そうよわたしは2番目の女

「彼女いるよ、だから俺のこと奪ってみて」
「俺が彼女と別れるまで、男つくらないでね」
「タイミングさえ合ってたらまふりにプロポーズしてたよ」
「男には好きがたくさんあるの。だから、まふりのことちゃんと好きだよ」

　これらはすべて、わたしが男のひとたちに言われたことのあるせりふである。うしろ２つは既婚者の発言でした。こら！

　どうしてだかわたしは、いわゆるキープというか、都合のいい女というか、そういう便利なところに置いておかれることが多かった。

　例えば、休みの日になるとどちらかの家でだらだらして、同じ毛布にくるまってどちらかがすすめた映画を流しっぱなしでお昼寝したり、わたしが体調を崩すとコンビニからテレビ電話してきてわたしの食べたいもの全部買ってきてくれたりしてたひとに恋愛相談をされたことがある。わたし何だった？

　あとは、２人で飲んだあと彼の家に泊まって、次の日ぼさぼさでラーメン食べに行くとか。ニトリでおそろいのクッション買って、パン屋さんでコーヒー飲むとか。最寄りのスーパーで好きなお酒や食べ物をごっそり買ってわたしの家で飲むとか、そんな休日を一緒に送っていたひとに「彼女できたわ」と告げられたり。わたし何だった！？？

　いろんなことを教えてくれて親切だな、勉強させてもらいたいなと、あくまで同業者として信頼を寄せていただけの職場の先輩から、ふたりきりキャンプに誘われたり、いちゃいちゃLINEが送られてきたり、家に押しかけられたりしたこともあった。しかも複数人。しかもわたしの親くらいの年齢のひとたち。しかもしかも既婚者。きもきもきーもくん。訴えたら勝てたかな。　

　まあここまできたら、たぶんわたしにも原因があるんだと思う。大学生のときのあだ名「未亡人」だったし。え？関係ある？

　先日、大学の先輩たちと飲んだ。そのなかにある先輩がいた。18歳の春、大学に進学してから初めて夢中になったひと。といっても、とっくのとうに過去だし、わたしはその年の夏に別のひとと付き合うことになるので、ほんとうに一瞬のできごとだったのだけど。

　ここから黒歴史思い出話。ぽわんぽわんぽわん（吹き出しふくらむ音）。
　その先輩と出会った当時わたしは大学1年生、先輩は4年生だった。ぼーっとしているようにみえて頭がよくて、聞き上手で、お酒に強くて、すこし鼻声で、伊坂幸太郎が好きで、お部屋でお香を焚いていて、なんでもないタイミングでひょうひょうと「かわいい」とか「好き」とか目を見て言えちゃうひとだった。わーお、すでに危険なかほり。しかし、高校卒業したてのぴちぴち小娘にはそれを嗅ぎ分けられない！あちゃー。

　なんせ18歳から見た大学4年生なんて相当おとなである！車を持っていて、知らないご飯屋さんにたくさん連れて行ってくれた。楽しくお話を広げつつ、わたしの食べるペースにさりげなく合わせてくれていることに気づいたときには感動すら覚えた。あと、「あなた」って呼んでくる男性も初めてだった。くすぐったい。きゅん。爆裂先輩フィルターの助けもあって、わたしは彼にずぶずぶはまりつつあった。親が知ったら「そんなことのために学費払ったんじゃないんだが！？？」と言われちゃうわね、、、ぐうの音も出ません。ぐう。ぐうは出た。

　ちゅーするときは目を閉じるとか、腕枕には頭じゃなくて首をのせるとか、そんなことは教えてもらったけど、「初めては好きなひととしなね」と言われ、頭にはてな。好きなひとじゃないのわたし？？これが遊ばれてるってやつ！？？

　そのうち怪しい雰囲気を嗅ぎつけた諸先輩方が「あいつはやめときなさい」「彼女いるぞ」「さすがにちょろすぎる」とねたばらしをしてくださり、沼っちまう前に身を引くことができた。ちなみに、「彼女いるんですよね！？」と問い詰めたときの先輩の返事が本文一行目。まじかよ。

　その後すぐ、わたしはわたしで、別の先輩（ふとまっちょ）に「最近○○先輩（さっきの4年生）に声かけられててえ～、、、きゅるりん」と他の男匂わせ作戦を敢行し、ふとまっちょ先輩をゲット。その後4年間にわたってお付き合いすることになる。こういうとこなんじゃないかな多分！！自分の彼氏の近くにいてほしくない女NO.1ムーブ！！！！

　黒歴史思い出話おわり。ぱおんぱおんぱおん（吹き出ししぼむ音）。
　今回は先輩の卒業以来の再会だったので、ざっと10年ぶりくらい？昔話をするなかで、「そんなこともありましたっけｗ」くらいで先の話題もあがりつつ、先輩も今では結婚してお子さんにも恵まれ、お仕事でも活躍されていて、すっかり落ち着いて……

「やっぱりかわいい。好き。抱きたい。ふたりで会いたい。」
そのたもろもろ。もろろろろろ。おろろろろろろろろ。思わずサワー沢口。

　……なかった。ひとつも落ち着いてなかった。大学生のときそのまんま。奥さまの心中をお察し申し上げる。このひとと夫婦になるのって、すごい覚悟だったんじゃないのかな。それともこういう一面知らないのかな。今のわたしには元彼の浮気による傷があるのでなおさらお察し。なんでこのひとにときめいたのかな18の自分。ひとって、傷ついた分強く優しくなれるよな……

　SNSは自分の子どもだらけ。この子たちのおかげで頑張れるんだよ～～とか自慢してたじゃない。奥さまへのプロポーズ秘話披露してはにかんでたじゃない。なんで我が子との2ショットひっさげて女を誘えるのですか。どういうお笑い。フォルダ別保存？好きが並行する？男のひとってみんなそうなの？

　ここまでくると、わたしがうぶすぎるだけで、世の中の男女だいたいこんなもんなのか？好きどうしの相手と一生添い遂げるなんてフィクションなのか？？彼の浮気くらいでメンタルを病んだわたしは大げさだったのか？？

そこに、愛はあるんか？（哲学）

　と、なんだか頭がぐるぐるしてしまった。というか、今もしている。わかんねえ！幸せにはなりたい！わたしの幸せって、どんなひととどうなることなんだろうか。迷子のアラサーは明日からがんばってはたらく。まずは6時に起きるところから。

　「愛がなんだ」、読んだとき頭どかーーーんと殴られたなあ。愛がなんだ。愛ってなんだ。わたし未だにテルコかよ。