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あなたを好きになった理由。
拒否する理由も思いつかず、堀越氏と連絡先を交換し、私の人生初の合コンは終了した。
案の定、堀越氏から連絡が来て、何度かおデートを重ねた。
堀越氏は、私と会うときはいつも緊張していて、やっぱり天然だったけど、(大体滑るけど)たまにめちゃくちゃ面白い話をする。結構陽気なキャラらしい。
異性として好き!という感情はイマイチ湧かなかったが、人として嫌な所は全くなかった。
なにより、堀越氏は私に指一本触ってこない。
一緒に夜景を観ても、美術館へ行っても、居酒屋に行っても、オセロをしても(なぜオセロ)。
何故かは分かる。女慣れしていないからだ。距離の詰め方が分からないからだ。だから、あんなに緊張した面持ちで、私に会いに来るのだ。
男性にスマートにスイートにエスコートされたい女子ならば、堀越氏はとてもツマラナイ男だと思う。
でも、私は、そこが1番いいと思った。
4度目のデートで告白された。何故かヤクルトを二人揃って飲んでる時に告白された。なんでこのタイミング?
正直に
「人として好きやから、そのうち好きになれると思うけど、まだ堀越くんが私を好きなくらいの気持ちはない。付き合ったら寂しい想いをさせるかもしれん。それでもいい?」
と伝えた。
堀越氏の返事はOKだった。
そう、私は付き合った当時、堀越氏のことが特別好きな訳ではなかった。
え?どのタイミングで好きになったのか?
付き合ってから2回目のおデートの時である。
ファミリー向けの大型公園で遊んで、さぁ帰ろうという段になって、堀越氏がソワソワし始めた。期待を秘めた瞳で私をチラ見してくる。
何だろう、何がしたいんだろう。ハグ?チュー?それ以上のことはちょっとまだ無理やで…!
ちょっと考えて、私はソワソワ堀越氏をスルーすると決め込んだ。
「なぁ!」
一方、堀越氏は自分の要求を伝える方向で舵を切ったらしかった。
くっ、ハグくらい、ハグくらいなら…!
「手ぇ繋ぎたいって言うたら、引く!?」
この素っ頓狂なセリフに、私の心は陥落した。
え、訳がわからない?では少し、このセリフのどこに陥落したか解説を…。
23歳180cmの大の大人がこんな弱気なセリフを言うアンバランスさが、
私に絶対嫌われたくないという臆病さが、
それでも手を繋ぎたがる一途さが、
駆け引きのできない不器用さが。
出会ってからずっと堀越氏から感じていた、私の気持ちをくすぐる柔らかいものが蓄積し、そして芽吹いたのである。
か、かわいい…!!
ついに私の母性は白旗をあげ、可愛さの前に全面降伏した。
めっちゃ可愛い。めっちゃ大切にしたい。望まれるなら、一生一緒にいたって構わない!
逃げ恥でガッキーが「可愛さの前では全面降伏なんです!」って言っていたのはこれだったんだ!
大丈夫、私、この人のこと好きになる。
初めて、好きになってくれた人のことを好きになれた。
私はそれはもう嬉しくて嬉しくて、この世の全てを手に入れたかのような気持ちになった。
私は堀越氏の細長い手を両手で包み、にんまり笑ってから、そのままスキップした。
堀越氏はびっくりして、ちょっと困って、とても嬉しそうだった。
心が踊るのを感じていた。
かれこれ、2年前の話である。