
【財務・会計】ポートフォリオのリスク分散
ポートフォリオのリスク分散
今回は、” ポートフォリオのリスク分散 ”についてです。
ポートフォリオとは
ポートフォリオとは、さまざまな場面で使われる言葉ですが、ここでは金融におけるポートフォリオについて説明します。
金融におけるポートフォリオとは、投資家や投資期間などの企業が保有する金融資産(株式、債券、投資信託、不動産など)の組み合わせのことです。
たとえば、「株式を60%、債券を40%の割合で保有するポートフォリオを組む」といったような使われ方をします。
リスク分散とは
リスク分散とは、複数の資産に投資することで、特定の資産の価格変動リスクを軽減する効果のことです。
投資の世界では、「卵は一つのカゴに盛るな」ということわざがあるように、リスク分散は非常に重要です。一つの資産に集中投資すると、その資産の価格が下落した場合に大きな損失を被る可能性があります。
リスクを低減することで、より安定的な収益の確保を目指すことができ、分散投資によってリスクをコントロールすることで、投資に対する不安やストレスを軽減できます。

分散投資の方法
分散投資には、大きく分けて以下の方法があります。
資産クラスによる分散:
株式、債券、不動産、コモディティなど、異なる資産クラスに投資する方法。

地域による分散:
国内だけでなく、海外にも投資する方法。

銘柄による分散:
同じ資産クラス内でも、異なる銘柄に投資する方法。

時間による分散:
定期的に積立投資を行うことで、購入価格を平準化する方法。

相関係数と分散効果
分散投資の効果を高めるためには、相関係数⁽¹⁾の低い資産を組み合わせることが重要です。
相関係数が1とならないように証券を組み合わせることで、ポートフォリオのリスク分散効果を生み出すことができる。
1)相関係数:2つの資産の価格変動の関係性を示す指標で、-1から1までの値をとります。
相関係数が1に近いほど、2つの資産の価格変動は同じ方向に動く傾向がある。

相関係数が-1に近いほど、2つの資産の価格変動は逆方向に動く傾向がある。

相関係数が0に近いほど、2つの資産の価格変動は無関係。

相関係数の低い資産を組み合わせることで、より効果的にリスクを分散できます。
リスク分散効果の求め方
リスク分散効果を測るには、主に標準偏差と期待収益率と相関係数を用います。それぞれについて簡単にまとめます。
1. 標準偏差
標準偏差は、データのばらつき具合を示す指標です。投資においては、リターンのばらつき、つまりリスクの大きさを表します。標準偏差が大きいほど、リターンが大きく変動する可能性があり、リスクが高いと言えます。
標準偏差の計算式:
σ = √[ Σ { (Xi - μ)^2 × P(Xi) } ]
σ: 標準偏差
Xi: データ値 i (とある状況における収益率)
μ: データの平均値 (期待収益率)
P(Xi): データ値 i が発生する確率 (Probability of data value i)
Σ: 全てのデータ値についての合計
標準偏差の例
ある投資の収益率について、以下の3つのシナリオが考えられるとします。
シナリオ1: 30%の確率で20%の収益率
シナリオ2: 50%の確率で10%の収益率
シナリオ3: 20%の確率で-15%の収益率
まず、期待収益率 (μ) を計算します。※期待収益率の計算式は次の項目に記載しています。
μ = (0.3 × 0.2) + (0.5 × 0.1) + (0.2 × -0.15) = 0.08 = 8%
次に、標準偏差 (σ) を計算します。
σ = √[ (0.2 - 0.08)^2 × 0.3 + (0.1 - 0.08)^2 × 0.5 + (-0.15 - 0.08)^2 × 0.2 ] = √[ 0.00432 + 0.0002 + 0.01088 ] = √0.0154 ≒ 0.1241 ≒ 12.41%
2. 期待収益率
将来の投資から得られるであろう収益の見込みを数値化したものです。 簡単に言うと、「この投資をしたら、どれくらい儲かるか?」という予想をパーセンテージで表したものです。
期待収益率の計算式:
E(R) = Σ [ P(i) × R(i) ]
E(R): 期待収益率 (Expected Return)
P(i): シナリオ i が発生する確率 (Probability of scenario i)
R(i): シナリオ i が発生した場合の収益率 (Return in scenario i)
Σ: すべてのシナリオについての合計
期待収益率の例
ある投資について、以下の3つのシナリオが考えられるとします。
シナリオ1: 好景気になり、30%の確率で20%の収益率が得られる。
シナリオ2: 経済が横ばいになり、50%の確率で10%の収益率が得られる。
シナリオ3: 不景気になり、20%の確率で-15%の損失が出る。
この場合、期待収益率は以下のように計算されます。
E(R) = (0.3 × 0.2) + (0.5 × 0.1) + (0.2 × -0.15) = 0.06 + 0.05 - 0.03 = 0.08 = 8%
3. 相関係数
2つの資産の価格変動の関係性を示す指標です。-1から1までの値をとり、1に近いほど、2つの資産の価格変動は同じ方向に動く傾向があります。-1に近いほど、2つの資産の価格変動は逆方向に動く傾向があります。0に近いほど、2つの資産の価格変動は無関係です。
相関係数の計算式:
ρ(X, Y) = Cov(X, Y) / (σX × σY)
ρ(X, Y): 変数 X と変数 Y の相関係数
Cov(X, Y): 変数 X と変数 Y の共分散⁽²⁾ (Covariance between X and Y)
σX: 変数 X の標準偏差
σY: 変数 Y の標準偏差
2)共分散:2つの変数の関係性を示す指標です。共分散が正の場合、2つの変数は同じ方向に動く傾向があり、負の場合は逆方向に動く傾向があります。
共分散の計算式:
Cov(X, Y) = Σ { [Xi - E(X)] × [Yi - E(Y)] × P(Xi, Yi) }
Xi: 変数 X のデータ値 i
Yi: 変数 Y のデータ値 i
E(X): 変数 X の期待値 (平均値)
E(Y): 変数 Y の期待値 (平均値)
P(Xi, Yi): 変数 X が Xi、変数 Y が Yi となる確率
相関係数の例
資産Aと資産Bの収益率の相関係数を計算したいとします。過去のデータから、以下の情報が得られたとします。

まず、資産Aと資産Bそれぞれの期待収益率を計算します。
E(A) = (0.3 × 0.2) + (0.5 × 0.1) + (0.2 × -0.15) = 0.08 = 8%
E(B) = (0.3 × 0.15) + (0.5 × 0.08) + (0.2 × -0.1) = 0.065 = 6.5%
次に、共分散を計算します。
Cov(A, B) = (0.2 - 0.08) × (0.15 - 0.065) × 0.3 + (0.1 - 0.08) × (0.08 - 0.065) × 0.5 + (-0.15 - 0.08) × (-0.1 - 0.065) × 0.2 = 0.0108
そして、資産Aと資産Bそれぞれの標準偏差を計算します。
σA ≒ 12.41% (標準偏差の例で計算済)
σB = √[ (0.15 - 0.065)^2 × 0.3 + (0.08 - 0.065)^2 × 0.5 + (-0.1 - 0.065)^2 × 0.2 ] ≒ 8.77%
最後に、相関係数を計算します。
ρ(A, B) = 0.0108 / (0.1241 × 0.0877) ≒ 0.99
この例の場合、相関係数が1に近いため、正の相関が強く、資産Aと資産Bは同じ方向に動く傾向があるということになります。
この場合、資産Aと資産Bは、ほとんど同じように価格変動するということになるため、リスク分散効果が期待できません。
どちらの資産に投資しても、ほぼ同じようなリスクとリターンになり、互いに補い合うことはできません。
分散投資の効果を得るには、相関係数の低い資産同士を組み合わせることが重要になります。
まとめ
今回は、ポートフォリオのリスク分散効果についてまとめました。
分散投資は、リスクを低減し、安定的な収益を確保するための有効な手段です。しかし、分散投資は万能ではなく、注意点もあります。
復習問題(計算問題)
問題1
AさんとBさんはそれぞれ以下のポートフォリオを組んでいます。
Aさん:株式X(期待収益率15%、標準偏差20%)を100%
Bさん:株式X(期待収益率15%、標準偏差20%)を60%、債券Y(期待収益率5%、標準偏差8%)を40%
株式Xと債券Yの相関係数は0.2です。
(1) Aさんのポートフォリオの期待収益率と標準偏差を求めてください。
(2) Bさんのポートフォリオの期待収益率を求めてください。
(3) Bさんのポートフォリオの標準偏差を求めてください。
(4) AさんとBさんのポートフォリオのリスクを比較し、分散投資の効果について考察してください。
問題2
ある投資信託は、国内株式A(期待収益率12%、標準偏差18%)と海外株式B(期待収益率10%、標準偏差15%)に投資をしています。 国内株式Aと海外株式Bの相関係数は0.5です。
この投資信託が、国内株式Aを70%、海外株式Bを30%の割合で保有している場合、ポートフォリオ全体の期待収益率と標準偏差を求めてください。
問題3
Cさんは、株式P(期待収益率10%、標準偏差15%)と株式Q(期待収益率8%、標準偏差12%)への投資を検討しています。 株式Pと株式Qの相関係数は-0.3です。
Cさんが、株式Pを40%、株式Qを60%の割合で保有する場合、ポートフォリオ全体の期待収益率と標準偏差を求めてください。
解答
問題1
(1)
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?