見出し画像

フラれたことしかない男01

 フラれる経験しかしない男の話。

〜21歳〜

 同じ職を目指していた女の子のことを好きになった。彼女はその道への情報が欲しかった。僕は彼女が欲しかった。食事に行ったら必ず全額払い、誕生日にはプレゼントをあげ、欲しいものはすべて捧げた。欲しいもの、それはモノに限らず情報も。そして、彼女は知りたい情報を知ったあと、フェードアウトしていった。来ない連絡をずっと待っていたし、1か月後に懲りずに僕からも連絡はしていた。これは童貞に限らず、非モテにありがちな行動でしょう。それが僕だった。こんな僕がこのまま社会人になる、、。

 とは言え、別に今まで、まったく女性と出会いがないわけではなかった。中高も共学出身で、女友達は(一般的に言えば少ないかもしれないが)いるにはいる。大学のサークルも男女比は半々のところにいたような気もする。そういう環境に甘んじて、いつか報われると思ってた節もあった。

 しかし、そのようなある程度恵まれていた環境下でも、そこまでの僕は彼女をまったく作れずにいた。

 興味はあった。

 しかし、自分からのアプローチの仕方がわからず、自信もなかったのである。だからだろうか、大学時代は引きこもりがちで、家で過ごすことが好きで、アニメ好きな、どちらかといえば(言葉を選ばず使うとすれば)"陰キャラ"と呼ばれる類だった。誘われる飲みはほとんど断り、本当に仲の良い男友達(この友達はまったく女性に興味がわかない奴らばかり)とつるむことしかしない。つまり僕の学生生活はとても充実していたものの、女っ気のない灰色のものだった。それはそれで楽しいのだ。

〜社会人1-2年目〜

 そんな僕も社会人になると、状況は変わった。

 はじめの1,2ヶ月こそ仕事のことでいっぱいいっぱいだったが、落ち着きを見せたころ、ふと彼女ができない焦りが強まったのである。

 まず自分の職は出会いがない。勤める人々も同世代の女性がおらず、しかも職場で彼女は作りたくない。そもそも恋愛経験0で職場恋愛というのはリスクが高い(と思っていた)。外部研修なども少なく、趣味もアニメ以外ない。出会いが仮にあったとしても、今まで恵まれた環境ですら彼女を作れなかった自分。このままだと、絶対に独り身になってしまう。

 漠然と抱えていた「恋人が欲しい」という欲が、ここにきて焦りとともに大きくなったのである。

 しかし、女性慣れする切り口が見つからないのである。お金持ちのところにお金がやってくるとはよく言うが、女性も同じ。女性慣れしている男に女性が集まる。何もない自分に女性が寄って来るメリットを感じない。そんだけ自己肯定感も低いのである。そんな男が最後に縋るところは、お店なのだ。

 この時の自分の女性への関心はピンク(P)なもので、デリヘル(D)やキャバクラ(C)に行き、もんもんとした気持ちをアダルトビデオ(A)で発散する。闇のPDCAサイクルを構築していた。自分の人生において、女の子とはお店の子なのだ。お店の子にしか相手にされてない哀しい現実なのだ。

さて、このままではまずい。

画像1

 お店の子に惚れたところで、向こうからしたらそれは営業に過ぎない。実際に惚れていた自分もいるからいよいよまずい(詳しくはマガジンで)。

 そこで最初に始めたのはマッチングアプリもどき。あえてマッチングアプリ(当時は出会い系と呼ばれていた)に手を出さなかったのは、踏み込むにはまだ勇気がいるからだった。コロナ禍の今でこそ、メディアに取り上げられ主流になった。だが、当時のマッチングアプリへの印象と言えば、詐欺、高額そのマイナスイメージがつきまとっていたのだ。だからこそ僕は踏み込むことができなかった。

 そんな中、当時目をつけたのはChatPad(チャットパッド)。ここはネット上でランダムにマッチングした人とチャットをするもの。男ばかりとマッチするが、寝る前は必ずChatPadを起動した。根気強くチャットを続けていくうちに、様々な女の子から連絡先をもらうことができた。マッチした子とはラインで何度もやり取りをする。しかし、だいたいがフェードアウト。非モテ特有の、連絡しすぎて音信不通になる現象だ。なんだか気になる子とメールをしてドキドキしていた学生時代を思い出していた。

 ただ、そうこうしてるうちに要領をつかんでいく。やりとりすること苦節1ヶ月ほどで、ついに関西に住んでるという29歳の女性(Tさん)といい感じになりお互い「会いたい」と思える関係になる。Tさんは30前にして7歳の娘を抱えるシングルマザー、恋愛経験の浅い23歳の男がのめり込む人ではない。しかし、当時の僕はあまりの恋愛経験の浅さにとにかくこの人のことで頭がいっぱいになっていた。そして女性とつながっていることに充実感すら感じていたのだ。その結果、関西遠征はキャバクラと比べたら額はそれほどでもないとも思えるようになり、僕はその年のGWの2日間を使い、彼女と会うことになったのだ。

 さて、関西(大阪)でのデートは割愛しておこう。吉本新喜劇は楽しかったが、進展もなく、とりあえず学生時代の男友達と会えたのが一番の収穫だった。とにかくアプローチのかけ方というものがまるっきりわからないからこうなるのだ。

 しかし、1人の女性と(少しだけでも)いい感じになると、余裕が生まれるのも確かであり、余裕ができると、往々にして物事はいい方向にいく。もう1人別の女性から連絡が来たのだ。

 なぜ、こんな時に急に連絡がくるのか。意味が分からなかった。今にすれば、他への関心が彼女への執着を捨てさせ、程よい距離感を保てていたからだったからとわかる。

 とにかく、自分に興味を持つ女性がいることにかなり舞いあがり、忘れかけていた恋愛センサーもビンビンに発動。この連絡をきっかけに、デートを重ねることになる。そして、それはデートでの失敗経験を繰り返すことにもなるのだ。

 この失敗の経験こそ、財産である。

 成功に確実はないかもしれない。だが、失敗というデータサンプルを参考に、それを避けて進めば、いつか成功にあたるものである。(ただ恋愛においては、その成功の答え合わせは死ぬまで出来ないかもしれないが…)

 ただ当時の自分にとって、成功とは女の子と付き合うことを指していた。中高生でも経験出来ることに固執しているわけである。非モテ南無三…。



次回記事

「フラれたことしかない男02」

いいなと思ったら応援しよう!

ヒトシ
サポートいただければ、明日からまた頑張れます!無くても頑張ります!🥺