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丸山、おとなひきこもりを語る(後編)

社会をどう変えるか

杉本:丸山さんはもうご存知だと思うんですけど、いままでの日本の福祉って企業福祉中心でやってきたではないですか?ですから社会政策としての労働者福祉は立ち遅れてしまった日本の現状だと思うんですね。社会政策で日本社会が変わるというのはあり得ると思いますか?

丸山:従来からの価値観が変わらない限りはやっぱり変わらないですよね。だから僕はその、いまは「生活困窮者自立支援法」をどのように生かす仕組みを作っていくかということ。まだこれからなんですけれども。

杉本:そうですね。

丸山:例えばいま僕が提唱している生活をいろいろ解決していくということを、まあこれは生活困窮者自立支援法であれば、ひきこもりに限らず全部ですね。困っている人が対象ですから。それを例えばどこがその法律に基づく支援を担うのかということでは僕は、*地域包括支援センター、ここが担うような仕組みとなる、そうなればひきこもりも含めてきっと相当違うと思う。

杉本:なるほど。いま、地域包括支援センターといえば基本的には介護保険を中心に担っているわけですけど。

丸山:生活困窮者自立支援法をいま受託しているのは行政の相談窓口で。

杉本:そうですね。

丸山:社会福祉協議会などが実施したりしてるじゃないですか。これを全部、地域包括センターの事業にする。そうすると結構いいのじゃないかな、本当に生活を支えるとすれば。そういうことになれば困ったことがあったら全部相談窓口がそのようなかたちになると。だから要するに「就労支援」という発想をちょっと棚上げにする。最終的に就労支援もあるんですけど、まず生活サポートから入ってですから、その部分は地域包括センター。そういうことになれば本当に、「そうか。生活を支えてもらうこともこういう仕組みの中にあるんだ」と。いま多分一般の人たちは、自分たちで生活をやらなきゃいけない、解決しなくちゃいけないと思っているからなかなか相談しない。で、民生委員なども機能していない。

「ひきこもり支援」から「生活支援」へ

杉本:なるほどね。生活支援に関しては、地域包括センターがその意味では一番だと?

丸山:ええ。だから介護だけじゃなくてね。私もそんなに詳しくはないんですけれども、要するに僕は自分の介護の経験でちょっと関心があるということもあって。例えば地域包括支援センターの人とか、民生委員の人が実際にね。高齢者の介護で家に入ってみたら長期にひきこもっている人がいることがわかったと。だから、「ひきこもり」とか「介護」とか完全にひとつの枠で考えられない。考えるべき問題じゃないと思うんです。

丸山:あとはAI、人工知能の進歩によって仕事が減っていく状況というこの事態の中で、つまり仕事が出来ない状態の人だけではなく、仕事が出来る状態、あるいはもう仕事をしていたという人が職を失う時代がやってくる。仕事をしていたという人が職を失う時代がやってくることによって、それに合わせて仕組みを変えなくちゃいけないところにまで追い込まれて、そのときが変わり目かな、という気がします。

*地域包括支援センター:高齢者の地域ケアの中核拠点として市町村が設ける機関。センターには社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーの3職種が配置される。家族や高齢者からの虐待などの相談に応じると共に、介護予防の利用計画を作ったりする。さらにケアマネジャーの支援にあたる。市町村が非営利法人などに運営を委託することもできる。 (知恵蔵2015より)

初出:丸山康彦さん(不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」所長)『本人を変えるのではなく、周りを変えていく支援』<インタビューインタビューサイト・ユーフォニアム(2016年12月31日)

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※今月は不登校・おとなひきこもり講演が2本控えているため、その参加者の方々がご覧になることを祈って(笑)、インタビューのおとなひきこもりについて語ったくだりのほんの一部を転載しました(前後編それぞれの小見出しは、前編のみサイトから変更してあります)。おとなひきこもりの部分はもとより、不登校の部分もまだまだ盛りだくさんですので、ご関心の方は下のリンク先からご一読ください(長文です)。

※前項の「不登校・おとなひきこもり講演が2本控えている」ですが、まず1本目はあさって14日(日)、川崎市内での講演です。私がやっている「ヒューマン・スタジオ」主催の連続講座「ヒュースタゼミナール」(ヒューゼミ)を今年度川崎市内でも開講するお話をいただいており、そのことにちなんで開催されるオンライン併用イベントでお話しします。もちろんヒューゼミ受講の意思に関係なく、ご関心の方ならどなたでもどちらにお住まいでもご参加いただけます。 ↓ の公式ブログ記事をご一読のうえ、ぜひご参加ください(会場は当日参加可能です)。

※次の2本目は29日(月祝)、「ヒューマン・スタジオ」毎春恒例の主催イベント「不登校・ひきこもりセミナー2024」(オンライン併用)です。第1部の全体会で私が講演し、第2部の分散会では私とひきこもり当事者グループ代表の割田大悟さんのグループに分かれます。私のグループ「対談」では『ひきこもり時給2000円』の著者で旧知の岡本圭太さんと対談します。割田さんのグループ「座談会」では “元不登校の経験者母でありおとなひきこもりや障碍の当事者親への支援活動をしている” お二方が前記「ヒューゼミ」修了者として語ります。ご関心の方は ↓ のブログ記事をご一読のうえ、末尾にリンクした告知ページで詳細ご確認のうえ、よろしければご参加またはご紹介をお願いいたします。


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丸山康彦
不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。