勉強がなんだよ
勉強がなんだよ。
頭がいいからなんだよ。
偏差値の高い大学に行けるからなんだよ。
生きてきたね、そんなものばかりを信じて。
「Showgoちゃんは頭がいいから」って言われて、それだけが自分の価値で、それが無くなれば自分じゃないって思うようになってしまったね。
「頭がいい」のが私の長所なら、それ以外の長所は自分のものにしてはいけないなんて考えて、「優しい」って言われることも素直に受け取れなくなって首を傾げ続けて。
「それは他の人のための言葉だ」って、お前世界に何億人いると思ってんだよ。
勉強がなんだよ。
公式をいくつ使えても漢字テストで全部書けても、生きていくためのことなんか分からなくて本当はずっと社会で生きていけない予感がしてる。
挨拶ができれば殺されないんだろうか。
飲み会に行ってればいじめられないんだろうか。
頭がいいからなんだよ。
「Showgoちゃんはなんでも出来るもんね」「私らとは出来が違うから」「脳取り換えてほしい笑」
うるさいうるさいうるさい。
やめろよその私なんか攻撃。
一度でも自分を見上げてきた奴に、相談なんかできると思ってんのか。
私が凄いんじゃない、お前らが私のラインに立ててないだけ、だって私何もしてない
同じ土地に生まれて、おおかた同じ教育を受けて、同じ年齢で同じ性別で。
全部同じはずなのに全部違うって言われる。
君たちのせいで私いつの間にか針山の上に立ってたんだ。
私だって君たちの頭の中は分からないよ。
偏差値の高い大学に行けるからなんだよ。
「志望校どこ?」って聞かれて、答えたら「えーすごい絶対頭いいとこじゃん」って言われてヘラヘラするだけのお決まりの流れ。
何が楽しい? 適当に褒めてお前の何が満たされるの?
勉強すべき場所で勉強してこなかった教室にゴミを溜めていく奴らがどんどん人生の道を打ち立てていく。
私ずっと頑張ってたはずなのにどうしてお前らの方が先に笑ってるんだろう。
それ以外で認めてもらえないからマークシートを埋めてるだけだよ、お前らは喋れて良かったじゃん。
勉強がなんだよ。
勉強がなんだよ。
勉強がなんだよ。
「みんな」より優位に立ってないと納得されないくらい自分が傲慢な自覚があるんだ。
優れている証拠がなければ笑って生きていいとは思えなかったんだ。
一番になれば褒めてもらえて誰かに選んでもらえる気がしてたんだ。
型にはまった勉強以外できる気がしなくて今から怖くてたまらないんだ。
ずっと声が小さかったあの子は、英検を取って面接練習を重ねてから堂々と喋るようになってとてもかっこよくなった。
お調子者のあの子は笑顔で圧迫面接の話をした。
無口なあの子は色つきの眼鏡がとてもよく似合った。
勉強がなんだよ。
人の気持ちも分からなくて傲慢に排他的に振る舞っては、学校っていう場所だけでは何より強い盾になる成績を振りかざしてきた。
それが全ての免罪符になった。
いい成績を取り続けなければいつか自分の立ち居振る舞いを糾弾されて、能力が無ければもうお前なんか要らないって言われると思ってるんだ。
「私バカだから」ってサラッと言ったあの子はテストの合間ずっと私と話してくれる。
あの子は「Showgoちゃんに教えたかった」って面白い画像を見せに来て、あの子は成績が上がったテストを「Showgoちゃんにコツ教わったから」って言った。
頭が良くなければ自分の役は世界の台本から消える気がしてるんだ。
どうしてなんて、いつからなんてもう分からないずっと前から。
高校の定期考査でずっと一位を取り続けてる。
そうじゃなけりゃ教室の窓から飛び降りなきゃいけないってどこかで思い込んでる。
大学も国公立に行かなきゃ、「なんだお前結局頭良くなかったんだ。じゃあ中身散々だしもう要らないね」って誰かに思われると思ってる。
分かってるよ本当は勉強がすべてなんてバカなこと存在しないって。
分かってるよ本当は文章を書く仕事がしたいって。
分かってるよ本当は私が馬鹿になっても居てくれる友達がいるって。
でもその要素を取り払った途端私の輪郭が背景に溶けはじめるんだ。
本当は褒められることが何より嬉しくて、尊敬されることが何より欲しい。
勉強がなんだよ。
お前のおかげで私は努力って呼ばれるものが初めてできる。
勉強がなんだよ。
お前がいたから私は私のことを好きだと思えた。
勉強がなんだよ。
結局いちばん大切でいちばん憎いのはずっとずっとお前だった。
勉強がなんだよ。
勉強がなんだよ。
勉強がなんだよ。
お願いだから「頑張ってるね」って言って。
「頭良いね」って言って。