『まほり』高田大介#完

先日#1 を投稿したばかりで、もう完結したんかい!のツッコミは無しで。。。

上巻)2024/10月中旬 開始。
下巻)2024/11月初頭 開始。

慣れない文体とテーマに苦戦した結果、全編読み通すまでやや2か月かかりました。

下巻のあらすじと登場人物も載せておきます。

まほりとは?蛇の目紋に秘められた忌まわしき因習が今、明かされる――
主人公裕は、膨大な古文書のデータの中から上州に伝わる子間引きの風習や毛利神社や琴平神社の社名に注目し、資料と格闘する。裕がそこまでするには理由があった。父が決して語らなかった母親の系譜に関する手がかりを見つけるためでもあったのだ。大した成果が得られぬまま、やがて夏も終わりに近づくころ、巣守郷を独自調査していた少年・淳が警察に補導されてしまう。郷に監禁された少女を救おうとする淳と、裕の母親の出自を探す道が交差する時――。宮部みゆき、東雅夫、東えりか、杉江松絶賛の、前代未聞の伝奇ホラーミステリーにして青春ラブストーリー! 感動のラストまで目が離せない、超弩級エンターテインメント。

『KADOKAWAオフィシャルサイト』より

登場人物

・勝山裕… 都内の大学に通う四年生。香織と同郷。
・飯山香織… 裕の小中学生時代の同級生。地元の図書館で司書のバイトをしている。
・朝倉… 学芸員。歴史学に明るく調査の一助となる人物。
・古賀… 学芸員。歴史学に明るく調査の一助となる人物。

・長谷川淳… 香織と同じ村に住む小学生。

主に上記の人物が押さえられていれば大丈夫です。


感想

ネタばれなし

上巻を読み終え、ある程度ペースが掴めた。と思っていたが、全編を通して冗長な文章に疲弊した観は否めない。
だが「ここは読み流しても大丈夫そうな文だな」がわかるようにはなった。

何がどこまで史実に基づいているのか、あるいはどこからが創作なのか、まったくわからないほど参考資料や白文にリアリティがあった。それをわずか二、三か月で書き上げたそうだ…。

登場人物は上巻から変わらず。
ただし、キーパーソンがひとり。
桐生朗言語学者です。この人と裕が電話で会話をするのですが、ここから一気に謎が解けあとは最後までページをめくる手が止まらない。

一方、淳は「いち(市子)」と呼ばれる少女を救出奪還すべく再三巣守郷(限界集落)へ赴き奔走するが敢え無く失敗、村へ強制連行される。

タイトルの”まほり”とは、漢字をあてると元来”末保利毛利)”であったのではないかと裕は推察します。
裕の出自と関係がありそう、とくに母親の得体が知れない

”まほり”とは果たして何を指すのか?
そして”市子”の正体と彼女の存在をひた隠す巣守郷との関係は?

上記ふたつが主軸となる謎です。


以下、ネタばれあり

・禁足域で行われる祭儀の真相
・まほりと蛇の目の正体、関係性
・裕の母親の正体
について言及していきます。

禁足域で行われる祭儀の真相
祠という名の牢に市子(片眼の巫女の呼び名)を閉じ込め、神の返り子として扱う。「いち」とは、あくまでも便宜上の呼び名であり、戸籍上の名前ではないです。(そもそも無戸籍)

まほりと蛇の目の正体、関係性
「目堀り」の変格仮名だった。集落の神事において最重要人材である片眼の巫女再生産のため行われる。余りにも凄惨な行為であるとの認識が当時からあったからこそ、この部分のみ漢字表記が避けられていた。

裕の母親の正体
上記を踏まえて考えると、行きつく真相はひとつ。
母親は毛利宮の目占斎子(めうらいご)=片眼の巫女だった。
目占斎子は役職の「いち」としか呼ばれず名を持たないので、代用したのが「毛利」だった。

最終章(形見)で、別れ際、裕のもつ御守りを見てそれは何かと香織が訊く場面がある。

石のような材質に、蛇の目を想起する模様が描かれた貝のような形をしたものが入っていた。
香織は思わず「綺麗…」と言ってしまうが、裕は「母の形見(=義眼)だ」と一言。
これこそが母親の正体を簡潔に言い表したラストです。
目占斎子であった母親の片目(義眼)を形見として肌身離さず持っていた裕。
さて彼はいつから母親の正体に気づいていたのでしょう…。