先生の背中
75歳になる大学の恩師が、一度きりしか会っていない大々先生から始まり、大先生、中先生、同輩から教えを受けた想い出をたどりつつ「私の都市計画観」を語るのを聞きながら、率直に感じたことがある。直接教えていただいたことより、その方のふるまい、声のトーン、いさぎよさ、周りの人への配慮、家族へ注がれる視線、失敗をサラッと流して新しい風を入れる作法、鬱積の察知、想い、そしてどのように生きたかこそが、まわりにいる者たちの生きるエネルギーに、にじみ出すように影響を与えている。
自らの手で道を切り拓いてきた、と感じているだろう。凹んだ時にしか人に頼って来なかった、と思っているかもしれない。しかしその時々で尊敬を感じた人の背中から、好感を感じた人の言葉から、私たちは知らず知らず計り知れない支援を受けている。