」という結果を聞いたら、また来月、ゼロからですよね。その場合、前回あれだけ進んでいたから次は少し進んだところから、というものも一切ありません。毎回、ゼロからもう一度やります。

高度不妊治療の世界では、頑張りは成果とリンクしないのです。ここが不妊治療の非情なところなのです。

先に述べた「自分への投資」の中でも「知的投資」は、実はこれと真逆なのです。

自分で結果を変えることができるからです。

やっていることが成果につながる――不妊治療を始めたからこそ実感。そんなの、奇跡じゃないですか?

成果につながるのが早い・遅いはありますが、積み上げてきたこと、試行錯誤したことはその分、小さな成果になりますし、それをもとに小刻みでステージを上げることだってできます。

私は勉強を進めながら、「自分の努力で結果を変えることができる世界なんて、なんてありがたいのだ……」としみじみ感じていました。

また、その分、ちゃんと返ってくるのだからしっかり頑張ろう!頑張らない理由なんてない!と、その「まっとうな世界」に感謝しながら進めることができました。

自分で結果をほんの少しでも変えられるって、本当に素晴らしいことですよ!

そういうもの手の中に持っておくということは、出口の見えない闇の中を走る不妊治療患者にとってとっても大事だとということをお伝えしたいです。

この知的投資が、不妊治療患者である私にとってすごくよいエッセンスになってくれた理由はもう1つあります。

2つめの理由は、結果的に不妊治療が「一番」にならなかったから、そうしなかったから、です

もちろん、夫婦で目指しているゴールですし、かかっているお金も桁違い。年齢もあり、色々な意味で後がない。その瞬間の私の人生、いや、私たち夫婦の人生にとって最も大切なものです。文字通り、優先順位は断トツの1番。

だからこそ、です。

だからこそ、そこに支配されないように、自分の中では「1番にもっていかない」と言い聞かせていました。

その特性をわかっていたから――です。
そう、自分の努力量とは関係のない部分で非情な結果が続くという特性に、早くから気がついていたからです。

これ、大多数の人にとっても心が折れる原因なのです。

不妊治療に頭と心を支配されない工夫


私の心は折れずに済んだかのように書いていますが……

そりゃ実際のところ、私だって心が折れていましたよ。何度も泣きましたよ。それも綺麗な涙ではないですよ。鬼畜のように叫んだことだってあります。自分で自分に驚くほど、こんな奇声が出るのだと恐ろしくなったほど、大声で叫んだことだってありましたよ。

だからこそ、自分の中で「1番にしてはいけない」「支配されてはいけない」という意識を常に持っていました。そう言い聞かせていました。

日々の生活の中で、「時間的優先順位・経済的優先順位としての1番はあげる。でも、頭・心の中の1番はあえてあけわたさない」という意識ですね。

これ、本当に大事です。

しかしながら、どれだけ意識していても、支配されていくのが人間です。高度不妊治療って、やはりそれだけ大きなことなのですから。

だからこそ、具体的な目標がしっかりかかげられる「知的投資」を自分で用意することが大事です。

資格の勉強でも、仕事に関する目標でもよいのです。なにか1つ、長期的に汗をかいて走れるものを用意して、不妊治療と並行させてください。

もちろん、取り組むときは真剣に。没頭することで忘れられることもありますし、不妊治療から引き離してくれる役割も果たします。なにより、後からちゃんと「リターン」があります。一石二鳥ですね。

以上とまとめると、高度不妊治療を始めるにあたり何も意識しなければあっという間に消えてなくなってしまう宝物「自分への投資」を維持するために、

あえて1つだけ、自分への投資を継続させる」
「物理的投資ではなく知的投資にして、没頭する」

の2点を意識されると、不妊治療との並行においてもよい影響がありますし、後にリターンもあります。

ぜひ実践してみてくださいね。

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