【財務・会計】内部収益率法(IRR)
内部収益率(IRR)
今回は、” 内部収益率法(IRR) ”についてです。
内部収益率法(IRR:Internal Rate of Return)とは、投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、投資額の現在価値が等しくなる割引率のことです。簡単に言うと、「この投資から何%の利回りが期待できるか」を示す指標です。
より具体的には、正味現在価値(NPV:Net Present Value)がゼロになる割引率と言えます。NPVは、将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いた合計から投資額を差し引いたものです(ひとつ前の記事でまとめています)。IRRはそのNPVがゼロになる割引率を求めることで、投資の収益性を評価します。
グラフから明らかなように、割引率が高くなるにつれてNPVは減少しています。これは、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際に、高い割引率を使用すると、将来の価値がより大きく割り引かれるためです。
IRRは、投資によって得られる将来のキャッシュフローの現在価値と、初期投資額が等しくなる割引率です。つまり、IRRは投資の損益分岐点を示す割引率と言えます。
IRR > 資本コスト: IRRが資本コスト(資金調達にかかるコスト)よりも高ければ、その投資は採算が取れると判断されます。なぜなら、投資から得られる収益率が、資金調達コストを上回っているからです。
IRR < 資本コスト: IRRが資本コストよりも低ければ、その投資は採算が取れないと判断されます。
IRRの計算方法
IRRを求めるためには、以下の式を解く必要があります。
0 = -初期投資額 + Σ{(CFt / (1 + IRR)^t)}
ここで、
初期投資額:投資の最初に必要な費用
CFt:t年後のキャッシュフロー
IRR:内部収益率
この式はIRRについて解くのが難しいため、通常は以下の方法で求めます。
試行錯誤法: いくつかの割引率を試して、NPVがゼロに近づくように調整していく方法
エクセルなどの表計算ソフト: IRR関数(例:ExcelのIRR関数)を使用する方法(電卓での計算は非常に煩雑になる)
財務計算機: IRR計算機能を持つ計算機を使用する方法
IRRのメリット
直感的に理解しやすい: IRRはパーセンテージで示されるため、異なる投資案件の収益性を比較しやすい。
時間価値を考慮: 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算するため、お金の時間価値を考慮した評価が可能。
投資期間全体を通じた収益性を評価: 投資期間全体を通しての収益性を現在価値ベースで評価可能。
IRRのデメリット
複数解が存在する場合がある: キャッシュフローの符号が複数回変わる場合(例:投資期間中に大規模な追加投資が必要な場合)、IRRが複数個存在することがある。このような場合はIRRだけで投資判断を行うのは適切ではなく、NPV法を併用する必要がある。
再投資の仮定: IRRは、投資によって得られたキャッシュフローがIRRと同じ利率で再投資されることを前提としています。しかし、常にそのような再投資機会があるとは限りません。
規模の異なる投資の比較には不向き: IRRは割合で示すため、投資規模が大きく異なる案件を比較する際には、金額ベースの利益額を考慮する必要がある。
IRRとNPVの比較
IRRとNPVはどちらも投資評価に用いられる指標ですが、以下のような違いがあります。
指標の表し方: IRRは割合(%)で、NPVは金額で表します。
投資判断基準: IRRは資本コストと比較し、NPVはゼロ以上かどうかで判断します。
再投資の仮定: IRRはIRRと同じ利率での再投資を仮定するのに対し、NPVは資本コストでの再投資を仮定します。
一般的に、複数の投資案件を比較する場合には、NPVの方がより適切な指標と言われています。
まとめ
IRRは投資の収益性を評価するための重要な指標の一つですが、上記のようなメリット・デメリットを理解した上で、NPVなどの他の指標と組み合わせて使用することが重要です。特に、キャッシュフローの変動が大きい場合や、投資規模が大きく異なる案件を比較する場合には注意が必要です。
復習問題(計算問題)
問題1
ある企業は、新たな生産設備の導入を検討しています。この設備の導入には初期投資として1,000万円が必要で、導入後5年間、毎年250万円のキャッシュフローが見込まれています。この投資の内部収益率(IRR)を、以下の年金現価係数表を用いて求め、選択肢の中から最も適切なものを選びなさい。
ア. 6%~7%
イ. 7%~8%
ウ. 9%~10%
エ. 10%~12%
解答
問題1
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