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令和鹿芝居第七回公演「百年目浮世番頭」を終えて
今年の鹿芝居が終わりました。11月の公演から逆算して、半年前に演目を決めて、プロットを考えて、夏頃にキャスティングオファーを出して進めて来ました。
私たちのこの令和鹿芝居は、時代物と世話物をバランスよくやっていこうというのが精神としてあるので、今までの芝居のチョイスのバランスを考えて、今年はわかりやすい演目で落語を題材にしようと考えました。
ちょうど落語協会が百年興行をやっているわけで、「百年目」にしようというのはすんなり決まったと思います。
物語の主人公は番頭なので、番頭が出てくる落語の演目の要素を散りばめて物語を作って行けば楽しいものができるはずだというのは半年前から考えていました。
今までの鹿芝居は元ネタというか、歌舞伎の原作があるものをやって来たのでそれにアレンジを加えるというやり方でしたが、今回ばかりは落語の台本はあるものの芝居としては完全オリジナルなので、かなり作るのに苦労をしました。
そんなこんなで作ったのが「百年目浮世番頭」です。自由に書ける分、役者みんなにセリフが行き渡るように書いたつもりです。今日はそんな出てくれたみんなのことを振り返りたいと思います。
番頭 次兵衛 琴凌(宝屋)
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今回の主役です。本当に彼には負担をかけてしまいました。「百年目」の本筋は大事にしたかったので、世話物らしいというか江戸っ子らしいお芝居の出来る琴凌さんがふさわしいと考えました。講談の人はやっぱりセリフ覚えが早い。一番多いのに一番最初に覚えたのが彼です。そしてこの鹿芝居でも大活躍。あっぱれです。
大旦那 右兵衛 はな平(唐屋)
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旦那は私がやりました。コミカルな役がたくさん多い芝居なので、私はあまり目立たず出てくれたみんなが引き立つように、演出上のボケはほとんど入れていません。今度はもっと目立つ役にしようかなw
そこは、自分で書いている特権ですね。
若旦那 清蔵 緑也(日高屋)
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お馴染みの緑也兄さん。この方は歌舞伎好きなので、台詞回しに関しては言う事がありません。稽古の時、もっと早起きしてくれると良いですねw
化粧関連の担当で、今年はちゃんと色々と買い足してくれました。
医者 玄白 馬久(馬屋)
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本家の鹿芝居で鍛えられたおかげで、この人の安心感は素晴らしいです。堂々と、道化方を演じてくれました。声が良いのは言わずもがな。馬久さんのすごいのは間の使い方。お客さんの緊張を上手く引っ張ってセリフを出すんですよね。最後の場面なんかは、緊張と緩和が大事なところだったので、馬久さんで本当に良かったと思います。
幇間 一八 市寿(寿屋)
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彼はいつもこういう役なんですよね。どうしても幇間のような役を当ててしまう。そういう雰囲気を持ってるんですよね。とにかく一生懸命やってくれて、芝居の中のフラがある人なので、とにかく普通のお芝居が面白いんです。今回は遊京さんという強烈なキャラクターがいたので、サブ的なキャラで躍動してくれました。
花魁 揚巻 市童(童屋)
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すっかり女形が板についた市童さんです。もうね。可愛いの一言ですよ。正直、この脚本を書いたときは、出落ちキャラになる気がしてましたがそんなことはなかった。もちろん最初のインパクトはあるんだけど、すぐに可愛く見えてくるんです。来年、真打になるのでそういう意味でもこれから弾けてくれるんではないでしょうか?
芸者 市丸 志ん雀 (練胡麻屋)
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志ん雀兄さんは、そもそもの演技の素養があるのでとにかく安心して見ていられます。今回もとにかくうまかった。アドリブもバンバン入れてくれるし、それもちゃんと受けるし、かと言って乱さないので、かなり重要な方です。なんと言っても女形が似合う。だけど、次回は立役をやりたいそうなので、また違う面を引き出しましょうかね。
奉公人 喜助 あんこ(椿屋)
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鹿芝居に欠かせないあんこさんです。今回はSNS担当もしてくれて、そのおかげでお客さんも増えました。当初は、出られない回があるかもしれないとのことで、出番を少なくしていたのでそこが申し訳なかったですが、一生懸命やってくれました。次回はまた歌でも歌ってもらおうかな。
丁稚 定吉 & かむろ お花 花ごめ (花見屋)
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「出たいです」と言ってくれる数少ない仲間ですw
彼女の役は二役あって、本当はメインが定吉の予定が、蓋を開けたらかむろの役がメインでしたね。彼女は真打になったばかりでノリに乗っているし、最近はいろんなことに挑戦しているので、堂々とやってくれて芝居に華を添えてくれました。
みかん問屋 万屋惣右衛門 遊京(伊予柑屋)
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今回のダークホースというか、良くも悪くも芝居を盛り上げてくれた影の主役ですね。三回公演でしたが、どんどん芝居が変わって行き、最終的には花道の七三で大見得を切るところまで行き着きました。彼の落語家人生でもターニングポイントになったんじゃないかと思います。
やりたかった芝居の要素
最後に、私がやりたかった芝居の要素を紹介します。
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このお芝居で、一番やりたかったシーンがこれです
もし自分が歌舞伎の戯作者ならばこう書くだろうという正にそんな場面です
出会った二人が見得をして、旦那が「そなたはなんと!」と言う
もうこれだけのために書いた芝居かもしれません
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これは、最初の鹿芝居の時からずっとやりたいけどやってなかったものです
みんなで踊るとやっぱり楽しいですね
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これは正直、狙ってやりました
踊りの振りも私が考えて、吉原のソレらしい振りにしました
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みかん問屋がすぐに見得をしちゃうキャラになったのは自分でも覚えていません
だけど、今回はそれのおかげで彼が覚醒しました
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みんなで言う渡り台詞はやっぱりしまりますね
オリジナルの中に歌舞伎の有名な七五調の台詞を散りばめました
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このお芝居を考える上で最初に浮かんだ演出がこれです
本当は定吉がこれをやっているんですが、喜助にやらせました
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