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伊藤正夫の歯ミング噛ミング 静岡編三話口の開け閉め

わたしは、歯科インプラントの手術を行う口腔外科医なので、題字はハミングとカミングに掛けています。歯のこと喰うこと生活のこと、旅の中で楽しく語っていこうと思います。

 静岡編では、静岡県にゆかりの人や出来事や土地を取り上げて、お話をします。もしよろしければ、YouTubeでも同じ内容を動画にしていますのでご覧ください。今日のタイトルは「口の開け閉め」です。
 
 静岡県島田市出身の画家で北川民次という有名な人がいます。とても骨太の絵を描く人で、中でも大画面を使った迫力のテンペラ画「タスコの祭り」という絵があります。私はよそで見ましたが、静岡県立美術館の所蔵品と書いてありました。
 
 北川民次は、メキシコルネッサンスという芸術運動の、影響色濃い作家と、解説にはありました。その絵は、メキシコの赤い土というより、彩度の落ちたグレーの大地に、ベールを被る女たちが立つ群像です。向こうでは、白い綿の服にソンブレロを被る男たちが、音楽を鳴らして祭りに興じます。
 
 でもよく見ると、誰も口を開いていません。女たちは口を閉じ、ベールで口を隠す人もいます。
 
 男たちも祭りに興じているのに、口を開いている人がいない。そういう沈黙の群像なのです。

 遠くには透ける人影があり、抽象的に描かれた教会もありますが、実存感を持つのは手前の群像だけで、誰もが口を閉じている。
  
 この迫力の北川民次を見て思い出したのが、質は全く違いますが、東京現代美術館が持っている、マルク・シャガールの「ふたり」という、沈んだ紫色の絵があります。多分ロシアのユダヤ人の村での婚礼を描く絵だと思います。
 
 この絵では、花嫁さんと花婿さんは口を開けて喜んでいます。



 
 このように「口」というものは、閉じれば、「待ったり受け止めたり」する時の姿勢で、開けばそれだけで、前に出て自分を表すサインです。必ずしも声が出なくても、こんな口のサインで、いろいろなことがわかってしまうんですね。 
 
  伊藤正夫の歯ミング咬ミング今日はこれでお別れです。わたしはインプラントを専門にしておりますので、悩みごとや相談をお受けします。敬天堂歯科呉服町054-255-5125、敬天堂歯科サウス054-285-0836でご予約を。

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