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【企業経営理論#6】行動科学派(人間関係論・欲求階層説・二要因理論)


行動科学派

序論

今回は、”行動科学派”についてです。


1930年代以降に登場した行動科学派は、1920年代後半の世界恐慌や、大量生産による従業員の不満の高まりなどを受けて、人間関係や従業員のモチベーションを重視する学派として登場しました。




そのため、大量生産に合わせて発展してきた古典学派とは異なり、人間の行動や心理面に焦点を当てています。彼らは、従業員の動機づけや 満足度を高めることが、組織の生産性向上に繋がるという 人間関係論 に重きをおいたのです。





そもそも、古典学的な経営学派では、「人間は常に合理的で、自分の利益を最大化するように行動する」という前提に立って理論が構築されてきました。

しかし、実際には、人間は必ずしも合理的ではなく、感情や心理的なバイアスによる影響を受け、非合理的な行動をとることが多々あります。
行動科学派は、そのような人間の行動の複雑さを考慮することで、従業員の不満や焦燥感を解決しようと試みています。





行動科学派の特徴的な理論

  • 人間関係論(エルトン・メイヨー):組織における人間関係が、従業員のモチベーションや生産性に大きな影響を与えるという考え方。
    古典学派では、人間を機械の部品のように捉えていたが、人間関係論では、人間を社会的な存在としてとらえ、心理的な側面を重視することで、組織全体の活性化を図ることを提唱した。
    現代の人事管理や組織開発においても、人間関係論の考え方は広く取り入れられている。

    <人間関係論のポイント>

    • 従業員は経済的な報酬だけでなく、社会的な欲求も満たされることで、より高いモチベーションを持つ。

    • 組織の中には、正式な組織図や規則以外にも、従業員同士の非公式な人間関係やグループが存在し、組織全体の雰囲気や行動に影響を与える。

    • 指揮命令するだけのリーダーシップではなく、従業員とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築くリーダーシップが重要。



  • 欲求階層説(アブラハム・マズロー):人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つの欲求段階に分かれているとする考え。
    これらの欲求は、ピラミッドのように階層構造になっており、低次の欲求が満たされると、その次の欲求が高まる。

    • 生理的欲求:生命維持のための基本的な欲求(睡眠欲、食欲、性欲)

    • 安全欲求:危険や脅威から身を守り、安全・安心な状態を確保したいという欲求(安定した生活、健康、経済的な保障など)

    • 社会的欲求:他者と繋がり、愛情や友情を感じたいという欲求(家族、友人、恋人、その他コミュニティなど)

    • 承認欲求:他者から認められ、尊敬されたいという欲求(社会的な地位、名誉、業績など)

    • 自己実現欲求:自分の能力を最大限に発揮し、自己成長を遂げたいという欲求(創造性、自己表現、目標達成など)




  • 二要因理論(フレデリック・ハーズバーグ):仕事に対する満足要因と不満足要因は、それぞれ異なる要因であるとする考え方。
    ハーズバーグは、仕事内容や達成感などが仕事満足に繋がり、給与や労働条件などが仕事不満足に繋がるとした。

    1. 衛生要因(Hygiene factors)

      • 仕事の不満足に関わる要因。

      • これらの要因が満たされないと不満足を感じますが、満たされたとしても満足感には繋がらない

      • 例:給与、福利厚生、労働条件、人間関係、会社のポリシーなど

    2. 動機付け要因(Motivation factors)

      • 仕事の満足に関わる要因。

      • これらの要因が満たされると満足感を感じ、仕事へのモチベーションが高まります。

      • 例:達成感、承認、責任、成長、仕事の内容など





行動科学派の貢献

行動科学派は、人間の心理や行動を考慮することで、大量生産時代の組織運営において、従来の効率性のみを追求した管理手法の限界を批判し、組織運営に新たな視点を持ち込むことで従業員個人の人間性と組織の効率性を両立させることに貢献しました。



また、現代においても、これらの理論や考え方は重要な役割を果たしており、より働きがいのある、人間中心の組織づくりを目指していくうえで、欠かせないものとなっています。







復習問題

問題1:穴埋め問題

  1. 行動科学派は、( ① )年代以降に登場し、人間の( ② )や( ③ )を重視する学派です。

  2. 古典学派と異なり、行動科学派は( ④ )に重きをおいています。

問題2:○×問題

  1. 行動科学派は、大量生産時代の従業員の不満の高まりを受けて登場した。( ○ / × )

  2. 行動科学派は、「人間は常に合理的で、自分の利益を最大化するように行動する」という前提に立っている。( ○ / × )

問題3:組み合わせ問題

次の各理論と、その提唱者を正しく結び付けてください。


問題4:多肢選択問題

マズローの欲求階層説における5つの欲求を、低い階層から順番に並べてください。

a. 自己実現欲求 b. 社会的欲求 c. 安全欲求 d. 生理的欲求 e. 承認欲求

問題5:記述問題

  1. ハーズバーグの二要因理論において、衛生要因と動機付け要因の違いを説明してください。

問題6:穴埋め問題

  1. 人間関係論では、人間を( ① )として捉え、心理的な側面を重視することで、組織全体の活性化を図ることを提唱した。

  2. 組織の中には、正式な組織図や規則以外にも、従業員同士の( ② )な人間関係やグループが存在し、組織全体の雰囲気や行動に影響を与えます。

問題7:○×問題

  1. 行動科学派は、組織の効率性のみを追求する古典学派の考え方を完全に否定した。( ○ / × )

  2. 行動科学派の理論は、現代のマーケティングにも応用されている。( ○ / × )

問題8:記述問題

行動科学派の理論を、あなたの職場や日常生活でどのように活かせるか、具体的に説明してください。

問題9:多肢選択問題

以下のうち、衛生要因に該当するものをすべて選びなさい。

a. 仕事内容 b. 達成感 c. 給与 d. 労働条件 e. 人間関係

問題10:記述問題

人間関係論とは何か、あなたの言葉で説明してください。





解答

問題1

  1. ① 1930 ② 行動 ③ 心理

  2. ④ 人間関係論

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