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ラブソング 伊藤正夫の歯ミング噛ミング静岡編六話
伊藤正夫の歯ミング咬ミング静岡編六話です。歯科インプラントの手術を行う口腔外科医なので、ハミングを歯、カミングを噛むと掛けています。歯のこと喰うこと生活のことを綴ります。
今日のお話は、ラブソングです。
国道1号線を、西から上って参りますと、大井川を越え藤枝市の外れから山間に入ります。ここを宇津谷峠と申しますが、「蔦の細道」とい古い道、古道があります。世に山辺の道というものはいたるところにありますが、こちらは大変有名です。実はわたしは行ったことがありません。でも絵で見たことがありますし、いろいろな歌や芝居に取り上げられて有名です。
平安の色男、有原業平について詳しい方が多いと思いますので省きますが、名歌人であり、伊勢物語をものにしたと言われます。
伊勢物語九段「東下り」は有名なシーンがいろいろに収められています「ちはやぶる神代も聞かず竜田川」映画でおなじみですね。
「唐衣きつつになれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」唐衣のか、きつつのき、つましのつ、はるばるのば、旅のたを合わせて杜若。愛知県知立市のお寺のカキツバタはこのお歌のおかげで、尾形光琳の燕子花図屏風という大作に結実しています。
関東へ向かう有原業平は宇津谷峠で、山辺の細道に差し掛かって心細いんですね。山が迫り蔦が絡まる。そんな時に京都で見知った修行僧が偶然やってきて、こんなとこでどうしたのってことで、どうしたもこうしたもないんですが、知った顔なので安心、ついでに京都のガールフレンドへ歌を託しました、この時の歌が、
駿河なる宇津の山べのうつつにも
夢にも人にあはぬなりけり
うつのやまべのうつつにも、というふうに巧みな韻を踏んでいます。うつつは現実のことですが、現実の対義語の一つは夢ですから、うつのやまべのうつつにもゆめにも、という風に世界が拡張していきますのに、あなたはいないで収束する。憎いまでの言葉使いをしています。こういう文学的雰囲気に触発される人は多いらしく、いろいろな歌や歌舞伎に取り上げられています。
この歌の「あなたはどこにもいないじゃないか」という寂しい気持ちは、京都の人に恋しい・会いたいという気持ちを伝えていますが、物語が先に進むにつれて微妙に拗れていきます。
うつのやまべのうつつにもゆめにも ラブソングですね、君に捧げる愛の歌のような。
伊藤正夫の歯ミング咬ミング今日はこれでお別れです。わたしはインプラントを専門にしておりますので、悩みごとや相談をお受けします。静岡市呉服町の敬天堂歯科医院でお話を伺います。電話番号○五四 二五五 五一二五です。お元気で、ごきげんよう。