【財務・会計】CAPM(資本資産価格形成モデル)
CAPM(資本資産価格モデル)
今回は、" CAPM(資本資産価格モデル) "についてです。
CAPMは、Capital Asset Pricing Modelの略で、資本資産価格モデルと略されます。
CAPMは、金融資産の期待収益率を算出するためのモデルです。1960年代にウィリアム・シャープらによって発表されました。
このモデルは、リスクフリーレート、市場リスクプレミアム、そして資産のベータ値という3つの要素を用いて、投資家が期待する収益率を計算します。
CAPMの計算式
とある証券の期待収益率は、以下のように表される。
期待収益率 = リスクフリーレート + β × (市場リスクプレミアム)
期待収益率: 将来のある時点で、ある資産から得られると期待される収益率
リスクフリーレート: 安全資産(例えば、国債)の収益率
β(ベータ係数): ある資産の価格変動が市場全体の価格変動に対してどれくらい連動するかを示す指標。市場平均と同じ動きならβ=1、市場平均より大きく変動すればβ>1、小さく変動すればβ<1となります。
市場リスクプレミアム: 市場ポートフォリオ(市場全体に投資した場合のポートフォリオ)の期待収益率からリスクフリーレートを差し引いたも
市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート
上記の期待収益率の計算式に、市場リスクプレミアムの式を代入すると以下のようになる。
期待収益率 = リスクフリーレート + β × (市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート)
さらに右辺のリスクフリーレートを左辺に移行させると、
期待収益率 - リスクフリーレート = β × (市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート)
期待収益率 - リスクフリーレートはリスクプレミアムと置き換えることができるため、さらに以下のように変形できる。
とある証券のリスクプレミアム = β × 市場リスクプレミアム
つまり、とある証券のリスクプレミアムは、市場のリスクプレミアムのβ係数に比例すると言える。
CAPMの仮定
CAPMは、以下の仮定に基づいて構築されています。
投資家は合理的である: 投資家は、より高い収益を求め、リスクを嫌う。
市場は効率的である: すべての情報は株価に反映される。
投資家はリスク回避的である: 同じ期待収益率であれば、リスクの低い投資を好む。
すべての投資家は同じ情報を持っている: すべての投資家は、同じ情報にアクセス可能。
投資家は自由に資金を借り入れ、貸し付けることができる: 無制限に、リスクフリーレートで資金を借り入れ、貸し付けることができる。
市場には多数の投資家がいる: 個々の投資家の行動は市場に影響を与えない。
CAPMのメリット
シンプルで理解しやすい: 3つの要素で期待収益率を計算できるため、比較的理解しやすいモデルである。
リスクとリターンの関係を明確化: リスクの高い資産ほど高い収益率が期待されるという関係を明確に示している。
投資判断の指標: 投資家はCAPMを用いて、投資の意思決定を行うことができる。
CAPMのデメリット(限界)
現実の市場とは異なる仮定: CAPMは、いくつかの仮定に基づいているが、現実の市場はこれらの仮定を満たしていない場合がある。
ベータ値の推定: ベータ値は過去のデータに基づいて推定されるため、将来の値を正確に予測できない可能性がある。
市場リスクプレミアムの推定: 市場リスクプレミアムも将来の値を正確に予測することが難しい。
他のリスク要因: CAPMは市場リスクのみを考慮しており、個別企業特有のリスクなどは考慮していない。
より深く理解するために
CAPMについてより深く理解するためには、以下のキーワードを調べてみることをおすすめします。
効率的フロンティア
資本市場線 (CML)
証券市場線 (SML)
シャープレシオ
ファーマ=フレンチの3ファクターモデル
まとめ
CAPMは金融において非常に重要な概念です。しっかりと理解しておけば、投資判断や企業分析に役立ちます。上記の説明が、CAPMの理解に役立てば幸いです。
復習問題(計算問題)
問題1
ある証券Aのβ係数が1.2、市場ポートフォリオの期待収益率が8%、無リスク利子率が2%であるとします。CAPMを用いて、証券Aの期待収益率を計算してください。
問題2
証券Bのβ係数が0.8、市場ポートフォリオの期待収益率が10%、無リスク利子率が3%であるとします。CAPMを用いて、証券Bの期待収益率を計算してください。
解答
問題1
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