子供におすすめの落語(小学生)
子供向け落語は割と普段から向き合っている課題です。というのも落語家の殆どが、学校公演を経験しているからです。
良くあるのが小学校とか中学校。僕は少ない方ですが、月に二、三度は学校公演の依頼があるような方もいます。
そんな、子供におすすめの落語ですが、今日は小学生で考えてみたいと思います。小学生と言っても1〜6年生まで居て、とても幅が広いです。低学年と高学年では全く違います。
ただ、全校生徒を2回に分けてやって欲しいと依頼があった場合は低学年と高学年で分けるのではなく、全学年を二つに分けるようにしてもらってます。簡単に言うと、1〜6年生までの1組と、1〜6年生までの2組とというような感じで、縦に半分にするようなイメージです。
低学年と高学年で内容をガラリと変えるより、僕はあえて同じようにやるようにしています。この方がちゃんとみんな聴きます。
同世代が集まると変な共通意識が生まれて、落語に集中しない場合があるんです。特に高学年だけだと、あまり聴かないことが多い。だけどこれを一緒にやっちゃうと、低学年のみんながゲラゲラ笑ってるのを高学年のみんなは始めは斜に構えて見ていたのが段々集中し始めるんです。
逆もあります。高学年に向けた落語をやると、低学年の方は始めわからないけど、高学年のお兄ちゃんお姉ちゃんが笑っているから、じゃあこれは面白いんだと学習し始めるんです。
まあこんなに上手く行けば良いですが現実は難しいですが、いつもこういう効果を狙ってやっています。
というわけで三つ考えてみます。演者とか工夫は抜きにしてストーリーとか構成だけを重視して考えてみます。
『牛ほめ』
僕が学校公演で必ずと言って良いほどやるのがこの噺です。たぶん、どの落語家も、小学生辺りだとこの落語というのを持っていると思います。転失気、寿限無、初天神、などなどネタ帳を覗くとわかりやすくてストーリーが難解じゃないものが多く並んでいます。
『牛ほめ』も非常にわかりやすい噺で、与太郎がただ家を褒めに行くだけの話です。「与太郎=ボケキャラ」という構図はあまり押し出したくない部分もあるんですが、子供向けにやるときは、それを伝えて始めた方がわかりやすい気がしています。
家を褒める言い間違いも、そもそも家を褒める文句自体も子供は多分わからないはずなんですが、与太郎のファインプレーのような間違え方で、子供達はゲラゲラ笑ってくれます。
おじさんの家に言って「ごめんなさい。許してください。勘弁してください。」でウケなかったら失敗ですねw
『死神』
この噺はやっぱり最強だと思います。普通にやる場合は、主人公の欲深さを滑稽に描くんですが、子供にやる場合は単純にラストまでの顛末を語る感覚です。
「あじゃらかもくれん…」の呪文を使って誤魔化す件と蝋燭の件を重点的にやるイメージになります。
他にもいっぱいあるんですけど、円朝が作ったとされるこの噺は秀逸だと思います。
あと、子供って死神が好き。そんな気がしています。単純に。これはあくまで僕の意見ですけどね。
死神は最強です。ウケるウケない以上に、子供の頭に焼き付く落語です。オチはわかりやすくした方がいいかもしれないですね。
主人公は結局死ぬんですけど、円生師匠のように高座でパタリと倒れるやり方だと子供はただ怖いってなっちゃうし、そもそもオチと分かってくれないので、主人公の死なせ方は色々ありますが、わかりやすいもので行きたいですね。
『あたま山』
ナンセンス落語の極みですね。この噺は頭に桜の木が生えて、そこで花見が始まって、うるさいからそれを抜いたら池が出来て、今度は釣りするやつがいっぱい出てきて、最終的に主人公が自分の頭の上に出来た池に身投げをするという筋立てです。
まさにナンセンスですね。
これ意外と大人の前でやると、真剣に聴いちゃうんです。ナンセンスに入り込めなかったりします。
「どうやって自分の頭の上に出来た池に身を投げるの?」
と真剣に考える人が居ます。この噺は、それを言っちゃあおしまいな噺です。出来る出来ないじゃなく、やったんです。もうそれだけ。
まあ、子供でも同じように疑問を投げかけて来るんですけどね。
絵本とかの題材になるのがよくわかりますが、だけどこういう無茶苦茶な内容を成立させちゃうのが落語の良さだと思っています。
以上、子供(小学生)におすすめの落語でした^_^