
北斗晶よ、女子プロレスに謝罪しろ!⑭
山田敏代という元全女の選手
対抗戦時代、全女に山田敏代という選手がいた。蹴りを得意とする、ショートヘアのボーイッシュな選手だ。昔の資料を見ていると「全女イズム第一人者」と書かれていた。全女の精神、思想を受け継いだ選手ということなのだろう。ウィキペディアにも、山田のニックネームとして「全女イズムの申し子」と記されている。
その山田は、1997年に全女からGAEAJAPANに移籍する。GAEAJAPANは長与千種をエースとして、1995年から2005年までの10年間活動していた女子プロレスの人気団体だ。
その元全女の選手・山田敏代の、GAEAJAPANでの試合のダイジェスト動画が上がっている。1998年1月19日 大阪府立第2競技場で行われたデビル雅美 & 広田紗久良 vs KAORU & 山田敏代の試合だ。
対戦相手のデビル雅美も元全女のプロレスラーで、ジャガー横田と並んで女子プロレスを象徴するレベルの大御所レスラーだ。デビルは、全女を退団した後、JWPに入団してプロレスを続け、JWP所属としてGAEAJAPANに参戦していた。
デビル雅美のパートナーの広田紗久良はGAEAJAPANの選手で、後にコミカルレスラーとしてスター選手となっていくが、この時はまだ、がむしゃらさが売りの新人レスラーだった。
山田敏代のパートナーであるKAORUも山田と同じ全女出身のプロレスラーだが、メキシコの飛び技主体のプロレスであるルチャをやりたいという理由から、ルチャを目玉とする団体であるユニバーサルに移籍し、その後ユニバーサルが経営不振のために退団し、GAEAJAPANの旗揚げに参加した選手だ。
その選手構成で行われた試合がどうなったかというと、デビル雅美という大御所を前に、山田とKAORUが仲間割れを起こし、挙句の果てに新人を潰して試合をぶち壊す。
山田は味方であるはずのKAORUを攻撃し、KAORUも山田に蹴りを入れる。攻防はチグハグまま、山田敏代が新人の広田紗久良を唐突にスピンキックであっさり仕留めるという、本当にどうにもならない展開になった。
試合後、デビル雅美がマイクを持って試合を無茶苦茶にした山田敏代とKAORUに激怒する。「おい山田!、さくらからピン取ってうれしいか? うれしいか? 負けてもな、価値はつくんやで。お前らな、後輩に損させるような試合すんな。何年やってんだ、プロレス?」とデビル雅美は迫力ある声で言う。「ヘタな試合吹っ掛けてやりやがってよ。辞めちまえ、オラ」。
最後、その様子を見ていたた長与千種がリングに上がって山田敏代とKAORUに鉄拳制裁を加え、二人はうなだれた表情を観客にさらされる。
本当にどうしようもない試合だが、デビルのマイクの力と、長与千種の鉄拳制裁のおかげで、歴史に残るようなプロレスになっていた。どうしようもない仲間割れを、マイクと鉄拳制裁によってストーリーをつけて見せたのだ。
一方の山田敏代とKAORUは……。
プロレスである以上、どこまでがギミックで、どこまでがリアルかはわからないが、同じようなことを山田は全女時代にもやっている。
1992年8月15日のブル中野&アジャ・コングvs北斗晶&山田敏代の試合だ。タッグトーナメントの決勝戦という非常に重要な一戦でのことだ。
試合前のインタビューで山田が北斗のことを「こんなやつ」と言い、北斗がそれを聞いて「なんだ、テメエ、この野郎!」と言って山田に襲いかかる。試合前からありえないようなことになっていた。
大事な試合を前に、北斗が試合で木刀を試合で使う使わないとで揉めているのだ。
試合中も、観客そっちのけで山田と北斗はいがみ合い、タッチはほとんど行われず、長時間、山田がリング内にいるといった、話にならない展開になった。試合が終わってからも二人はいがみ合う。
選手の中にブル中野がいたため、何とか試合は成立したが、タッグマッチ決勝戦という大事な試合は、自己中心的などうしようもない二人によって、観客置き去りのどうしようもないタッグマッチになってしまった。
その時と同じ光景がGAEAJAPANでも現れたということだ。山田敏代という全女の選手はGAEAJAPANに行っても、全女にいたときの選手のままだった。
デビル雅美の話に戻るが、試合後のインタビューでデビルは「プロレスは一人でつくるもんじゃない。選手だけでつくるもんでもない。レフェリーがいて、お客さんがいて、初めてプロレスは成り立つ」。プロレスはエンターテイメントで、そんなことは当たり前のことだ。その当たり前のことをデビル雅美は試合後のコメントとして出している。
時は過ぎ、デビル雅美の引退式での実況解説で、デビル雅美の女子プロレスに対するの大きな貢献について説明されていた。「リングの中だけを見ていがちだった女子プロレスを、お客さんという外を見なければだめなんだ」という意識改革をして見せたのがデビル雅美だ。「自分たちはプロなんだ、勝ち負けも大事だが、最も大事なのはお客さんを楽しませることだ」。
解説者は、女子プロレスという大きなくくりでそう言ったが、リングの中だけを見て試合をしていたのは、実際には全女だけだ。観客云々以前に、平気で試合を壊し、相手をつぶす。
2021年、風間ルミと山田敏代のズームでの対談動画が流れていた。動画が始まった当初、お互い和やかに談笑していた。
しかし、話の流れで、二人の出会いについて話が出て、風間ルミが「私が記憶にあるのは、駒沢大会で」と言うと、山田は必要以上に大きな笑い声を上げ、そして、黙り込んだ。
風間ルミが「あの時、山さんがLLPWに出てくれたのは初めてだよね?」と言い、声のトーンを落として「初めてだったんだあ」と繰り返すと、山田は「すいません」と謝った。
風間が神妙な山田を見て笑うと、山田は「怖い! 怖い! 怖ーい!」と顔を引きつらせながら笑い「すいません、その節は」と山田は言った。
「駒沢大会」というのは、対抗戦で全女が参加したLLPW主催の興行のことだ。対抗戦から30年近く経っているのに、「駒沢大会」と言っただけで話が通じてしまうというのは一体どういうことなのか? そしてなぜ、「駒沢大会」という単語が出ただけで、山田は謝ったのか?
風間のやさしさでそれ以上追求することはなかったが、山田敏代は風間のやさしさに乗っかって、「全女イズム第一人者」らしく、ヘラヘラ笑ってごまかして見せた。
シリーズ 目次
参考文献および引用元
雑誌・書籍・ネットニュース等
週刊プロレス 週刊ゴング NUMBER 1993年の女子プロレス
別冊宝島 プロレスライバル読本
熱血! 女子プロレスの友
1995年のクラッシュ・ギャルズ ぼくの週プロ青春記
プロレス少女伝説 憧夢超女大戦 25年目の真実 全女がイチバーン! やっぱり全女がイチバーン!! 吉田豪の"最狂"全女伝説 北斗晶が嫌われる理由 ロッシー小川女子プロレス55年史 ブブカ FUSO magazine NO.91 まるスポ zakzak 2014.09.12
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