BSフジ「美 少年亭」第二章の放送を終えて
BSフジ「美 少年亭」の第二弾の放送、ご覧いただけましたか?今回も前回同様に、美 少年のみなさんには【落語】に挑戦して頂きました。前回の放送から約半年ほどですが、ジャニーズの方にこの短期間に落語に二度も挑戦して貰えるなんて、落語家冥利に尽きる出来事です。
今回も、第二弾の番組の解説を少しだけお話ししたいと思います。まだ番組をご覧になっていない方はぜひご覧になってからお読み頂くことをお勧めします。
『天狗裁き』について
まず『天狗裁き』というネタについてですが、このおはなしはとてもストーリーがわかりやすく初心者にもおすすめの噺です。旦那が見た夢の話を聞き出そうとする人がたくさん出てきて、最後には天狗まで出てくるという奇想天外なおはなしです。
ただ、そのシンプルさゆえに難しい噺でもあります。落語にとって一番難しいとも言える「繰り返し」が繰り広げられるからです。
「夢を聞き出したい」
この一点だけで話が展開するため、一歩間違うと単調になるというか飽きてしまうというか、落語家でも苦労するネタの一つです。
そういう意味でウチの師匠(林家正蔵)も「難しい」と言ったわけです。そんな難しい『天狗裁き』に今回は挑戦して頂きました。
私の担当は佐藤龍我くん
今回は佐藤龍我くんの担当をやらせてもらいました。佐藤くんにとっても前回のリベンジの気持ちがあったようで、最後の「5天狗」を選んで、とても気合が入っておりました。
突風で飛ばされた主人公が高尾山で天狗に詰められるクライマックスのシーン。演目の由来にもなっている天狗が出てくるこのシーン。とても良く頑張ってくれました。
今回は私なりに教え方を工夫しまして、前回佐藤くんが言葉に詰まってしまった時に、台本を何度も読み返しているのを見ていたので、今回は極力台本を見ないで覚えてもらおうと思いました。
放送ではあっという間に練習パートが過ぎて行きましたが、実際は最初の30分で覚えて、そこからは台本を一度も見ないで、何度も何度も繰り返し喋って貰いました。おそらく30回以上は、台本を見ずに喋ったんじゃないかと思います。
その30回の喋り方も色々で、正座して、椅子に座って、立って、あぐらをかいて、など色々な体勢で何度も喋って貰いました。これは我々もやるんですが、出来るだけ色々な状況で言葉を頭に入れた方が入るんです。「ドラゴン桜」で体操しながら数式を覚えたりするのがありましたがあの感覚ですかね。
実際に、練習パートではほぼ完璧に覚えていました。
なので詰まった時には信じられませんでした。
絶句するということ
あれだけ完璧に練習パートをやって居たので、セリフに詰まった時は驚きましたが、これは落語においてはたまにあることでもあります。
特に落語家になったばかりの頃というのは、落語を一字一句覚えようとするので、そういう事があります。私が落語家になったばかりの頃は、そういうことも結構ありました。慣れてくるとセリフを覚えるというより、落語という会話をするという感覚が身につくと、絶句するということも無くなります。
なので佐藤くんがセリフに詰まるのも不思議なことではないのです。
ただ、佐藤くんが素晴らしいのは諦めない心と、メンバー愛です。
「ここまで繋いでもらって居たので最後までやり切りました」
と言っていたように、最後は自分で締めるんだという気持ちが勝ちましたね。僕も祈るように見ていました。
リレー落語
前回同様にリレー落語を披露した美 少年さんですが、普通の落語以上にこのリレー落語の方が難しいんじゃないかと観ていて思いました。
我々は普段一人で一つの落語を喋ります。導入からオチまで全部自分で気持ちを作って行きます。
ですが、リレー落語の場合は一部分だけをやるので、気持ちを作るのが難しいのと、セリフ量は全部覚えるよりも少ないけど、脈絡のない箇所を覚えるので一席覚えるより覚えにくいのではないかと思いました。
まして最後を務めた佐藤龍我くんは相当なプレッシャーがかかっていたと思います。そんな中、やり直してまで最後までやり遂げてくれた佐藤くんは本当にあっぱれです。落語を最後まで真剣にやってくれて私は感無量です。
美 少年
今回、第二章も「落語」に挑戦してくださった美 少年さんですが、改めてメンバーの絆を感じました。
今回は前回よりも良いものにしようという気持ちを全員が持っていて、それを語らずとも通じ合っている様子が、とても素敵でした。
この半年の間に二回も落語に挑戦してくださり、とても楽しんで真剣にやり遂げてくれて、落語家の我々は本当に関心しきりでした。
改めて美 少年さんには感謝いたしますし、ファンの皆様のおかげでこの第二章も実現できたと思っています。
私もまだまだ落語の種まきをして行きたいと思っていますので、もしこの番組でご興味を持たれた方は、一度落語を観に来て下さいませ。
最後までお読み頂きありがとうございました。