企画合唱の作り方
企画合唱の定着
Twitter(X)を中心としたSNSの普及・発展により、ネットを介して1本番のために集まる所謂「企画合唱」はすっかり定着したように思う。
その前に流行していたmixiのように招待制であったり、Facebookのようにリアル世界での友人・知人関係がベースとなっていたりもせず、ただひたすらオープンなSNSであるTwitterは、知らない人同士が繋がるツールとして非常に有効で、かつては「顔も声も知らないような人と会うなんて」ととらえられていた「オフ会」のハードルもTwitterの流行によってぐんと下がったと感じる。
私がTwitterを使い始めた2008年からしばらくは、ハッシュタグ(#)の機能こそあったものの、まだ英数字しか使えず、利用人口も少なかったため、日本人で横のつながりは生まれづらかった。「合唱」で検索(たしか公式にはその機能がなく、外部サイトで検索していたと思う)しても数件しか引っかからないような状況。
そんな中で、貴重な「合唱×Twitter」利用者は自然と寄り集まり一部で「合唱クラスター」を形成。2010年には花見オフを実施し、その後たくさんの曲(2023年10月時点で69曲!)を委嘱することになる田中達也さんと対面での「初めまして」をしたのも良い思い出だ。
私の企画合唱履歴
さて、企画合唱に話を戻そう。
私自身の経験を書くと、最初に企画した2009年の「雨森文也と歌う男声合唱の夕べ」を除けば、関わった企画合唱のほぼすべてで指揮をしているが、同時に運営にも主体的に関わってきている。
【運営のみ】
・雨森文也と歌う男声合唱の夕べ(2009)
【運営&指揮】
・合唱団わをん(1期:2012~13期:2020)
・白浜坂高校合唱同好会(1期:2013~16期:2023)
・合唱団とわ(1期:2014~4期:2016)
・Lux Voluntatis(1期:2016~13期:2024)
・Happy Birthday to You - for Chorus(2019)
【指揮のみ】
・Coro Lilium(2015)
・《昼の月》レコーディング(2018)
・こいうた企画(2019)
いずれの企画もわりと目的がはっきりしているのが特徴。というかそうでないと企画合唱は成り立ちにくいとも思う。
以下にそれぞれの企画の主旨・特徴を書いておく。
【運営のみ】
運営をした雨森文也と歌う男声合唱の夕べ(雨森男声)のコンセプトはシンプルに、雨森先生の指揮で男声合唱を歌いたい、という思いからスタートし、組曲4ステージの演奏会をまるまる一本やる、という今から思うと企画合唱としてはとてもヘビーなもの。副題に~日本男声合唱黎明期を振り返って~と付けた通り、『月光とピエロ』『枯れ木と太陽』など往年の名作を集めて実施した。その後の2011年に始まり今も続く公募型合唱団「20世紀の名曲を歌う会」の一つのきっかけであったのかもしれない、と思っている。
【運営&指揮】
運営と指揮とをしている団体もきっかけは曲だったり作品だったり。
一番古くに活動を始めた合唱団わをんは、主としてはみば、あひる、やがの3人が主謀者として企画を立てているが、立ち上げのきっかけは当時やがのTwitterプロフィールの所在地に「ふちゅうのすみっこ」と書かれていたこと。松下耕作曲「はじめに……」の一節「宇宙のすみっこ」をもじったものであったため、この曲をやろうよ、と企画をし、「合唱祭の演奏時間のあまりに当てはまる、2曲並べた時にちょうど良い、ポップな曲を書いて」とあひるさんにお願いして出来上がったのが名曲「レモンイエローの夏」。それがあまりにいい曲だったからすぐに、これを曲集にしようよ、と持ち掛け、しばらく曲集を完成させることがわをんの目的となった。
団名は三好がいつかつけたいと温めていたもので、「和音」と「五十音のおわり=到達点」とのダブルミーニング。
期数を一番重ねている白浜坂高校合唱同好会(白高)は、合唱をテーマにしたアニメ「TARI TARI」に合唱監修としてかかわったことをきっかけに、作品を見たアニメファンの人に、「合唱は見るのもいいけど、歌うともっと楽しいよ」を味わってほしくて企画した。
第1期は同アニメの監督、制作会社の社長、音楽制作担当者とアニメ関係者も含めて167名と超大所帯での演奏となった。
その後も「TARI TARI」の制作会社であるP.A.WORKS制作のアニメ、もしくは音楽をテーマにしたアニメの楽曲を演奏することを目的に活動を重ね、他団体を巻き込んだ合唱祭や音楽祭、単独演奏会、さらには「TARI TARI」の5周年イベントを主催するなど、企画合唱としてはかなり大きな活動をしてきたが、基本的にはアニメのファン活動の一環だ。
団名も「TARI TARI」の主人公たちが通う学校名を、制作委員会の許諾を得て使用している。
合唱団とわは、上田真樹作曲の『終わりのない歌』を歌うための企画団体。団名はメンバーの発案で「終わりのない」=永遠(とわ)と、フランス語で「あなた」を意味するtoi(トワ)を掛けたもの。
全曲を演奏したのちは、上田真樹「つい、きのうまで」や北山陽一「そばにいてください」など、委嘱により新曲を生み出したが、当初の目的の『終わりのない歌』の全曲演奏を終えたこともあり、現在は活動していない。
Lux Voluntatis(LV)は作曲家である森山至貴とその音楽を楽しむことをコンセプトに活動している団体。森山さんの出世作(朝日作曲賞受賞作品)『さよなら、ロレンス』の大人による全曲演奏がまだ為されていないのでは、というところに端を発し、作曲者本人のピアノにより組曲全曲演奏をしたのが第1期。その後も森山作品を演奏することを中心に活動。コロナ禍に於いては、Web会議システムのZoomでの演奏を前提に、遅延が生じることを許容し、さらにプロフィール画像や背景画像も活用して演奏する「うたのなか」を初演。2023年3月には森山さんのツイートをきっかけに、「合唱×連弾」の演奏会をジョイントの形で実施し、森山さん初となる連弾による合唱組曲『いつか必ず光は』を初演した。
団名は『さよなら、ロレンス』の詩の一節にある「意志の光」をラテン語訳したもの。
Happy Birthday to You - for Chorus(はみ誕)はちょっと特殊事例。企画主旨としては”若手作曲家のアレンジによる「Happy Birthday to You」をレコーディングする”、というものだが、レコーディング当日は私の40歳の誕生日。友人たちにお願いして編曲を書き下ろしてもらい、仲間に集まって歌ってもらうパーティーを、企画合唱として肉付けしたもの。思い付きの発端は、節目を祝ってもらうこともなさそうだから、自分で企画しよう、というものではあるが、同時に予てから「合唱団で誕生日祝う時って、たいてい最後の一節だけ即興でハモるけど、あとはユニゾンだよな」って思っていたことがある。合唱団でちゃんと音楽的に工夫のあるHappy Birthday to Youを歌えるようにしたい、という思いから、企画を実施し、PanaMusica出版に掛け合って、楽譜も出版していただいた。おかげさまで多くの団で手に取っていただいているようだ。
【指揮のみ】
指揮のみで関わった3企画は企画名がまんま曲名。つまり、「この曲をやりたい」という企画の主謀者が、三好に指揮を、と声をかけてくれたもので、集まった歌い手たちも基本的には作品や作曲者のファンだ。
企画合唱の魅力
企画合唱は目的がはっきりしていることが一つの要件としてある、と上で述べた。
裏を返せば、同じ目的の人が集まる、その多くの場合、その演奏曲が好きな人たちが集まる、のが企画合唱の魅力であり、強みであるともいえる。
また、スケジュールや曲目など、自分と合わないときには参加せず、またちょうどいいものが企画されればその時に参加すればいい、というのは、参加者側にはメリットとなると思う。
常設団に所属していると、団員ならすべての本番に乗るのが当たり前、ということも少なくないが、もっと気軽に自分でオンステオフステが調整できるし、練習も「乗るステージのものと乗らないステージのものが混在しているから、結局練習には行かないと・・・」という事態にはまずならない。
企画合唱の作り方
さて、いよいよ企画合唱を作ってみよう。
企画主旨を明瞭に
これまで書いてきたように、まず明確にしておきたいのが目的である。
・曲目
・指導者&共演者
・募集する歌い手のイメージ
これらがはっきりしているほど、参加者と企画とのミスマッチが少なくなる。
もちろん、企画の主旨によって上記のどれが重要視されるかは変わってくるから、これらのなかに決まった優先順位はない。
わをん、LVは当初は「曲目」が最優先であったが、その後はわをんにはあひるさん(田中達也)がLVには森山さんがいて、指導やアドバイスをしてくれることも大きな要素だったと思う。
白高は曲目も明確だったが、同時に募集する歌い手についても明確にしていた。
全部で12回の練習を設けたが、募集ページで「※本番に乗るためには目安として合唱経験者は3回以上、その他の方は5回以上の出席をお願いします。」を明記。この一文でまったくの合唱初心者でも受け入れることが伝わったためか、本番に乗った167名のうち半分は合唱を初めてやるひとたちであったのは嬉しかった。
本番と練習の設定
コンセプトが明瞭になったら、次に重要なのが本番の設定と練習回数の見積もりだ。
本番の設定はコンセプトと同時並行して考えていく必要があるだろう。
集まって飲み食いしながら歌うだけの「合唱人のクリスマス」などを実施したこともあるが、練習を重ねて客前で歌うのがやはり合唱のひとつの達成感だと思うので、基本的には本番を前提として企画を立てている。
幸い、東京都合唱連盟の事業は、全日本の規程上制約のあるおかあさんコーラスとコンクールを除いて、すべて非加盟でも出演が出来るので、東京都合唱祭や春こん。などを本番として設定することがとても多いが、このあたりは地域ごとの事情によると思う。
本番として設定できる演奏時間の長短は、企画のコンセプトにも大きな影響を与えるので、とても重要な部分だ。
こうして曲目が決まれば、難易度と、想定するメンバーの演奏技術から、必要となる練習回数が見えてくる。
もちろんほぼ全員が毎回練習に出てくる、という部活のように恵まれた状況は社会人合唱では望めないので、それらも勘案して練習回数を見積もろう。プロの指導者や共演者を招く場合は、その人に来てもらう回数と、自分たちで練習しておく回数との配分も重要だ。
練習の曜日設定も重要になってくる。レギュラー団体であればある程度固定した曜日、時間を設定し、それに合う人が参加をするというのが一般的だと思うが、企画合唱は様々な団で活動する人が一時的に集まってくることを前提とするため、曜日を固定してしまうことで参加が難しくなる人も出てくる。そのため、私の企画では基本的に曜日を意識して分散させ、多様な人が参加を検討できるように努めている。
最低出席練習回数の設定
楽譜を見たらすぐに歌えるような人でも、当日のリハにだけ来て本番に乗られたら、音楽のイメージの共有も出来ないし、パートバランスが大きく崩れることもありうる。
どこの誰が参加してくれるかわからない企画合唱では、そうした意識差やイメージの共有度合いの差を避けるために、最低練習回数を設定することがある。
初心者も受け入れる場合であればなおさらその必要性は増してくる。
企画の主催者が、練習に対して、もしくは想定参加者をどのようにイメージしているのかの提示にもつながるし、参加者側も自身がどのくらい練習に参加できれば本番へ乗れるのかを見積もることが出来るので、特に単発(もしくは初めて)で企画する場合は設定、明示しておくといいのではないだろうか。
ただし、「※この回数を確保することが難しい場合は別途お問い合わせください」と、広く受け入れる可能性を提示することは忘れずに。
予算
練習回数が決まれば、予算を立てるのは難しくない。練習会場にかかるおおよその費用を、使用予定の施設の料金から見積もり、回数を乗じる。指導者、共演者への謝礼も同様に単価に招く回数を乗じ、さらに本番謝礼を設定。
あとは本番に掛かる費用として、合唱祭のようなイベントならその参加料を、自主公演なら諸々の費用を計上すれば、支出の項目は完成だ。
収入は、想定する参加人数を見積もり、支出をざっくりと割って参加料を設定する。企画の主体の年代や主旨などにより、学生料金や遠方割引などを設定することもある。
大事なのは、思ったより人が集まらない場合の収支をどう調整するかをあらかじめ想定しておくことだ。
私が指揮と運営の両方をする場合は、(あまりほめられたことではないが)私への指導謝礼で調整をすることが多かった。というかいくつかの企画では「残金が謝礼」という体制を採ってやってきた。
企画の主催者が、不足分を個人で払うことを申し出てきたこともある。その時は個人で負担するには金額が大きかったこともあり、丁重に辞退をしたが、主催者にはそのリスクがあることも承知をして企画を始めてほしい。
逆に想定以上に人が集まって余り過ぎる場合、だが、オンステ代や打ち上げ代で調整することが多い。もちろん返金することもあるが、手間が大きいわりに金額はそれほどでもない場合など、その後に徴収する金額で調整するのが一番スムーズなのだ。
そうそう、継続型の企画団では、練習参加費とオンステ代との2つにわけることが多い。そうすることで、オンステ出来ないけど、練習で音楽を共有したいという想いに応えられるし、それが次の企画への参加にもつながることが多いからだ。
場所取り
実務的でとても重要な役割だ。東京の場合、集まりやすい地域として、山手線の円内が一つの目安となるが、自治体で数えると10以上。自治体ごとに解禁日や、借用ルール(在住・在勤の割合など)が当然違う。企画の想定する大きさによって必要な部屋のサイズも違う。曲によって、ピアノが必須か、キーボードを持ち込めば良いかも変わる。近年は、企画団も含めそれぞれの団体で率先して場所取りをしてくれる、ロケハンさんがいてくれるのでとても助けられているが、初期はこれも自分でおこなっていたので、その苦労は分かるつもりだ。
参加条件の確認
企画合唱は個人情報も扱うし、お金も扱う。また、全く知らない人と一緒に歌える事が魅力でもあり、ちょっぴり怖くもある。
トラブルを避けるために、参加条件を設定することも時によって必要となってくる。
例えば私が企画する場合、高校生以下の参加については、基本的に親御さんの同意を前提としている。練習+本番だと、学生料金でも高校生が払うには高額だし、練習時間も夜コマなら21時を過ぎる。練習に来る前後のことまで実際にはケアできない。
最初に実施した企画合唱である、雨森男声の時には、なんと中学生からの申し込みがあり、親御さんに確認をしたことがある。わをんでも高校生からの申し込みがあり、その時は一度親御さんも練習の様子を見に来たりした。
初めから年齢制限がついている企画もあるし、練習であまり音取りを想定しない場合には、「一人で音を取ってから参加できる人」などの条件が付される場合もある。
どんな人に来てほしいか、どんな人と歌いたいのかを表明することにもつながるので、わりと重要な要素だ。
募集・告知
いよいよ募集開始。かつてはTwiplaというサイトを多用していた。Twitterで参加表明ができるので、この人も参加してる、興味ありってしてる、が可視化されることと、参加表明者にまとめてDMが送れることなどが便利。文字も色やサイズを変えられるので、強調したい点がわかりやすいのも良い点。
ただ、結局、メールアドレスなどを収集する方が確実性が高いのと、パートや出欠予定をアンケートするために初期からGoogleフォームを併用。のちに、Googleフォームをメインで使用する形へと変更していった。
いずれにしても、なるべく1枚のページで、情報が簡潔に示されているのが重要だと思う。
募集告知をTwitterで行う場合は、画像もつけておくと目に留まりやすく効果的。
本番日程、練習日程、曲目、指導・共演者、費用などは必須の情報だと考えている。もちろん主催者が何者なのか、も明らかになっている方が安心度は高い。
ここで気を付けておきたいのが、収集した個人情報の管理だ。平成29年の個人情報保護法改正で、扱う情報が5000人以下の小規模事業者も対象となり、営利非営利等を問わないため、サークルなども対象となった。つまり、1人でも個人情報を預かるなら、適切に管理して、使わなくなったら適切に処分する必要がある。
継続企画で次の企画の連絡に使うために保存、は問題ないだろうが、一度きりの企画で収集した情報は、企画終了後は適切に処分するのが望ましい。
係の設定
企画合唱を一人で動かすのは不可能ではないがとても大変だ。代表、ロケハン、会計は必須となるし、事業申込担当、SNS広報、練習受付、練習録音、本番参加者管理、衣装係、打ち上げ幹事などやることはたくさんある。
まずは同じ目的、企画主旨の賛同者を数人集めて、一緒に進めていくのがいいだろう。初めからあまり人が多くなると、意思決定が遅くなりがちなので、最初は数名で企画を固め、そこから人を巻き込んでいくのが良い流れだと思う。
可能であれば、企画開始以降にさらに参加者から有志を募って、そこからでもできる衣装係(本番衣装の設定)や、打ち上げ幹事などをやってもらうのも、参加者の主体性を引き出すには良い方法だ。
以下に各係について簡単に記しておく。
代表
何事につけ、代表者は必要だ。練習場所を借りるにも住所氏名は必要だし、事業参加するなら代表者(もしくは申込担当者)の情報は必要となる。参加費も振込み等を受け付けるなら、口座は必要となるし、その時に、誰だかわからない個人名の口座に振り込むのは参加者も不安になるだろう。
万が一トラブルが発生したときにも、責任者としての代表者はやはり欠かせない。
ロケハン
所謂場所取り係。上でも述べたが、最初に動く必要があり、練習参加者の利便性も決める重要な役割。縁の下の力持ち。
ロケハンでは基本的に企画(集金)が始まる前に支払が必要となるので、元手になる資金をどうするのか、は事前に決めておく必要があるし、事後にしっかり清算をしよう。
会計
参加費の集金と、各種支払いを担当する。指導者への謝礼も、都度払いであれば毎回用意して渡す必要があるので、ちょっと大変。本番時にまとめて払う約束にしておくと楽になる。
事業申込担当
連盟等が主催するイベントに出るのであれば、申し込みに必要な情報をまとめ、申込み作業をする必要がある。
なお、申込時に必要となるの情報は基本的に以下の通りだ。
・代表者(申込担当者)の住所・氏名等
・指揮者、共演者情報
・出演人数
・曲目および演奏時間
・(選択の余地がある場合)希望日程
申込時には支払いも必要となるので、会計との連携も忘れずに。
SNS広報
最初に書いた通り、企画合唱が定着した一つの要因としてSNSの普及がある。SNSを通じて広く呼び掛けることは重要だ。企画としてアカウントを取る必要は必ずしもないが、中心となって広報する担当者を設定し、繰り返し情報を流し続けていくことは忘れずに実施したい。アカウントを新たに開設する場合は、そのアカウントの知名度は当然ゼロから始まるので、既存のアカウントでその都度広めていくことを併せてやろう。
練習受付
受付も決まった担当者を付けておくとよい。手の空いている人がやる、だと、結局仕事を見つけるのが上手な人に負担が偏ることにもなる。
一方、受付担当者は参加者の顔と名前を一致させやすいし、参加者にとっても最初に会う人になるから、覚えてもらいやすいという得な一面も。
練習録音
これは比較的兼務もしやすい役割ではあるが、練習に初めからいることが必須となるし、練習後に共有する手間もあるので、複数の担当者を置いておきたい。
スマートフォンが普通に扱えれば出来る仕事ではあるので、共有方法をきちんと確立しておけば、多くの人にお願いしやすいタイプの係だ。
本番参加者管理
練習参加者が全員本番に乗るのが理想だが、必ずしもそうはならない。本番オンステ料を別途設定するならなおさらその管理は重要だ。もちろん、参加する事業への人数申請も必要となる。
受付など出欠管理系で統合することももちろん可能。
衣装係
企画合唱に決まった(共通した)衣装があるわけもない。かといって間際に色々用意しろと言われても参加者も困る。そのためにもある程度ゆとりをもって告知をしておきたい。考えるのを忘れてて「みんなきっともってるでしょ」で上下黒になる、みたいなのは避けたいところ。もちろん企画や曲のイメージで積極的に黒を選択するのはなんら問題はない。
打ち上げ幹事
合唱の本番を終えたら、打ち上げはつきものだ。このために練習を重ねていると言っても過言ではない。(もちろん人によるが)
美味しくて、値段が高くなくて、あわよくば歌える、となるとお店の確保は大変だ。合唱祭のようなイベントだと、同時間帯にたくさんの団体が同じような店を探すことになるから、取り合いとなること必至。
また、打ち上げは集金なども必要になってくるので、そのあたりもきちんとできる人を指名したいところ。
残念ながら良い店を知っているタイプの人間は、よく飲むので店を取る担当と、会計担当は別につけておいた方が良いこともしばしばある。
そうそう、二十歳未満がいる場合はその配慮も忘れずに店や飲み方を選ぼう。
練習時に気を付けておきたいこと
出欠記録
出席の記録はいろいろと役に立つことが多い。最低出席回数を設定しているならそのチェックになるし、参加費回収の漏れ防止にも使える。1回きりで企画合唱をやめる場合を除けば、練習への参加状況は次の企画への重要な資料にもなる。
企画合唱の宿命として、お互いの顔を知らないところから始まるので、全く知らない人が紛れ込むのを防ぐためにも、一覧表を作っておいて、出席のチェックを付ける、のは良い方法となる。
名札の着用
企画合唱は基本的に面識のない人が集まる。というかそうならないと、広く公募した意味がなくなる。だから、互いが知らないことを前提に、パートや氏名またはニックネームを書いた名札を付けることをおすすめする。主催が名札そのものか、材料を用意しておくのが無難だ。名札を主催で作る場合は事前に団内に公開していい名前を確認しておくことを忘れずに。
パートバランス
ある面どうしようもないことではあるが、思い描いた通りのパートバランスで人が集まることはまずない。もちろん、指導者としては、与えられた人数の中でパートバランスを音楽的に整えていくのも腕の見せ所ではあるが、そうした工夫では不可能なほどに人数に偏りが出ることも少なくない。
可能な範囲でのパート移動を促せるように、参加アンケートで、歌える(歌いたい)パートを複数チェックしてもらうこともあるが、全員が希望するパートで、思いっきり歌えることが理想ではあるので難しい。
参加費の回収
重要かつデリケートなところ。私が主催する企画だと、本参加のほかにお試し参加制度をとっている。お試しの人は必ず参加した練習時に、本参加の人はおよそ半分の練習が消化される頃までに支払ってもらうようにしている。とりっぱぐれ、は企画の収支を悪化させるし、不公平感を生むこともある。基本的には最初に参加するときに払ってもらうのが一番だ。
練習録音の共有
前述のように、そもそも社会人合唱団の練習出席率はそれほど高くないことが多い。また、練習の曜日を分散させていれば出席が難しい曜日にあたった人は、その日の練習を泣く泣く諦めることになる。
企画合唱では収支の問題もあり、潤沢な練習期間をかけてじっくりと向き合うよりは、みんなの「好き」のエネルギーを束ねて短期集中型になることが自ずと多くなる。そうなると、1回の練習の重要度もそれなりに上がってくる。
練習音源を共有すれば、出られなかった人のケアにもなるし、出た人の復習にも役立つ。
近年はスマートフォンでそれなりにクリアな音で手軽に録音が可能なので、ぜひ録音を共有することをお勧めしたい。
企画終了時
企画が終わったときのことも考えておきたい。
・余剰金の行き先(返し方)
・成果の残し方(動画等の公開)
などは実務的なところだし、単純に締め方も大事だ。
いつ、だれが挨拶して、どう締めるのか。
もし次を企画するなら、その時にはその情報を告知できると、継続して参加してくれる人も多く出てくるだろう。
合唱団わをんの場合は、演奏終了後にミーティングをし、その場で代表のやがが「わをん○○期 解散!」と宣言するのが恒例となっている。
まあ、解散した後に打ち上げで飲むんだけれどね。
今後の企画合唱
Twitter(X)が大きく曲がり角を迎える中、今後の企画合唱がどうなるかは正直わからない。
LineオープンチャットやDiscordなどに集まることも考えられるが、そもそもが閉鎖的にそれぞれのルーム、それぞれのサーバーがあるだけなので、結局口コミベースでしか広がらない。100人規模のDiscordが簡単に立つのも現状ではTwitterのおかげに他ならない。
それでも企画としてTwitterを活用していない2009年に雨森男声を実施したように、口コミベースでも企画合唱そのものはなくならないと思う。
「企画合唱の魅力」の項でも書いたように、団への帰属意識でなく例えば曲の魅力で人が集まるというのは、演奏の曲に対する理解度が揃いやすく、音楽的にも面白くなりやすい。
LVで「ここの増4度がたまらん!」を容易に共有できるのは、やはり企画合唱でそういう曲と承知で集まっている人たちだから、というのは大きいだろう。
そうした企画合唱ならではの居心地の良さや気軽さは、やはり大きなアドバンテージだ。
多くの人が見るSNSがなくなったとしたら、昔のようにハーモニーなどの雑誌広告やチラシはさみなどを地道にして集める企画合唱、というのもまた一興だ。
まあ、昔mixiにいた合唱人たちがメンバーは変われどTwitterで寄り集まって面白いことをやってきたように、きっと新しいSNSが出てきたらそのどれか(あるいは複数)に集まって、また何か面白いことをやっているんだと思う。
合唱は人と一緒じゃないとできない音楽、だから。
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