90切りを目指すゴルファー

518ヤードのパー5。やや左ドッグレッグの打ち下ろし。
無理をせず刻んでいってもパーが取りやすいホールだ。
ほぼ無風で絶好のゴルフ日和。

ティーグランドに立つと帽子を脱いで同組のメンバーに軽く一礼してルーティンに入る。
まずはボールの後方で気持ちよく大きく2回素振りする。
私はどちらかというと痩せ型だが、スイングでは自分が太っているかのように大きな弧を描く軌道で振る。そうすると手打ちにならず体ごと後ろにも前にも向くのでしっかりと捻転が使える。もちろんドアスイングにならないようにクラブはインから下ろすことを忘れない。
捻転をしなければクラブがインサイドから降りてくることはあり得ない。連続素振りでブレのないキレイな軌道イメージを描くのが大事なルーティンのひとつだ。
テイクバックではグリップは左手の腹で下に押し込むように、右手の指はヒンジを意識し上に持ち上げる方向に引き上げるようにし、左ハンドルのイメージでフェイスがターゲットラインから外れないようにトップまで持っていく。
トップではタイミングが早くなりすぎないようにリズムを意識し、右手でフェイス面が目標方向に直線的に動くように左腰で引っ張りアンダースローのように体を回していく。このとき手は何もしないで体に付いていくだけだ。
ああ、こんなに考えることがあるんだ、と迷いながらも、あまり時間を取るわけにもいかず、できるだけ自然な動きになるように心がけて、ボールの後ろから狙いを正面の大きな木のやや左に向けてアドレスに入る。
さあ、何を考えよう。あ、そうだ。リズムだ。
素振りのイメージ通りに体幹意識して大きくテイクバックしスイングのタイミングが早くならないように。
それだけに集中してボールをぶっ叩いた。
やや左目に出たボールは薄っすらとスライス回転がかかり、右方向に向きを変えて飛んで行く。フェアウエイセンターからやや右。
早く落ちろ!
右側にはカート道があり、そこで大きく跳ねるとさらに右に転がってOBゾーンに向かう。やめて…。
幸いにもカート道の右側のラフに着地し、無難な朝イチのショットとなった。
考えてみるとここの1番ホールの第1打はいつもそのあたりにある。
何がスライスの原因だ?
「左肩がターゲット方向に流れてアウトサイドインの軌道になっていました」
以前一緒にラウンドしてもらったレッスンプロの声が頭の中で聞こえてきた。なるほど。この指摘の通りだ。
朝イチのショットではいろいろと意識する点が多く、つい忘れてしまうが、ドライバーショットで左肩が左に流れてしまうと頭も左に突っ込んだ形になってカット軌道となりスライスになる。逆に右肩が突っ込むとそのままフェイスがかぶり左にひっかけてしまう。
朝イチこそ、肩の突っ込みで軌道がカットになってしまうことを意識しないといけないのだ。
「ああ、忘れてた…」
それでもミスとしては大きくはない。次でフェアウエイに運んで3打目でグリーンに乗せればパーが取れる。
さて、2打目は何で打とうか。
ラフとは言えライは悪くない。ボールは少し沈んではいるもののウッド系でもユーティリティでも打てなくはない。残りは290ヤード。どれだけ頑張っても2オンは無理だし、残り距離を120ヤード以内に着けばパーオンを狙える。しかもやや打ち下ろしだ。
手に取ったのは得意な7番アイアン。
まだ1番ホールとあってここは無理せず得意クラブでフェアウエイに乗せる。うまくいけばランも出るので170ヤードくらいは進む。
「打ちます!」
ボールの後ろで2回大きく素振りをし、肩、膝、フェイスの向きでアライメントをしっかり取ってアドレスに入る。アイアンではドライバーショットと違ってボールを上から見てダウンブローに打つことを意識する。あとは腕とシャフトの角度をキープすることを意識して肩を縦回転に回せば狙い通りの軌道で打てるはず。
「ビシッ」
気持ちよい打感と共に高い弾道でボールが上がる。ほぼまっすぐの軌道でうまくフェアウエイに着弾すると傾斜の通りに前に転がっていった。
「うまく打てた」
3打目には絶好の場所だ。
残り130ヤード。
ピンの位置は真ん中より5ヤードほど手前。狙いはグリーンだがカップを超えないように。傾斜は手前から奥へ高くなっている。受けているグリーンなので奥は禁物。短くても手前に乗せるのがセオリーだ。
通常なら9番アイアンだがここはPW。足元が左足下がりになっている分、フェイスが立つから一つ小さめのクラブがいい。さらに手前となると120ヤードを打つイメージでよいはずだ。左足下がりは掴まって左に行きやすくその場合距離も出てしまうのでややフェイスを開いてカットに打とう。
力まずに腕とシャフトの角度が変わらないように体で回転してダウンブローに打つことを意識する。
「ビシュッ」
心地よい音を立ててピンより少し左側に向かって高い球が出た。着弾したのがグリーン手前のラフ。少しだけランが出たがグリーンには乗らずラフで止まった。
「惜しい」
カットに打ちすぎた。
これでパーオンはダメだったが仕方ない。
ピン奥に打つとバンカーがあり、バンカーに入らなければOBにもなり得る。
ここは手前から寄せワンでパー狙いがセオリーだ。
ライは悪くない。うまくワンピン以内に寄せてパーをもぎ取ってやる。
カップまではおよそ25ヤードか。グリーンエッジまでは10ヤード。
58度のSWで20ヤード突っ込んで5ヤード転がすか。うまくスピンがかかればカップまでちょうどだ。バーディも狙えなくもない。
スピンがかからなくても上りラインなのでそんなにオーバーはしないだろう。
怖いのはダブりだ。
ダブらないようにするにはヒンジと体の回転をしっかりすること。
最悪なのは手でクラブを下ろして手前にヘッドが落ちること。そのために上から構えて体を回す意識をする。芝のあるこのライなら芝をしっかり滑らせればトップもしない。
いや。ここはピッチングウェッジで手前から転がす方法もある。ゴルフの基本は転がし。アプローチは特に無理せず転がすのが有効だ。8番アイアンでパターのように打ち転がす方法もある。
誤ってはいけないのがこのクラブ選択だ。
すでにパーオンをミスしている。0.5打ほどのミスだ。アプローチをミスれば0.5打。こうしてボギーが積み重なっていく。これ以上のミスは避けなくてはならない。
そうなるとやはりPWだ。
半分上げて半分転がす。落とし所まで歩いてその辺りに目標を定める。傾斜も読んであとは上りを駆け上がらせる。
ボールを少し右側に置いてハンドファーストと構えてあとは体を回転させて上から打つ。SWと違いしっかりダウンブローだ。



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