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不妊治療経験者による産休クッキー暴論 双子妊娠#9
産休クッキー
妊娠24週(妊娠7か月)、双胎妊娠だったため、予定日より16週前から産休に入った。(双胎妊娠の産休は14週前から取得可能、また双胎妊娠は多くの場合37週5日で出産するので、本来の予定日はあまり意味をなさない)
産休に入る日、私は部署のみなさんに自分のお気に入りのチョコサンドクッキーを渡した。(わが社はフリーアドレスなので、みなさんご自由におとりくださいスタイル)
赤ちゃんの印字はしていない普通のパッケージで、めちゃめちゃ美味なるシロモノである。(チョコが嫌いな人には地獄のような菓子)
さて私が産休クッキーを置いてご機嫌に退社した数日後、世間では産休クッキーをめぐる議論が勃発した。
あのクッキーも誰かを不愉快にさせたのか?と一瞬思ったが、そんなことはない、と思い直した。なぜなら、私は配ったのは自信をもってお勧めできる高級チョコサンドクッキーだったからだ。
不妊様だった私
かといって私が不妊治療をしている人のことを考えていないわけではない。なぜなら私も3年半の不妊治療経験者だからだ。(78週妊娠して双子ママになりました参照)
私も同僚の産休を知って、気づいたら涙が零れていたことがあるし、友達の出産報告を祝えなかったことも、赤ちゃんが印字された年賀状を捨てたこともある。いわゆる"不妊様"だったように思う。
不妊治療者による産休クッキー暴論
しかしこんな不妊様だった私も、産休クッキーに関しては深く考えることなく食していた。
なぜなら、私が重要視していたのはそのクッキーが美味しいかどうか、喜んで取り入れたいカロリーかどうかだったからだ。
クッキーの良しあしはパッケージにあらず。大事なのはバターである。故に、産休クッキーについても良いバターを使っていたのかどうかを議論して欲しかった。それ以外は、私にとってはもはや些事である。おいしいクッキーをもらえたならラッキーで、そこそこのクッキーならば、また無駄なカロリーを取ってしまった・・・と言い捨てられてもやむなしと思っている。
しかし、この考え方は食い意地のはっていないエレガントな方には共感できないかも知れない。故に、エレガントな断り方例をいくつか考えてみた。
「今日からグルテンフリーを始めましたので」
「私ビーガンクッキーしか食べられないんだけど、これってビーガン?」
その日のランチに山盛りのパスタを食べていたとしても良いのである。今この瞬間からグルテンフリーを始めて、ビーガンになり、5分後にやめるのである。
あるいは、違う観点から、この産休クッキーを一種の利益供与(給食するからあとよろしくねという袖の下的位置づけ)と捉えて、
「いかなる利益供与を受けません」
「お心遣いを頂かずとも、職務は全うしますので」
など、コンプライアンス意識高めの人財であることを前面に押し出すのも良い。人間関係を壊さないようにあくまでエレガントな言い方を心掛けてほしい。
ふざけすぎじゃない?というご批判が聞こえるが、わたしが言いたいことはこうである。
不妊治療はそれ自身、ホルモンをコントロールされるし、不自由な時間を過ごすため、心、体、日常生活をも圧迫する。治療を続ける以上、残念ながらこれらを減らすことはできない。ただ不妊治療において外部から受けるストレスは受け流すこともできるのではないかと思う。
(もちろん全部が全部は難しいし、悪意のある場合はまた別次元。)
昔読んだフランクルの著書「夜と霧」の中で感銘を受けた一説がある。「ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ」
ユーモアは自分が陥っている状況から距離をつくり、その状況を皮肉り、そして克服できるようにしてくれるのだ。
実際にエレガントな受け答えはしなくても良い。脳内で再生すればよいのである。そして受け取ったクッキーの味を吟味すれば、その日は完璧な日になるはずである。