【企業経営理論#10】PEST分析(PESTLE分析・STEEP分析)
PEST分析
今回は、マクロ環境分析の一つ、” PEST分析 ”についてです。
PEST分析は、企業の外部環境を分析する際に用いられるフレームワークの一つで、マクロ環境を政治 (Politics)、経済 (Economy)、社会 (Society)、技術 (Technology)の4つの要素に分類して分析します。
企業は、PEST分析を行うことで、自社ではコントロールできない外部環境の変化を把握し、事業に与える影響を予測することができます。
各要素の詳細
Politics (政治)
政治体制、政党、政府の政策、法規制、国際関係、法律の改正、政治的な安定性、規制緩和、補助金制度、税制、貿易政策など
例:
消費税率の変更
環境規制の強化
政治的な不安定による海外事業のリスク
Economy (経済)
経済成長率、景気動向、金利、為替レート、インフレ率、失業率、消費支出、投資動向、可処分所得、株価、原油価格など
例:
景気後退による消費の冷え込み
円高による輸出の減少
金利上昇による資金調達コストの増加
Society (社会)
人口動態(人口増加率、年齢構成、世帯構造など)、ライフスタイル、価値観、文化、社会トレンド、教育レベル、健康意識、環境意識、少子高齢化、都市化、情報化、グローバル化など
例:
健康志向の高まりによる健康食品の需要増加
環境意識の高まりによるエコカーの普及
少子高齢化による労働力不足
Technology (技術)
技術革新、IT、AI、IoT、バイオテクノロジー、新素材、エネルギー技術、研究開発動向、特許、インフラ整備、デジタル化、自動化など
例:
AI技術の進歩による自動運転車の開発
スマートフォンの普及によるモバイル決済の増加
インターネット通販の普及による小売業の衰退
PEST分析の目的
機会と脅威の特定:外部環境の変化が、企業にとって機会となるのか、脅威となるのかを判断する。
戦略策定:分析結果を踏まえ、機会を活かし、脅威を回避するための戦略を策定する。
リスク管理:将来起こりうるリスクを予測し、事前に対策を検討することで、リスクを最小限に抑える。
意思決定:経営判断に必要な情報を提供し、より的確な意思決定の支援をする。
PEST分析の手順
分析対象の明確化:どの事業や製品を対象に分析するかを明確にする。
情報収集:各要素に関する情報を、様々な情報源から収集。
要因の整理:収集した情報を整理し、各要素に分類。
影響の分析:各要因が、事業にどのような影響を与えるかを分析。
戦略への反映:分析結果を踏まえ、事業戦略や市場戦略を策定。
PEST分析の派生(PESTLE分析・STEEP分析)
PEST分析からさらに視点を広げたPESTLE分析・STEEP分析というものもあります。
これらの分析手法は、PEST分析の4つの要素に加え、法律 (Legal) や 環境 (Environment)、 倫理 (Ethical) といった要素を加えることで、より多角的な視点からマクロ環境を分析することを可能にします。
PESTLE分析
PESTLE分析は、PEST分析にLegal(法律)とEnvironment(環境)の2つの要素を加えたフレームワークです。
Legal (法律)
既存の法律、新たな法律、法規制の変更、訴訟リスク、知的財産権、国際法、労働法、消費者保護法など
例:
個人情報保護法の改正
労働基準法の改正
特許取得の状況
Environment (環境)
環境問題、気候変動、資源枯渇、廃棄物処理、再生可能エネルギー、環境規制、環境保護意識など
例:
地球温暖化による気候変動
水資源の枯渇
環境規制の強化
STEEP分析
STEEP分析は、PEST分析にEthical(倫理)の要素を加えたフレームワークです。
Ethical (倫理)
企業倫理、社会規範、倫理的な行動、CSR (企業の社会的責任)、コンプライアンス、人権、公正な取引、透明性など
例:
企業の倫理綱領
業界の行動規範
消費者の倫理観
PESTLE分析・STEEP分析のメリット
分析の網羅性:PEST分析よりも、より多くの要素を考慮することで、分析の網羅性を高めることができる。
環境変化への対応:法律、環境、倫理といった要素を分析することで、より社会の変化に対応した戦略の策定に役立つ。
リスク管理:法的リスクや環境リスク、倫理的なリスクを事前に明確にし、対策を検討することができる。
長期的な視点:長期的な視点で、持続可能な社会の実現に向けた戦略を策定できる。
PESTLE分析やSTEEP分析は、PEST分析を発展させたフレームワークであり、より多角的な視点からマクロ環境を分析することができます。
これらの分析手法を活用することで、企業は社会の変化をより的確に捉え、持続的な成長を実現するための戦略を策定することができます。
まとめ
今回は、マクロ環境を分析するためのフレームワーク”PEST分析”についてまとめました。
PEST分析は過去のデータだけでなく、将来のトレンドを予測することが重要であり、可能な限り、数値データなどを用いて定量的な分析を行うことで、より客観的な分析結果を得ることができます。
それでは次回は、ミクロ環境分析のフレームワークについてです。
復習問題
問題1:穴埋め問題
PEST分析は、企業の( ① )環境を分析する際に用いられるフレームワーク。
PEST分析は、マクロ環境を( ② )、( ③ )、( ④ )、( ⑤ )の4つの要素に分類して分析する。
PESTLE分析は、PEST分析に( ⑥ )と( ⑦ )の2つの要素を加えたフレームワークです。
STEEP分析は、PEST分析に( ⑧ )の要素を加えたフレームワークです。
問題2:正誤問題
PEST分析は、企業がコントロールできる内部環境を分析する。( ○ / × )
消費税率の変更は、PEST分析のEconomy(経済)の要素に該当する。( ○ / × )
AI技術の進歩は、PEST分析のTechnology(技術)の要素に該当する。( ○ / × )
PEST分析では、将来のトレンドを予測する必要はない。( ○ / × )
PESTLE分析やSTEEP分析は、PEST分析よりも多くの要素を考慮する。( ○ / × )
問題3:組み合わせ問題
次のPEST分析の要素と、具体的な例を正しく結び付けてください。
問題4:記述問題
PEST分析を行う目的を3つ挙げてください。
PEST分析の手順を説明してください。
PESTLE分析やSTEEP分析を行うメリットを説明してください。
問題5:多肢選択問題
以下のうち、PEST分析のPolitics(政治)の要素に該当するものをすべて選びなさい。
a. 政治体制 b. 法規制 c. 経済成長率 d. 人口動態 e. 技術革新
問題6:多肢選択問題
以下のうち、PEST分析のEconomy(経済)の要素に該当するものをすべて選びなさい。
a. 金利 b. 為替レート c. ライフスタイル d. 環境問題 e. 倫理的な行動
問題7:多肢選択問題
以下のうち、PEST分析のSociety(社会)の要素に該当するものをすべて選びなさい。
a. 政治的な安定性 b. インフレ率 c. 人口動態 d. 価値観 e. 教育レベル
問題8:多肢選択問題
以下のうち、PEST分析のTechnology(技術)の要素に該当するものをすべて選びなさい。
a. 貿易政策 b. 可処分所得 c. 技術革新 d. 新素材 e. インフラ整備
問題9:記述問題
ある飲食店が、PEST分析を行う際に、どのような点に注意すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
問題10:記述問題
ある製造業が、PESTLE分析を行う際に、どのような情報を収集すべきでしょうか? 具体的な例を挙げて説明してください。
解答
問題1
① 外部
② 政治 ③ 経済 ④ 社会 ⑤ 技術
⑥ 法律 ⑦ 環境
⑧ 倫理
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