保険適用になった今こそ知っておくべき!高度不妊治療であなたが失う17の宝物【エピローグ】不妊治療はおとぎ話ではありません
「きっと何かの意味がある」のか?――不妊治療はおとぎ話ではありません
「不妊治療って辛い」
本書を手に取って読んでいるあなたは、まさにこの気持ちに支配されているのかもしれません。
とても残酷ですが、きっともっと辛くなります。
それでも、その辛さの原因を客観的にみつめて、できる限りの準備を行い、ひとつでも対処していくことができれば、心の中で「自分」を保つことができます。
そのためには経験者の視点から語られた情報がもっともっと必要で、きれいごとは一旦置いておいた本音のアドバイスが必要になります。
でも、やっぱり辛いのです。経験者だって人間です。自分の中にある傷をえぐり出されたくないのです。
不妊治療について語られた書籍はあっても、このようなリアルな経験、本音を語ったものを私は見たことがありません。その理由も、経験者だからこそ理解できます。
一方で、私が高度不妊治療を始める前に、こんな情報があったら全然違っていただろうなと感じました。
顕微授精が何度もうまくいかず精神的に疲弊してしまう前に、経験者の視点で発信されたリアルな情報があれば、精神をあれだけ、本当にあれだけ病んでしまうことはなかったのにと、本音として思います。
高度不妊治療は素晴らしい技術です。しかし、経過によっては人間をどん底まで追い込みます。もちろん、医療なので自分の決断によっていつでも止められます。しかし、その判断さえも簡単なものではありません。
何がそんなに辛いのか?私はいったい何に追い詰められているのか?
頭の中が混乱して、それすらもわからなくなります。
辛い。とにかく辛い――そのひと言につきます。
それだけ大変な世界なのです。
「きっと何かの意味がある」とか、
「人と違う経験は糧になる」とか、
「神様は乗り越えられる人にしか試練を与えない」とか。
色々言われましたけど…… わかります。わかりますよ、その意味も。
でもね、不妊治療はおとぎ話ではありません。
結局のところ、当事者以外は本当の意味で理解できませんし、
実施年数や背景は十人十色という不妊治療においては、やっぱり自分の理解者は自分たった一人しかいないのです。
だからこそ、「自分で」対処法を準備しておく必要があるのです。
あなたがやるべきことは、まわりの人が理解してくれることを期待したり、理解してくれないことに腹を立てたりするのではなく、
自分の辛さが少しでも軽減する、自分が少しでもしんどくなくなるという状態を自分自身に用意してあげることです。
また、しっかりと準備をするのは大前提としてですが、自分の辛さが少しでも軽減するという観点では、苦肉の策ではありますがSNSを有効活用しましょう。
この対処法には賛否両論あると思いますが、先に述べたように、まずは自分に「辛さが少しでも軽減した状態」をつくってあげることが優先です。
Twitterなどで「不特定多数」に向けて愚痴ってください。アカウントは別に取得して、私的関係にない人たちだけで構成された層へ向けて思い切り泣き言を放ってください。
情けないことや、腹黒いこと、消化しきれないことを文字にしてしっかり表現してください。少しだけ、ほんの少しだけ自分を客観視できることで、心もすこーしだけ楽になります。
顔が見えない相手にまで「いい格好」をする必要はありません。
現実の世界では想像を絶する高さの壁を泣きながら乗り越えてきているあなたですから。
どうしても発散しきれないのであれば、私のアカウントに直接、愚痴ってくださっても構いません。少しでも、ほんの少しでもよいのであなたの心が楽になりますように。
高度不妊治療が保険適用になり、不妊治療の世界も今までとは違った形になってきます。
本来であれば、効果的な治療法が新たに確率し、成功率が上がったうえで保険適用となるのがベストですが、まず先に「経済的ハードルを下げること」のみに着手したということになります。
それももちろんのことありがたいですし、実際に助かりますよね。高度不妊治療にトライする人は激増すると思います。実際に私のまわりでも、保険適用になるのを機に高度不妊治療にステップアップする知人が4人います。
ただ、治療フローや成功率にまったく変化がないまま患者数だけが増えるとなると、経済的負担は軽減したものの、身体的負担のカバー策やメンタル面でのフォローが置き去りになっていくのが目に見えています。
治療の成功率が根本的に変わらずに実施人数だけが増えるということはつまり、大きな沼にはまって自覚なきうちにもがきくるしんでしまう人が増えるということです。
この状況は大きな課題と言えます。
経済面の負担を見越して手立てを講じるように、メンタル面での負担を軽減するためにできる準備はあります。ぜひ本書の具体的対策をお役立てください。
あなたが少しでもあなたらしく過ごせる日常が、一日でも多くなることを心から願っています。
最後まで読んでいただきましたことに、心より感謝申し上げます。
2022年 磯山ナツ
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