『昭和百年少女』感想
10月30日に発売されましたアーバンギャルドの "トリプルA面シングル”『昭和百年少女』の感想をここにしたためていきたいと思います。
1.デザイン
このジャケットデザインが発表されたとき真っ先に思ったことは「ワクワクする…!」でした。リボンにフリル、宝石にビーズ、小さな香水瓶に口紅……私はキラキラしたものや可愛いものが柄にもなく好きなので、見ていて非常にワクワクしました。私の中の女児の血が騒ぐデザインです。
そして容子さんが美しすぎる……。伏せた目から送られる、この世を憂いているような視線が艶めかしく美しい……。もう絵画でしょこれ……。そしてこれ、ブックレットを広げたときのデザインも大好きなんです。1枚ずつ容子さんの視線の向きが変わっていっていて、なんだか映画のフィルムを見ているよう。このデザインもアルバムのレトロな雰囲気を醸し出すのに一役も二役も買っているなと思いました。盤のデザインもとても素敵です。真ん中に血の丸が配置され、レコード盤のような配色になっている。アルバムの世界観とよくマッチしていると思いました。
2.昭和百年少女
ここからは曲の感想!1曲目はタイトル曲!冒頭のストリングスがなかなか不穏な雰囲気だったので暗い雰囲気の曲なのかなと聴き始めは思いましたが、すぐに裏切られるその予想。「流行り病 マジヤバい 少女です」の直後からポップでキラキラでアッパーなナンバーに変貌!これライブで聴いたら絶対楽しい曲だ……スタンディングライブで縦ノリでこの曲聴きたい……と、もう来週に迫った(!?)「昭和九十九年」ツアーがより一層楽しみになりました。
また、この曲からはすごく生命力を感じました。非常に安直な表現をすることを許していただけるならば、この曲からは「ギャル」を感じる。誰にも「あるべき姿」なんて押し付けられてやらないし、消費なんかされてやらないし、私の生きる時代は私が作る。そう言って群衆の先頭を颯爽と歩いていく少女が見えるようで。
そして途中で何度か挟まるサイレンの音がとてもいい味を出していると思いましたし、私の中の「サイレンの音が入っている曲にハズレ曲ない説」がさらに強化されました。(例:『サイレン*Siren*』/平沢進、『新宿騒乱』/新宿ゲバルト)あと、ベースがめちゃくちゃかっこいい。
そしてこれは完全に超個人的な話なのですが太宰オタクかつ『斜陽』に性癖狂わされている人間として「斜陽族」が歌詞に出てくるのがとてもうれしいです。斜陽族って日常でなかなか使う機会ない言葉だし(それはまあそうか)、知ってる人もあんまいないんですよね。これを機に広まれ斜陽族。
3.愛、アムネシア
2曲目はアーバンギャルドのアニソン!アッパーな昭和百年少女とは雰囲気ががらりと変わってこの曲はバラード。この曲は私は鬱フェス2024ではじめてフルで聴き、その美しさと容子さんの歌唱力の高さに圧倒された記憶がくっきりと残っている曲です。
すごく切ない1曲なんだけど聴いていると不思議と穏やかな気持ちになるし、心にすっと浸透していく感覚があります。
私はこの人のことずっと好きだろうな、と思った人のこと、気づいたらすっかり好きじゃなくなっていることがある。この美しい記憶は一生忘れない!と思っていても、ふと振り返るとすっかりその記憶は色褪せてしまっていたりする。そんな自分のことを、そんな「人間という生き物」のことを薄情だなとか思っても、私は生きているし明日はやってくる。だけど、その「薄情さ」があるからこそ、人間は悲しみに打ちひしがれてしまわず、今日まで滅びずに生きてこられたのかもしれない。聴いていて、ふとそんなことを思いました。的外れなことを言っていたらごめんなさい、というか、たぶん言ってる。
4.普通の恋
……最初に聴いた時の最初の感想、言ってもいいですか?「こんな天馬さん、私知らないんだけど…!!」でした。個人的に天馬さんの歌は聴いてると、両肩掴まれて目を奥の奥まで見られていろんなことを問いかけられているような気持ちになることが多いんです、声からもその言葉からも、すごく強い力を感じることが多い。でもこの普通の恋の天馬さんはいつもより優しくて甘い声で、だけど歌い方は爽やかで、こちらに微笑みかけながら歌っている姿が見えるようで……こんな一面もあるなんて……………こんなん、こんなん私天馬さんのことますます好きになっちゃうじゃん……!!!と思いました(ギャップによわよわ人類)。そして、原曲の普通の恋を聴いている時から「この曲に容子さんの声絶対に合うだろうな……」と思っていたのですが、予想通りめちゃくちゃ合っていました。容子さんの声質が岩澤さんのそれとよく似ているというのもあると思いますし、この普通の恋という曲に出てくる「彼女」のキャラクターと容子さんの声がすごくマッチしている、というのも大いにあると個人的には思うのですが、とにかく容子さんと普通の恋の相性、よすぎると思う。
そしてテクノアレンジがとても素敵で……!!個人的にはすごく「平成の洋楽」を感じました。私が一番ラジオを聴いていた2009〜2012年にかけての頃、ラジオから流れていた洋楽はああいうサウンドだったと記憶している。勝手に少し懐かしい気持ちになりました。
そして普通の恋はすごく好きな歌詞があってそれは「11歳でドストエフスキー 15歳でエヴァンゲリオン 最悪のコースに溺れていたの」って歌詞なんですけど、ここからちょっと滲み出している(と私が勝手に感じている)自嘲が好き。私は11歳でドストエフスキーにハマったり15歳でエヴァンゲリオンにハマったりはしてないけど14歳で太宰治にのめり込んだりはしてて、個人的にはこれも最悪のコースの1つだなと思いながら当時を振り返っているので(後悔はしてないけど)、この自嘲には勝手に共鳴してしまう。リストカッターの彼は私みたいな人間なんかに共鳴なんかされたくないと思うけど。ごめんね。
そして自分のことをうまく愛せない、自分のことをうまく大切にできない人間にとって、「普通の恋」ってとても難しいことだと思うんです。だからこの曲を聴くたび、「普通の恋」に出会えたこのリストカッターの彼とチョコレート依存症の彼女が幸せになれますように……!!と心から祈っています。
5.最後に
アーバンギャルドの新譜の発売にリアルタイムで立ち会うのはこの『昭和百年少女』が初めてだったのですが、立ち会えてとても嬉しかったです。このような素敵な作品をこの世に生み出してくださり本当にありがとうございます。大切に聴きます。そして聴き込んで「昭和九十九年」ツアー参戦します!ツアーもとても楽しみです。これからも応援しています!アーバンギャルド大好き〜〜!!