舘野泰一が語るワークショップのキモ
舘野泰一立教大学経営学部助教はワークショップの素材を探すとき、「こういうところにズレがある。」「いつもここで悩んでいるんだなぁ」「こういう人になって欲しい」「見つけた素材と似た体験がないか」・・・という目でみているそうだ。ワークショックに「ズレを仕込む」ことで、他の人が突っ込んでくれ、自らの常識や思い込みの解釈を広げてくれる。他の人の意識や感じ方を受け取ることで、私らしさに近づいていける、そんな体験を誘導し、言葉として腑に落とすのがワークショップ(WS)である。
「ズレを仕込む」とはなんだろう。WSの素材が「定年後の生活」とする。私の「今」を語った後、グループのだれかに「あなたの定年後」を妄想してもらう。そうすると「私の描く定年後」と「他人の妄想」とのズレによって、思い込みを広げる場ができる。素材を「大学生のお金の使い方」とする。WSに『ブランド品を買って何を得たんだろう?』という問いかけを仕込むと「ブランド品」と「あなたが得るもの」との間にズレが生じる。みんなで突っ込んでいくと、新しい気づきが生まれてくる。
舘野先生の「社会人カード」は面白かった。あらかじめ社会人に、会社での今の自分を率直に語ってもらい、「不夜城さん」「割り切りさん」「わたしなんてさん」「我が社さん」「資格さん」「忍さん」など11人のモデル(社会人カード)をつくる。それをWSのコアにして、就活を終え内定をとった学生に「一緒に働きたい人」「一緒に働きたくない人」を選んでもらうWS。社会人になる直前に「私の社会人像」を考えてもらいたい、と発想したWSだ。
実際にやってみたが、グループ内で正反対の人がいて、つまりズレができて盛り上がった。「働きたい人」について「私なんて」さんを選んだ若い人は「私がいることで相手が活きる人」と働きたいといった。私は「働きたくない人」にいれた。私は逆に「割り切り」さんとだったら、うまくいきそうだと思った。「今」までの体験の違いや「今」置かれているポジションで「だれと働きたいか」が変わる。そしてどの社会人カードも、グループのみんなの感じ方も対等である、という貴重な体験だった。