経済学研究科vs公共政策
筆者は大学四年生の時、京都大学院経済学研究科と東京大学院経済学研究科の2校を受けた。京大の経済学研究科は面接を免除されて合格した。東大の経済学研究科は当初は受けるつもりがなく、当時の指導教員に京大のみの受験を考えていると
申し上げたら、一校のみ受けるのはあまりにリスキーだから他も受けてくださいと言われたので、東大院も受けた。受けるのが東大院ではあまりリスク回避になってない気もするが、無事に両校とも合格を頂いた。指導教員には京大院に行く旨を伝えていたが、また2年も京都で過ごすのかと考えると、妙に東大院に惹かれるようになった。京都以外での生活、特に東京での生活という誘惑に抗えず、指導教員が京大に留まるよう勧めたにも関わらず、結局は東大院に行ってしまった。指導教員には申し訳なく思っているし、そのことを今でも後悔している。というか、経済学研究科に行ったことを後悔している。大半の経済学研究科の学生は、公共政策大学院に行くべきだったのである。
以前筆者は、京大法や文一はコスパが悪いので、法曹界に進みたいとか法律の勉強がしたいとかじゃない限りは、文ニや京大経済に行くように勧めた。特に京大経済はかなり楽(正直いって私文より楽)なので、別に弁護士や裁判官、検察官になるつもりないけど、京大法の方が聞こえがいいからとかいう偏差値に染まった受験生が京大法に行くのは絶対にやめた方がいいと思っている。そして同じような理由から、経済学研究科よりも公共政策大学院に行くべきだと思っている。特に東大の学生はそうである。以下でその理由を述べる。
① 必修科目オールAという無理ゲー
東大経済学研究科は、他の研究科と違い、博士後期に行きたければ、六つの必修科目でオールAを取らなくてはいけない。この六つとは、ミクロI,IIマクロI,II,計量I,IIである。もしAが取れなければ追試を受け、追試も落ちてしまったらM2でもう一度受ける。つまり計3回のチャンスがある。しかし、この六つの科目でAを取ることは、数理的素質の低い者にとってかなり難しい。学部時代のミクロマクロはなんだったんだろうと思うぐらいに、大学院のミクロマクロは難易度が上がる。学部のミクロマクロはせいぜい微分ぐらいだが、大学院になると、途端に難易度が上がる。小6まで算数をやっていた児童にいきなり高一数学をやらせるぐらい、難易度のギャップを感じた。筆者はもともと数学が得意科目ではなかったが、大学院での勉強を学部レベルの延長線上だとなぜか勘違いしてしまったので、痛い目にあった。そして、何も筆者に限った話ではなく、博士後期への進学を希望する学生で、結局半ば諦めて民間就職する者は多くいる。研究職に就きたいと考えている経済学研究科の受験生は、今一度自分に適性があるのかを、大学院のミクロマクロ計量の授業に顔を出して聞いてみるなどして、慎重に判断したほうがいい。ちなみに、筆者が必修科目を受けてた時にお世話になってたチューター2人の出身は、東大理学部数学科と東京理科大学である。経済学研究科において理系のバックグラウンドの者は予後がいいが、ど文系は予後が悪い。
② 公共政策大学院の存在
筆者は必修科目を落としてしまったので、M2の時に公共政策で代替した。ミクロマクロ計量のうち、2つは公共政策で代替できるという制度が東大の経済学研究科には存在する。まぁ、正直いって筆者みたいな落ちこぼれを救済するための措置である。その時の衝撃は、今でも覚えている。経済学研究科の難易度と、天と地の差があったのだ。小学生の算数と線形代数くらい差があると言うと、少し言い過ぎかもしれないが、けどそれくらい差があると言いたくなるほど差がある。そのくせして公共政策は卒論がない。東大の経済学研究科が文一なら、公共政策は京大経済のようなものであった。そのくせして就活は東大経済学研究科よりいい。おそらく、①公共政策は時間が豊富にあるため、就活に十分な時間と対策をあてられる②経済学研究科は研究者志向のやつらの集まりで、挫折して民間就職に切り替えたものも多いので、就職実績が悪いのは容易に想像できる。他方で公共政策は初めから民間就職への意識が強く、研究者気質ではない俗的なコミュ強のやつが多い。③経済学研究科の学びは公共政策と比べてだいぶアカデミック偏重なので、そもそも文系総合就職と相性が悪い。の三つが原因だと思われる。
③ 学生の雰囲気の違い
経済学研究科の学生は、なんか暗い。やはり研究者気質が原因だろう。上述したように、筆者はミクロマクロ計量のうち、2つを公共政策で代替した為に公共政策の学生とも関わったが、話してて楽しかったり話が合うのは公共政策の方に多かった。京大は同志社と非常に近く、同志社の友達が筆者は何人かいたが、公共政策の学生の雰囲気は同志社を思い起こさせた。公共政策に行っとけば良かった、そうすれば学生生活をエンジョイできたのに、と今でも後悔している。
筆者が上述した公共政策と経済学研究科の関係はなにも東大に限った話ではなく、他の大学でも広く一般的に見られる現象であると考えられる。筆者は教授などの研究職に就こうかなという思いが頭の片隅にあったので、経済学研究科に生半可な覚悟で入ってしまった。研究者志望で経済学研究科への入学を考える者は、今一度自分に適性があるかを、大学3年や4年のうちから大学院のミクロマクロ計量の授業を聞いてみて判断した方がいいように思う。そして学歴ロンダしたいと考えている者は、悪いことは言わないから公共政策に行った方がいい。