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妊婦と電車 双子妊娠#7

妊婦と電車

双子妊娠関係なく、妊娠中、通勤のために満員電車に乗ることが本当にきつかった。妊娠初期の悪阻中は特に。私は会社まで50分近く電車に乗るのだが、何度か人をかき分けて電車を飛び降りて吐いたことがある。

ある日、妊娠初期に気持ち悪いのとしんどいのとで、とても立って居られなくなって息も絶え絶え電車で座り込んでしまった。そのとき、若くて心優しい女性が声をかけてくれた。そして椅子に座っていた中年の男性が席を譲ってくれたのだが、話せる状態でなかったので、ありがとうございます、の一言も発せられなかったことが悔やまれる。
私が席に座った後もぜいぜい喘いでいると、隣に座っていた若い男性が立ち上がって、ドアのところに避けていった。お兄さん、立てるほどお元気で何よりです。

妊婦でも、電車全然大丈夫っていう人もいるんだろうが、誰かが席を譲ってくれようとしたら、「大丈夫です」と断らず是非ご厚意に甘えてほしい。妊娠中は識らず識らずのうちに体のバランスが変わっている。何十年も付き合ってきた体のお腹のところだけが突然不自然に重くなるのだから当然だ。電車が不意に揺れたり、急ブレーキで転倒したら、そのまま病院へ、電車でGOである。「どうぞ」って言った方も、その後気まずいと友人が言っていたので、やっぱり妊婦は一駅でもご厚意に甘えた方が良い。

席を譲る対象が妊婦であるないに関わらず、この議論については、いろいろな意見があるんだろうと思う。

でも私は、電車でマタニティマークを発見して、どうぞ、と満員電車の中、朝の混雑の中、帰宅の疲労でへとへとの中、席を譲ってくれた数少ない人たちを心の底から讃えたい。大地よりも彼らを讃頌したい。

この時代、満員電車で席を譲れる人は気遣いの神である。神業である。プロフィールに「満員電車で座席譲を譲ることができます。」と書いてもいい。それを見たらぎょっとする人がいるかも知れないが、これは事実、現代日本では特筆すべきスキルになのだ。

電車で席を譲れる人たちは、恋愛は成就し、仕事は大成し、健康は力がみなぎり、転居は全方角良く、旅行では新たな出会いがあり、失物はポケットから出て、待ち人は走って来て、争いごとはどこ吹く風、縁談はわんさか舞い込んで、商売は日経ヒット商品の横綱になるでしょう。稀有な勇気と気遣いを行動に移せる彼女たち、彼らは、その他大勢とは比べ物にならないくらい、心に余裕がある人だから、ありとあらゆることをうまく回せるというわけだ。

いつもお礼と一緒にありがとうございます、幸あれ!と言いたかったが、見ず知らずの妊婦に「幸あれ」と言われたら気持ち悪いなと思って自重した。

お礼を言えなかったお姉さんにお礼が言いたい。それから席を譲ってくれた人たちが今日も幸せでありますように。

この場を借りて言いたい。

幸あれ!



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