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アウトサイド・ジャパンatギャラリーAaMo in 東京ドーム

人はなぜ表現するのか。
キュレーター櫛展正(くしの のぶまさ)は、自らの足でアウトサイダー・アートとその制作者に会いに行き「人はなぜ表現するのか」を探求し続け、この展覧会では11の入口を提示する(2019/05/19まで)。アウトサイダー・アートを「既存の美術や文化継承の系譜とは無縁の文脈によって制作された我流の芸術作品」と定義し、「あなたの中に眠るアウトサイドな表現」を挑発するかのように、アートの枠組みを壊していく。

11の「なぜ表現するのか」を紹介したい。【楽園】そこでは王様になれる一人だけの楽園をつくりたい、との思いから生まれた作品たち。自らの生活のすべて・・違反切符やコンビニのレシートまで・・をスクラップして記録しいく遠藤文裕に共鳴。【老人芸術】私の中で表現が目覚める日がきっとくる、と感じた展示。72歳のときに目覚めた西本喜美子の写真に温かい衝撃を受けた。【フェイク】「『ほんもの』に近付こうとする並々ならぬ人間の複雑な欲求と価値観が豊かな創造性を育み・・」と解説されている。自己を本物に近づけようとするとき、類似と差異の間で、自己のアイデンティティをつかみ取れるのではと感じる。「#おじコス」で著名人に扮するスギノイチオがいい。【18禁/エロス】性は、生きるエネルギーでもある。抑制して表現すれば陳腐となり、振り切った表現には可笑しみがある。【描く】太久磨(たくま)の描くアロエの鉢は彼の自画像。ゴツゴツした5本ほどの茎のそれぞれに肉厚の縮こまった葉っぱが10枚ほどついている。夕焼けや晴れた海を背景として、その時の自分を切り取っている。「私はいったい何者なのか?」という自問自答が聞こえてくる。ガタロは広島基町アパートの廊下階段の清掃人。清掃が終わると、汚れて丸まったモップをスケッチする。一面に貼られたスケッチから、人生をいつくしむ気持ちが伝わってくる。

【異形】11の表現の入口の中でもっとも凄さを感じる。まるで「千と千尋の神隠し」の世界と同通したかのように仮面をつくり続けるストレンジナイト。自分が殺生した昆虫の供養のため、2万匹以上の昆虫で千手観音を建立した稲村米治。共感はできなかったが極めて印象的。【過剰装飾】家の外壁、窓、室内の壁天井、家電製品まで、家全体を自ら描いた絵で埋め尽くす小林伸一。何等かの外圧に対抗するエネルギーと、何かを突破してしまった結果としての過剰を浴びてしまう展示。【家族】家族がいるから表現したくなり、そして家族がいるから表現が成り立つホンワカした展示。【ヘアサロン】常に立体的創作に向き合っている職業。アウトサイダー・アートの職業として目立つらしい。【憧れ】けうけげんの架空芸人ワールド。プロは決してしない1分の1の精密さで膨大な妄想ワールドが半端ない。【廃材】捨てられたものを拾って活かすことに、きっと、生きていく糧を見つけられる。

いつか、きっと、死に至る直前かもしれないが、私の中で表現が目覚める日が来る。そう信じることができる展示だった。



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