真打披露興行のネタ帳
2022年3月21日から始まった真打披露興行が5月20日をもって終了しました。私のトリは12日間。今日はネタを振り返ります。
はな平真打披露のネタ帳
この1年間ずっとこれらのネタを意識しながら過ごして来ました。チャンスが有ればトリネタをやる1年間。楽しかったですね。持ち時間がなくてもトリネタやって、途中までで降りたりとか、その時のお客さんには本当に迷惑な話ですが、そんな感じでずっとやって来ました。
鈴本演芸場は初心者多め、だけど好きな人も来る。
今回、トリネタを考えるにあたってそれぞれの寄席で自分なりのテーマがありました。10年間二つ目として高座に上がって来て、それなりに自分のデータがあって、この寄席はこういう雰囲気だというのがあります。そこに披露目というスパイスが加わって、さてどうなるかという感じで考えました。
最初の鈴本演芸場は、キャパも大きく三日間あったのでかなり必死に呼びました。今まで知り合った方ほとんど全てを網羅するくらいに声をかけたので、多分初心者の方が多いだろう。そして、普段寄席に来る方もまずは鈴本を見てやろうという感じで、両方のお客さんが集まるだろうというのが僕の見立てでした。
ただ、初日の『中村仲蔵』だけは自分が一番好きな噺ということで、僕の気持ちだけを大事にやりました。
あとは賑やかに『崇徳院』、そして日曜日に『茶の湯』。日曜日は特に初心者が多いだろうというんで、わかりやすさを選びました。
新宿末廣亭は廓噺
新宿はもうその建物の雰囲気に合わせて行こうというのと、お客さんがアダルトなイメージから廓噺を二席やりました。
『明烏』『幾代餅』ともに、二つ目時代にやり倒したネタです。
夜席のしっとりした雰囲気にハマってよかったです。
浅草演芸ホールは瞬発力重視
浅草は番組が多くてバラエティ豊か。そんな中に入って行くので、トリであってもお客さんがそういうところを求めているであろうという読みでした。
ただ、初日の『片棒』はやり方を間違えましたね。片棒は20分強でこしらえていたのですが、持ち時間が30分たっぷりあったんですね。そこで僕なりに枕を増やして無理くり30分やったんですが、ちょっとお客さんはお腹いっぱいだったかなという印象でした。
無理にのばさずトントンやれば良かったです。
この教訓を活かした『紀州』『七段目』はうまく行ったと思います。
特に『七段目』。「お芝居を知らなくても楽しい落語」に仕上げるのが目標でしたからそれが達成できたような気がします。とても良いお客さんでした。
池袋演芸場はじっくりたっぷり
池袋はキャパも100くらいで落語好きな方が集まる印象でしたが、かなり良い雰囲気になりました。
多分僕のはじめてのお客さんが中和してくれたんだと思いますw
『寝床』をここまで取っておいて良かったなというほど、『寝床』なお客さんの前で出来ました。この噺は本当に難しいんですよ。とにかく。
噺の中にも出るセリフですが、「こっちが語ろう。客が聞こう。の息があってはじめて成立する」というような噺です。
『甲府い』は今までの寄席とお客さんへの感謝を込めてやりました。最後に御礼参りが出て来ますんで。あとは噺の質感が池袋に合う気がしたんです。お陰様で良い雰囲気で終われました。
国立演芸場は王道で
国立は正直迷いました。一年前に決めた十二席があるんですが、予定通り出来たのは十で、後の二席つまりこの国立のネタは直前で考えました。
『青菜』は今期初ですが毎年やっているネタなので、慣れてはいます。ですが、やっぱりいきなり披露目のトリでやるのは緊張しました。
5/20は披露興行自体の終わり。つまり大千秋楽です。この日のネタは5月に入って考えました。本当は『一分茶番』をやろうと思ったんです。国立は芝居の噺がやりやすい。そう思ったんですが、この日は全員にとっても千秋楽なので、良いはなしをしたかったんです。なので、『井戸の茶碗』。元は講釈ネタで、トリネタのど定番。この噺はここ一年やってませんでした。普段もあまりやりません。やるとしても地方です。
だけど、最後は意を決してど定番の噺をやりました。おめでたい噺ですからね。
結果的に言うとチョイスは良かったと思います。
落語をやる上で一番の邪念は「どうせみんな知ってるし。」
これに尽きます。これを考え始めたらどんどん気持ちがそっちに行っちゃいます。そこをなんとか「僕にしか出来ないネタ。お客さんを信じて。」
そんな気持ちに持って行き、やりました。
落語は色々な闘いがありますね。
一先ず、披露目のトリとの闘いも終わったので、また新しくネタを覚えて楽しんで行きたいと思います。
また皆さま寄席で会いましょう。
落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。