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「教育対策」の誕生(後編)

底つきを経て社会へ

 そんなある日(高校時代のように、何月何日、と覚えてはいないのですが)、私の頭に、こんな考えが浮かぶようになりました。
 「自分はもうどうなっても構わない。ホームレスになろうと、人知れず死のうと、みんなが自分のことを忘れようと、何とも思わない。野性動物は、誰に知られて死ぬわけでもなければ、死んでからも誰かに覚えられてはいない。自分も野性動物のように、自然のままに生き、自然のままに死ねればそれでいい。」
 何日間かそんなことを考えているうち、絶望の苦しみがだんだん軽くなっていくのが感じられるようになりました。

 それにつれ、3年くらい前に抱いた教育への問題意識が、具体的な教育観・援助観・人間観・社会観として整理されていきました。不思議なことに、ごく自然に、自分の考えがすらすらまとまっていったのです。
 これには、当時からさらに年月を経て、福祉や自助グループなどへの見聞を身につけて、世の中をより幅広く知るようになっていたことが、大いに役にたったようです。
 そしてその考えが、自分の生きる道へと具体化してきました。

 自分の考えを『教育対策』と命名した私は、それを理念とする個人事務所「教育対策研究所」を自宅内に開設し、そこを拠点としてやれることをやっていこう、と決意しました。
 「仕事であれ市民活動であれ、行動を通じて、自分が考案した理念を世に問い、普及・実践したい。」
 1998年11月、私は、前にも名を挙げた佐々木賢氏(所属団体の中心メンバー)や知り合いなど数人に、研究所の企画書を届けたのを皮切りに開設準備にとりかかりました。

 私のひきこもりは、こうして、かつての不登校のときと同じように、徹底的に絶望したことで、その幕を閉じたのです。
 翌年4月の研究所開設までとすると、私がひきこもりだった期間は、ちょうど7年間でした。

初出:連載コラム第4弾 『ひきこもりを7年かけて卒業した男の話』(全6回)の第4回「絶望の果て」<メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第22号(2003年3月12日)

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※『教育対策』という言葉は、後編にあるとおり正式には動き出す際に命名したのですが、前回転載した文章に該当する時期(ひきこもり時代中期)にはすでに思いついており(『思春期対策』という本のタイトルから思いついた)、その内容として「子どもが教育を取捨選択できるシステムを」「親は自分のことを “親” と呼ばないようにしよう」「教育虐待をやめよう」などいくつかの項目を考えていました。しかし、それらをまとめて公表する前に『教育対策』という言葉じたいが周りの不登校関係者にさえ理解されない当時の状況に直面したため、その理念を世に問うのではなく形にしていくことにしました。それが多様なプログラムを実施する地域の交流拠点「ヒューマン・スタジオ」(ヒュースタ)です。

※ヒュースタは、1年半後の2003年度に交流拠点から不登校・ひきこもり専門の相談室へと衣替えしましたが、その後も「本人の意思を挫くのではなく認める」「逆算から直視へ」「 “支援思考” から “生活思考” へ」「本人が行ける場所を自分で “早期発見” できるように」など、メールマガジンに書いている(本欄にも転載している)数々のアイデアを生み出してきたのは『教育対策』という理念があったからです。それだけに、約30年経ったこんにち『教育虐待』『やりすぎ教育』というタイトルの本が出たり、そのような体験談や言説が飛び交うようになった状況に、大きな感慨を禁じえません。

※このような最新のアイデアや意見を3か月ごとに文章化しているメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』は毎月第3金曜日に配信予定。今月は、新設したおとなひきこもり相談会「関口・丸山のひきこもり何でも相談室」で私のパートナーを務めている精神科医のエッセイを掲載します。

※前記「関口・丸山のひきこもり何でも相談室」は、偶数月が第3日曜日、奇数月が第4火曜日に、3路線が交差する多摩センター駅の近くで会場開催しています。おとなひきこもりへの理解と対応を巡るお悩みや発達・精神の専門的なご質問などがおありの方は、ぜひご参加ください。

※7年目をオンライン開講している不登校・ひきこもり連続講座「ヒュースタゼミナール」の第3回『支援機関の見分け方を考えよう』を来たる8月22日(木)夜に、全日程通し受講者が欠席した回をやり直す救済措置として、第1回『不登校・ひきこもりの意味と心理を考えよう』の補講を来たる9月1日(日)夜に、それぞれ実施します。いずれもご関心の方は、それぞれの公式ブログ記事をご一読いただき、末尾にリンクした告知ページをご覧のうえ、ご受講またはご紹介をお願いいたします。

※来たる9月14日(土)、神奈川県内の不登校・ひきこもり等関係団体合同祭り「フリ・フリ・フェスタ2024」が開催され、私がやっている「ヒューマン・スタジオ」と私が運営メンバーに所属している「ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜」の合同チーム「ヒュースタ桜」が今回も団体参加します。販売ブースに加え出し物としてトークライブと元ひきこもりミュージシャン哲生ライブを実施します。ご来場可能な方は、 ↓ の県サイトをご覧ください。


不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。