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プレゼンの極意とは!!(前編)対談者:長崎県立大学シーボルト校教授 金谷一朗様

今回のヒューマントークは、ヒューマントークVOL.35(2019年)の金谷一郎様との対談記事《前編》をお送りいたします!

世界中の著名人によるさまざまな講演会を開催しているTED(Technology Entertainment Design)。アップルの生みの親であるスティーブ・ジョブズさんなども登壇したことのある講演会としても有名ですが、講演会のプレゼンは最大でも18分間が原則だそうです。

今回のヒューマントークでは、そんなTEDから独立して世界各地でローカルイベントを展開する「TEDx」を長崎県西海市の無人島で開催した金谷一郎様との対談です🎵

前編では、金谷さまが長崎に来るきっかけともなった「エジプトへの想い」、そして「TEDxSaikai」を開催する経緯についてお送りいたしますので、ぜひご覧ください🥰

※タイトルにある『プレゼンの極意』については後編で…
※2019年の記事を原文のままで記載しております。

プレゼンの極意とは!!

今回は、長崎県立大学 教授・TEDxSaikai 創始者 金谷一朗氏にヒューマントークにご登場いただきました。

長崎県立大学シーボルト校 教授 金谷一朗様
ヒューマングループ 会長 内海和憲(文中:内海)
ヒューマングループ 代表取締役 内海梨恵子(文中:内海リ)

内海:今日はお時間いただき、本当にありがとうございます。昨年のTEDxSaikaiで先生とはご縁を頂いたのですが、まずは先生のプロフィールと長崎に来られたきっかけを教えて下さい。

金谷:よろしくお願いいたします。出身は大阪でして、5年前に長崎に来ました。もともと5年前、実はエジプトに引っ越そうと思っていたんです。世界遺産がある場所に住もうと思って。ただ、エジプトで革命が起きており情勢的にも厳しくて断念しました。
 そのタイミングでシーボルト大学が県立大学になり、理工系の学部を作るので、理工系の教員がほしいということで募集がありました。長崎が世界遺産にチャレンジしているところだったので、「お!これはお手伝いできるかな」と思って来ました。私は世界遺産をコンピューターの力を使って保存する仕事をしていたので、長崎には世界遺産認定の一年前に来ることができ、とてもラッキーだったと思います。時々、エジプトにいっていいか?としかっり確認してから決めました。

内海:先生の授業ではやはりエジプトのことも扱われるのですか?

金谷:理工系の学部なので、まずはコンピュータ—を中心に。4年になるとエジプトのことも少し行います。ただ、意外と学生さんが長崎のことをあまり知らないということがわかったので、遠い所のことよりも、長崎を知ってもらう活動をさせています。

内海:実は私は22歳のときにエジプトに行ったので、私の頭の中には当時のイメージがあるのですが、先生がエジプトに惹かれる理由はなんですか?

金谷:そうですね、人類が農耕を始めたのは1万年前で、長い地球の歴史でみると実は今って氷河時代にあたるのです。氷河時代の中でも寒い時と寒くない時を繰り返しているのですが、エジプトの人たちは1万年前に氷が溶け始めて地球温暖化を最初に体験した人たちなのです。これまで海だったところが砂漠になり変化していく環境で、彼らがどう適応して生きてきたのか、そこにとても興味をもちました。

内海:なるほど、先生が初めてエジプトに行かれた時はどのような印象でしたか?

金谷:2000年です。その時はエジプトの現地の方が手配してくれたのですが、日本人が来るということで、なぜだかエジプトにある日本庭園とよばれているところを手配してくれたのです。1泊20円くらいのホテルでカイロから鉄道で行って、終点のさらに先にある辺鄙な場所でした。エジプトはあまり雨がふらないので、建物が土でできているのですか、その建物はたまにふる雨で建物も溶けているような、そんな6階建ての建物でした。
 カイロから800キロほど離れているオアシスに一ヶ月ほど滞在しました。その時はピラミッドって大きすぎてどのくらい近づいたのかもよくわかりませんでした。全体的にあまりいい印象ではありませんでした。
 しかし、何回か訪れているうちに、そのスケールに驚くばかりです。クレーンもない時代にどうやって作ったのだろう、と。昨年、今年とTEDxSaikaiに登壇していただいた河江さんともエジプトで出会いました。当時、彼はずっとギザにいて、発掘などをしていたのですが、エジプトは狭い国なので、日本人がいるとすぐ噂になり会うことになりました。彼とは年も出身地も同じで、意気投合しました。

内海:そうだったのですね!私も世界一周旅行でエジプトを訪問したときは、エジプト語でありがとうの意味の「ショコラン」だけ覚えていきました。エジプトに到着したら、強制的に両替させられ、それをドルに両替しようとしても、どこも両替してくれませんでした(笑)。
 大変でしたが、47年前になりますが、エジプトで、人々にとても親切にしてもらったのは、今でも記憶にあります。

金谷:そうですね、エジプトの人たちは、今も親日です。それに柔道がとても盛んですね。

内海:ではここでTEDに触れたいと思います。昨年、TEDxSaikaiの時、実は私はTEDの存在を知らず、「とにかく参加したらわかる、絶対に気に入るから!」と言われて参加させて頂きました。実際トークが始まると、スピーカーの方々のトークに引き込まれ、大興奮の経験をさせて頂きました。先生とTEDとの出会いを教えていただけますか?

金谷:2011年震災が起きた年に、当時私は京都で社会人活動を行っていたのですが、東京の方々から関東では会場もないので、西日本イベントができないか?と相談をうけたのがきっかけです。5年間、京都でやっていたので、長崎に来たときに、長崎でもやりたいなと思いました。長崎は知れば知るほどいいところがあるので、日本の玄関口、アイディアが入ってくるというTEDの理念とも一致するので、本来の日本の玄関口である西海、大島だと思い、TEDxSaikaiを開催しました。xというのは、TEDから独立したローカルイベントという意味があります。

内海:TEDのプレゼンテーションのルールは何かあるのですか?

金谷:はい、TED の創始者のリチャード・ソール・ワーマンはもともとアメリカの建築家なのですが、彼は情報というのは建設と同じだといっています。彼は過去のありとあらゆる名演説を調べて、最終的に18分がプレゼンテーションにかける最長の時間であるとしています。なので、TED のトークは最大でも18分が原則です。キング牧師の演説が18分だったそうです。いらないものを削ぎ落して、本当に伝えたいエッセンスだけをその時間にこめていただくようにしてます。

内海:昨年に引き続き、今年も開催されるのですよね?

金谷:はい、今年は西海市の田島という無人島で開催する予定です。現在、一番の苦労しているのが田島でやるにあたって、無人島でやるということに本部が難色をしめていることなのです。もともとTEDxは地域のためのコミュニティなので、人が住んでいない土地でやるのは、といわれています。なので、ここはもともと人が住んでいた土地であり、戦争などの影響で無人島になってしまったのだ、などといって説得を続け、世界ではじめて無人島で開催することができることになりました

内海:昨年も様々な方が集っていて、スピーカーではなく、話を聞きにこられていた方々もとても魅力的な方が多く、素晴らしいコミュニティでした。

金谷:そうですね、世界中の流れですが、TEDを通して民間外交のように、コミュニティができています。実際に会うだけではなく、トークの映像が残るので、その映像をみてから繋がりなどもあるのがTEDの特徴だと思います。ただし、最近ではTEDをつかって政治的な発信などをしようという方もでてきているので、そういう発信はなくすようにコントロールされています。

内海リ:先生は教授として、またTEDの開催の際に学生さんに関わる機会が多いと思いますが、今の学生さん達の可能性についてどう感じられますか?

金谷:TEDxSaikaiの特徴として、高校生がボランティアメンバーとしてたくさん参加されているということがあります。
 西彼杵高校の生徒会の子たちを中心にがんばってくれているのですが、一緒に参加している大学生が敬語を使うような、しっかりとして高校生がいたんです。従来は高校、大学と別れていたものが一緒のグループになると、意識が高い子たちの中でも、一際リーダーシップを発揮する子たちがいますよね。大学に進学するときにどのようなボランティアをしたか、などを記載する欄があるので、推薦状をかいたりいています。

内海:コミュニケーションの中でも、自分の考えを伝えるって大切ですよね。授業においても、海外ではティーチングではなく、コーチングメインの教育ですが、日本はまだまだ一方的に教師が教える機会が多いですよね。そんな中、高校生、大学生のうちからTEDのようなイベントに関わるということは非常に素晴らしい経験になりますね。

内海リ:こういうイベントがあることで、一緒にきいたトークをもとに世代を超えて会話が広がり、地域全体の教養レベルがあがる気がします。昨年イベントを目の前でみさせていただき、その様子にとても感激しました。ただ、TEDは開催のハードルが高いですよね?

金谷:そうなんです、本部の許可が必要なので結構大変なのですが、最初は私のようなよそ者が立ち上げて、継続させていければいいのではと思っています。実は京都の1年目は京大学でやったのですが、大学が宇治にあるんす。
 それでこれはKYOTOではない、UJIだといわれたのですが、当時リーダーがアメリカの本部までいって、宇治は歴史的に京都であると説明をして、1年目だけ特例でOKをもらってやりました。TED本部もそれに懲りたのか、いまはあまり大きな都市の名前では開催許可がおりなくなりました。幸い、Saikaiはライセンスを持っている中では最小の自治体だったので、すんなり許可がおりました。

後編へ続く・・・

▶金谷一朗様プロフィール(2019年当時)
長崎県立大学教授・TEDxSaikai設立者
1973年 東京都生まれ
1995年 関西大学工学部電気工学科卒業
1999年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士後期課程修了

ATR人間情報通信研究所研究員、和歌山大学システム工学部助手、日本学術振興会博士研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科助手、科学技術振興機構さきがけ研究員等を経て、2015年より長崎県立大学教授、日米先端工学シンポジウム運営委員長、TEDxKyoto 総合プロデューサーを歴任、文化庁メディア芸術祭、神戸ビエンナーレなどで芸術賞多数受賞。専門は芸術、デザイン、文化的造形物の物理的学理解。


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