【企業経営理論#12】5フォース分析
5フォース分析
今回は、前回の3C分析に続いて、ミクロ環境を分析するためのフレームワーク” 5フォース分析 ”についてです。
5フォース分析は、マイケル・ポーターが提唱したフレームワークで、
業界の競争構造を分析し、収益性に影響を与える要因を明らかにするものです。
企業は、5フォース分析を行うことで、業界の魅力度を評価し、自社の競争戦略を策定することができます。
5つの競争要因
新規参入の脅威:新規企業が業界に参入しやすいかどうか。参入障壁が低い業界では、新規参入が増え、競争が激化する可能性がある。
参入障壁:
規模の経済
顧客のスイッチングコスト⁽¹⁾
政府の規制
必要な資本
ブランド力
差別化された製品/サービス
流通チャネルへのアクセス
1)スイッチングコスト:ある製品やサービスから、別の製品やサービスに乗り換える際に、顧客が負担しなければならないコストのこと。金銭的なものだけでなく、時間的・精神的なコストも含まれる
買い手の交渉力:買い手が価格や条件に関して交渉力を持っているかどうか。買い手の交渉力が強い業界では、価格を引き下げられたり、有利な条件を要求されたりする可能性があり、収益性が低下する傾向がある。
買い手の交渉力が強くなる条件:
買い手の数が少ない
買い手の購入量が多い
買い手のスイッチングコストが低い
製品が標準化されている
供給者の交渉力:供給者が、価格や条件に関して交渉力を持っているかどうか。供給者の交渉力が強い業界では、原材料や部品の価格を引き上げられたり、不利な条件を要求されたりする可能性があり、収益性が低下する傾向がある。
供給者の交渉力が強くなる条件:
供給者の数が少ない
供給する製品/サービスが差別化されている
買い手のスイッチングコストが高い
代替品の脅威:顧客が、既存製品・サービスの代わりに利用できる代替品があるかどうか。代替品の脅威が高い業界では、顧客が代替品に流れてしまい、収益性が低下する可能性がある。
代替品:
異なる技術に基づく製品/サービス
異なるニーズを満たす製品/サービス
価格が安い製品/サービス
性能が高い製品/サービス
既存企業間の競合:業界内の既存企業同士の競争の激しさ。競合が多い、市場成長率が低い、製品差別化が難しいなどの状況では、競争が激化し、収益性が低下する傾向がある。
例:
価格競争
広告合戦
新製品開発競争
顧客サービスの充実
5フォース分析の活用
業界分析 / 業界の魅力度評価:
業界の競争構造を理解し、その業界に参入すべきか、撤退すべきか、あるいは現状維持すべきかを判断するために活用する。
各競争要因の強さを分析することで、業界全体の収益性や、その業界で事業を行う上でのリスクや魅力度を評価する。
例えば、新規参入障壁が高く、買い手や供給者の交渉力が弱く、代替品の脅威も低い業界は、魅力度が高いと判断できる。
競争戦略策定:
5つの競争要因の分析により、競争優位を築くための戦略を策定する。
例えば、買い手の交渉力が強い業界では、差別化戦略によって顧客ロイヤリティを高めることが重要になったり、
また、供給者の交渉力が強い業界では、複数の供給元を確保したり、代替材料を開発したりするなどの対策が必要になる。
新規事業:
新規事業に参入する際の実現可能性の調査に活用する。
新規参入の脅威、既存企業との競争、代替品の脅威などを分析することで、新規事業の成功可能性を評価する。
例えば、新規参入障壁が低い業界では、差別化された製品やサービスを提供しなければ、競争優位を築くことができない。
M&A:
M&Aの対象企業を評価する際に活用する。
対象企業が属する業界の競争構造や、対象企業の競争力を分析することで、M&Aのメリットやリスクを評価する。
例えば、競争の激しい業界に属する企業を買収する場合、シナジー効果による競争力強化が期待できる一方で、統合に伴うリスクも高くなるなど。
事業の改善:
既存事業の収益性向上や競争力強化。
5つの競争要因を分析することで、事業の抱える課題や改善点を明らかにし、具体的な対策を検討する。
例えば、競合との価格競争が激化している場合は、コスト削減や差別化戦略によって収益性を改善するなど。
投資判断
投資家にとっては、投資先企業の評価に活用できる。
投資先企業が属する業界の競争構造や、投資先企業の競争力を分析することで、投資のリスクやリターンを評価する。
5フォース分析の手順
分析対象の定義: どの業界を分析するかを明確にする。
情報収集: 各競争要因に関する情報を収集する。
要因の分析: 各競争要因の強さを分析する。
戦略への反映: 分析結果を踏まえ、競争戦略を策定する。
5フォース分析のポイント
定量的な分析: 可能な限り、数値データなどを用いて定量的な分析を行い、客観性を保証する。
業界の定義: 分析対象とする業界を明確に定義する。
時間軸: 現在の状況だけでなく、将来の変化を予測する。
戦略との連携: 5フォース分析の結果を、具体的な戦略に落とし込む。
まとめ
今回は、5フォース分析についてでした。
ここまでは外部環境分析についてでしたが、
次回は、外部環境と合わせて内部環境についても分析する” SWOT分析 ”についてです。
復習問題
問題1:穴埋め問題
5フォース分析は、( ① )が提唱したフレームワーク。
5フォース分析は、業界の( ② )を分析し、収益性に影響を与える要因を明らかにする。
5つの競争要因とは、新規参入の脅威、( ③ )の交渉力、( ④ )の交渉力、代替品の脅威、( ⑤ )。
参入障壁が高い業界では、新規参入が( ⑥ )く、競争が( ⑦ )化する可能性がある。
問題2:○×問題
5フォース分析は、マクロ環境を分析するためのフレームワークである。( ○ / × )
新規参入の脅威が高い業界は、収益性が高い傾向がある。( ○ / × )
買い手のスイッチングコストが高いほど、買い手の交渉力は強くなる。( ○ / × )
供給者の数が少ないほど、供給者の交渉力は強くなる。( ○ / × )
代替品の脅威が高い業界は、収益性が低い傾向がある。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次の5つの競争要因と、具体的な例を正しく結び付けてください。
問題4:記述問題
5フォース分析を行う目的を3つ挙げてください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、新規参入の脅威を高める要因として適切なものをすべて選びなさい。
a. 規模の経済 b. 顧客のスイッチングコストが高い c. 政府の規制が緩い d. 必要な資本が少ない e. ブランド力が弱い
問題6:多肢選択問題
以下のうち、買い手の交渉力を強める要因として適切なものをすべて選びなさい。
a. 買い手の数が少ない b. 買い手の購入量が多い c. 買い手のスイッチングコストが低い d. 製品が差別化されている e. 供給者の数が少ない
問題7:多肢選択問題
以下のうち、供給者の交渉力を強める要因として適切なものをすべて選びなさい。
a. 供給者の数が少ない b. 供給する製品が差別化されている c. 買い手のスイッチングコストが高い d. 代替品の脅威が高い e. 既存企業間の競合が激しい
問題8:多肢選択問題
以下のうち、代替品の脅威を高める要因として適切なものをすべて選びなさい。
a. 異なる技術に基づく製品が存在する b. 価格が安い製品が存在する c. 性能が高い製品が存在する d. 顧客のスイッチングコストが高い e. 既存企業間の競合が激しい
問題9:記述問題
あるコンビニエンスストアが、5フォース分析を行う際に、どのような点に注意すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題10:記述問題
あるスマートフォンメーカーが、5フォース分析を行う際に、どのような情報を収集すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
解答
問題1
① マイケル・ポーター
② 競争構造
③ 買い手 ④ 供給者 ⑤ 既存企業間の競合
⑥ 少な ⑦ 鈍化
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