【財務・会計】正味現在価値法(NPV)
正味現在価値法(NPV)
正味現在価値法(Net Present Value method: NPV法)とは、投資プロジェクトの採算性を評価する際に用いられる手法の一つです。
将来にわたって発生するキャッシュフローを、現在の価値に割り引いて合計し、初期投資額と比較することで、そのプロジェクトに投資する価値があるかどうかを判断します。
NPVの計算式
NPVは、以下の式で計算されます。
NPV = ∑{CFt / (1 + r)^t} - 初期投資額
CFt:t年後のキャッシュフロー
r:割引率
t:期間(年)
NPV法の考え方
NPV法の根底にあるのは、「時間とお金の関係」です。1年後にもらえる100万円と、今すぐもらえる100万円では、価値が違います。なぜなら、今すぐもらった100万円は、銀行に預けたり、他の投資に回したりすることで、1年後には100万円以上の価値になる可能性があるからです。
この「時間価値」を考慮するために、将来に発生するキャッシュフローを「割引率」を用いて現在の価値に割り引きます。そして、割引後のキャッシュフローの合計と初期投資額を比較することで、プロジェクトの採算性を判断します。
NPV法による投資判断
NPVがプラスであれば、そのプロジェクトは投資する価値があると判断され、逆に、NPVがマイナスであれば、投資する価値はないと判断されます。
NPV > 0 : 投資を実行する
NPV < 0 : 投資を見送る
割引率について
割引率は、将来のキャッシュフローを現在価値⁽¹⁾に割り引くために用いられる利率です。一般的には、企業の資本コストや加重平均資本コスト⁽²⁾(WACC)などが用いられます。割引率の設定は、NPVの計算結果に大きな影響を与えるため、慎重に決定する必要があります。
1)現在価値:将来のある時点で得られるお金を、今の時点で受け取ったらいくらになるのかを計算した値のこと。
2)加重平均資本コスト(WACC):事業の資金調達にかかるコストを、それぞれの資金調達の割合で加重平均して算出したもの。詳細については、別記事でまとめます。
NPV法のメリット
時間価値を考慮: 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、時間価値を考慮した投資判断が可能になる。
プロジェクトの採算性を明確化: NPVを算出することで、プロジェクトの採算性を明確に示せる。
複数のプロジェクトの比較: 複数の投資プロジェクトがある場合、NPVを比較することで、どのプロジェクトに投資すべきかを判断できる。
NPV法のデメリット
割引率の設定が難しい: 割引率の設定はNPVの計算結果に大きく影響しますが、適切な割引率を決定することは容易ではない。
将来のキャッシュフローの予測が難しい: 将来のキャッシュフローを正確に予測することは困難であり、予測の誤差がNPVの計算結果に影響を与える可能性がある。
定性的な要素を考慮できない: NPV法は、数値化できる要素のみを考慮するため、定性的な要素(例:ブランドイメージ、従業員のモチベーションなど)を考慮することができない。
その他の投資評価手法との比較
NPV法以外にも、投資プロジェクトの評価には、以下の手法があります。
回収期間法: 初期投資額を回収するまでの期間を計算する。
内部収益率法(IRR法): NPVがゼロになる割引率を計算する。
利益回収率法: 投資額に対する利益の割合を計算する。
これらの手法とNPV法を併用することで、より多角的な視点から投資プロジェクトを評価することができます。
まとめ
NPV法は、時間価値を考慮した投資判断を可能にする、非常に有効な手法です。しかし、割引率の設定や将来のキャッシュフローの予測など、注意すべき点もあります。NPV法を正しく理解し、他の投資評価手法と併用することで、より適切な投資判断を行うことができます。
復習問題(計算問題)
問題1
ある企業が、新規事業への投資を検討しています。この新規事業の初期投資額は1,000万円で、将来5年間のキャッシュフローは以下の通りと予想されます。
1年後:300万円
2年後:400万円
3年後:500万円
4年後:400万円
5年後:300万円
割引率を10%として、この新規事業のNPVを計算し、投資すべきかどうか判断してください。
解答
問題1
NPVは、以下の式で計算されます。
NPV = ∑{CFt / (1 + r)^t} - 初期投資額
CFt:t年後のキャッシュフロー
r:割引率
t:期間(年)
この式に、問題文で与えられた数値を代入すると、以下のようになります。
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