ユーモら

かわいい!×エシカる?「障がい者アート」は存在しない

瀬戸内、直島銭湯でよく知られているアーティスト大竹伸朗が、角が欠けている15年前にひろったプラスチック定規を箱から取り出し「世界に一つしかない個性」と表現した。飛行機や船の一部を含め大小、膨大な拾得物ひとつ一つに愛着をもち、それにふさわしい場所にはめ込んで作品をつくるアーティストだ。

大竹伸朗に従えば、私たちがもっている個性は、不完全さの中に宿る。

「障がい者アート」というとき、一部機能が停止していても、生きている限られた出口を通して、内部から押し出されてくる生命の証明であると、感じてきた。アーティストが作品をつくるとき、それに一番ふさわしい手法を選択して、創造する内圧を強い力で噴出させるのと、同じだ。「障がい者アート」は存在しない。そのアート作品が、障がいをもった人、発揮する能力が特異な人によってつくられた、というだけだ。

渋谷ヒカリエ2階入り口すぐに、期間限定(5月27日まで)で開店しているHUMORA(ユーモラ)は、かわいい!×エシカる?、がキーワード。主催するエイブルアート・カンパニーは、障害のある人たちのアート作品を、デザインとして使える仕組みをつくることで、社会とつなぐ会社だ。小さいカードに『「人間のおもしろみ」をテーマに個性豊かな商品を集めたセレクトショップ。商品にはすべて障害がある人が関わっています。』とのフレーズが印刷されていた。

途切れることなく、ここに足をとめて商品を手にとるひとたち。障害をもった人たちのデザインかどうかは、後からついてくる。それがいいと思った。

障がいをもつ人のアート作品を社会につなげるとき、別のだれかが、縫製したり、一部のデザインだけ切りとって、どこかに使ったりするとパワーが囲われてしまうのが課題だ。たとえば「私」が白いTシャツを着て、それに描いてもらい、そのまま印刷するなど、ダイレクトにつなげる方法もある。時間、空間、場所も材料も枠にはならない魅力を、生のまま発信すると、リスクもあるが、もっとブレイクするかもしれない。(2015年5月21日)


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